2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23560587
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
大河原 正文 岩手大学, 工学部, 准教授 (80223741)
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Keywords | 分子動力学 |
Research Abstract |
分子動力学法により粘土ユニット周囲の水の粘性、拡散係数を計算するとともに、系全体のせん断力を求めた。さらにせん断力についてはAFM(原子間力顕微鏡)により測定されたミクロ摩擦力(実測値)と比較した。MD計算には、膨潤性粘土鉱物であるスメクタイト(Na型、Ca型)を用い、同形置換は四面体シートではSiの1原子置換, 2原子置換, 3原子置換の3ケース、八面体シートにおいても同様に3ケース設定した。計算条件は、温度20℃, 総ステップ数2000000steps, 時間刻み幅は0.3fsとした。水分子相互作用のポテンシャルにはKKYポテンシャルを用いた。水の粘性係数は水分子1層のときη=2.1×10^2Pa・s、2層のときη=2.0×10^2Pa・s、3層のときη=1.8×10^2Pa・s、ランダムのときη=0.8×10^2Pa・sであり、積層数が増えるほど粘性係数は小さくなる。水の拡散係数は水分子1層のとき D =0.4×10^-9m2/s、2層のとき D =4.1×10^-9m2/s、3層のとき D =5.9×10^-9m2/s、ランダムで D =6.2×10^-9m2/sとなり、積層数が増えると拡散係数は大きくなる。せん断力は水分子1層のときτ=125kPa、2層のときτ=122kPa、3層のときτ=105kPa、ランダムでτ=81kPaであり、積層数が増えるほどせん断力は小さくなる。MD計算結果とAFM測定値との比較では、MD計算値はAFM測定値の50~60%程度であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究計画では、水分子の挙動解析、粘性、拡散係数の計算までであったが、せん断力の計算とAFM実測値との比較を行ったので、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
H24年度では2:1型粘土鉱物の水分子挙動解析、粘性、拡散係数を分子動力学により求めた。H25年度は、残る1:1型粘土鉱物を計算対象に水分子の各種物性値を求める。これらMD計算により求められた物性値(とくにせん断力)、AFMにより測定された摩擦力、さらには通常の土質試験(一面せん断試験)により測定されたせん断強さを比較検討することで、粘着力cに与えるミクロ物性の影響を議論する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度はマクロ物性値の測定、すなわち一面せん断試験を実施予定である。そのため研究費の使途として、土質試験関連機器等を計画している。 H24年度においてある条件でのMD計算の発散し、購入を予定していたエンジンのスペックが決まらずやむなく繰越金が発生した。計算発散はすでに解決しており、H25年度早々に繰越金を使用する予定である。
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