2012 Fiscal Year Research-status Report
非破壊検査・モデル試験・数値解析を活用した盛土の健全性評価に関する研究
Project/Area Number |
23560590
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
檜尾 正也 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 寄附講座准教授 (00335093)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菊本 統 横浜国立大学, 都市イノベーション学府, 准教授 (90508342)
|
Keywords | 盛土 / 健全性評価 / 維持管理 / 長寿命化 |
Research Abstract |
本年度は研究計画に沿って、表面波探査の実施および探査現場で採取した試料を用いた室内力学試験の実施、モデル試験の実施を行っている。 表面波探査では新規に建設された盛土に対して探査を行い、盛土の初期状態の把握とその後の健全性評価のための初期値としての探査結果を活用する。その際には、盛土の材料の特性の把握が重要であるため、現場で採取した盛土材を用いた室内力学試験を行った。探査結果から、盛土のS波速度はほとんどの箇所で200m/sec以上であり、大きいところでは500m/secに近い値が見られ、十分な地盤剛性があると判断できる。また室内試験より、盛土材は締め固めやすく、締め固めに伴う強度増加も大きい良質な盛土材であることがわかった。したがって、これら探査結果および室内力学試験の試験から、これらの盛土は施工時に十分に締め固められた盛土であると判断できる。しかし、より詳細に定量的な評価にはS波速度と盛土材の密度・強度との相関関係を明らかにする必要がある。今後はスレーキングが懸念されるような盛土材を用いた盛土に対しても探査を行い、データの蓄積と評価手法の開発を行っていく。 モデル試験では、前年度に引き続き2次元モデル試験土槽を用いた試験を実施し、浸透水による盛土の安定性への影響を検討した。盛土はスレーキングが懸念される盛土材とスレーキングの心配が無い良質な盛土材を用いて行った。両材料による比較から、スレーキングが懸念される盛土では、地下水に進入によって間隙が増大し、不安定化していく様子が観察できた。特に締固めが不十分な盛土では、浸透水の流れの局所化と盛土の不安定化が顕著であることがわかった。一方、良質な盛土では、浸透水の流れの局所化や不安定化が見られず、盛土の安定性には盛土材の質と適切な施工が重要であることがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、表面波探査の実施、室内力学試験の実施、モデル試験の実施を行った。 この中で、表面波探査の実施は計画通りに研究が進んだ。表面波探査では多くの盛土に対して表面波探査を行うことで、盛土内部の状態を把握でき、簡易的な健全性評価ができることがわかった。この研究成果は土木学会中部支部主催の研究発表会で発表を行っている。また地盤工学会主催の研究発表会でも発表予定である。今回は供用前の初期値としてのデータを得ることができ、今後の定期的な探査結果との相対的な差異を比較することで、簡易的な健全性評価が行える。 一方、モデル試験の実施では、前年度に引き続き、スレーキングが懸念される盛土材を用いた場合の実験は行っており、スレーキングや締固め特性の違いが盛土の安定性に及ぼす影響は検討できた。また、良質な材料を用いた盛土での試験も行っており、材料の違いによる安定性への影響を検討できた。今後は盛土が建設される原地盤の地形の差異(水平地盤、傾斜地)による盛土の変状パターンを検証する。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度に引き続き、表面波探査、力学試験、モデル試験、数値解析の実施の実施を行う。本年度からは、点検・検査手法の提案とマニュアル化の実施も行う。現場計測、力学試験、モデル試験、数値解析の実施によって得られたデータをもとに、評価手法の開発を行う。 点検・検査手法の提案とマニュアル化では、収集した調査データや表面波探査の結果を比較することで、盛土内部の状態(S波速度の2次元分布)と盛土表面の状態(変状・湧水の有無や程度、植生の変化)との相関関係を検討する。また、周辺地形や地盤、地下水の状態で、盛土を分類し、それぞれの分類での変状や破壊事例、変形パターン等を整理する。それらの整理から、分類されたそれぞれの条件での点検箇所や検査方法を提案する。 数値解析の実施では、モデル試験で行った条件を忠実にシミュレートした解析を行う。解析に用いるモデルは、低拘束圧(モデル試験スケール)から高拘束圧(実地盤スケール)までの地盤材料の挙動を数少ないパラメータで妥当に表現できるモデルである。このモデルは粘土、砂、礫を同一モデルで表現することができるため、非常に汎用性の高いものとなっている。したがって、モデル試験のシミュレートだけでなく、表面波探査を行った現場にたいするシミュレーションも行う。 評価手法の開発では、どのような箇所にどのような変状が見られると盛土が危険になるのかを判断する手法の開発を試みる。行ってきた現場計測やモデル試験の結果を整理することで、将来的に健全性が低下する可能性のある重点箇所やモニタリングの対象とすべき箇所の抽出や選定するための判断基準を検討するものである。具体的には、周辺の状況で分類しマニュアル化した点検や検査の結果を用いて、数段階の評価(健全、要観察、要詳細検討、要対処)が行える簡易評価式を開発する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度も本年度同様に表面波探査、力学試験、モデル試験、数値解析を実施する。そのため表面波探査では、探査現場の事前視察のための国内調査旅費が必要となる。また計測時には機材運搬用のレンタカーや交通費、作業アルバイトの人件費等に用いる。 モデル試験では作製したモデル試験土槽の改良や計測機器や計測用コンピュータの購入等に用いる。数値解析では、有限要素法による変形解析を行うため、高性能のコンピュータが必要となる。 また、現場計測、モデル試験では、計測・実験で材料や素材等の消耗品が必要となる。さらに、現場計測・モデル試験・数値解析で得られた多くのデータを記録するためのメディアも必要となる。
|
Research Products
(5 results)