2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23560587
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
大河原 正文 岩手大学, 工学部, 准教授 (80223741)
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Keywords | 粘着力 / せん断試験 / 分子動力学 / 原子間力顕微鏡 |
Research Abstract |
工業用ベントナイトを鈴木ら(2007)の方法により精製し,得られた高純度スメクタイトに対し,一面せん断試験を実施した。せん断試験は圧密定圧条件とし,圧密打ち切り時間は3t法によった。せん断速度は0.5mm/mim,垂直応力は50kPaから300kPaの範囲で適宜設定し,定常状態に至るまでの大変位を与えることで真のせん断強度を測定した。得られたNa型スメクタイトの粘着力はc’r=1.7kPa(tanφr=2.3°),Ca型スメクタイトの粘着力は,c’r=20.7kPa(tanφ’r=2.5°)であった。昨年度の原子間力顕微鏡による摩擦力測定,分子動力学法による計算結果では,粘着力は100kPa程度であることから,ミクロ強度とマクロ強度は一致せず,ミクロ強度が大きいことになる。 マクロ強度とミクロ強度が一致しない原因として,せん断面の接触面積の違いが考えられ,本年度の研究として新規に検討した。具体的には原子間力顕微鏡による表面形状測定,粗さ解析である。その結果,高純度スメクタイトの表面粗さは,表面積増加率で1~3%であり表面が滑らかであることが確認された。よって,スメクタイトにおいては,粘着力の違いがマクロ領域とミクロ領域の表面形状の相違によるものとは考えにくい。 そこで,さらにミクロ領域とマクロ領域それぞれの潤滑状態を確認した。すなわち,ストライベック曲線を作成し,潤滑状態を分類した。その結果,ミクロ領域では蒸留水中の測定でも吸着水は3層,厚さは約0.9nmと非常に薄く「境界潤滑」に分類され,,マクロ領域においてもほぼ同じ結果を得た。粘着力の違いの原因に潤滑状態は影響していないと考えられる。 本研究により,粘土(スメクタイトの場合)の粘着力は,ミクロ領域とマクロ領域では一致せず,両者の違いが表面形状によらないこと,吸着水の厚さによらないこと,が確認された。
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