2011 Fiscal Year Research-status Report
河川魚の突進速度の解明と組織乱流理論を用いた遡上率の高い魚道の設計値の提案
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23560610
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
鬼束 幸樹 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20293904)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 魚道 / 遡上 / 魚群 |
Research Abstract |
本年度は側壁の存在が魚の挙動に及ぼす影響および魚の遊泳速度の解明について検討した. 河川は側壁の無い無限大の横断幅を有していない.したがって,側壁の存在が魚の遊泳挙動に及ぼす影響を解明しなければならない.近年,魚の挙動をシミュレーションすることが試みられているが,この分野においても側壁付近の魚の挙動の解明が望まれている. そこで,開水路流において体長倍流速を0~10の範囲で変化させ,1尾で矩形断面開水路流を遊泳するアユの挙動を観察し,壁面付近の遊泳挙動を解明した.その結果,側壁からの距離の増加に伴い,横断方向対地速度および平均魚向は増加し,体長の1倍の距離を超えるとほぼ一定値となることが判明した.これは,側壁付近では側壁への衝突を防ぐため,横断方向へ移動が制限されることが原因である.したがって,魚の遊泳挙動が側壁の影響を受ける「側壁領域」と側壁の影響を受けない「普遍領域」の定義はそれぞれ,側壁から体長の1倍未満の領域,体長の1倍以上の領域であることが解明された. 一方,魚の多くは魚群の形態を保ちながら遊泳することが知られている.魚群とは「各個体が遊泳速度と遊泳方向を群れの他の個体全てと一致させようと絶えず調整している3尾以上のグループ」である.これまで2尾以下の魚の挙動を解明した研究はあったが,魚群の挙動を解明した研究はほとんど無かった. そこで,流速を系統的に変化させて,3尾で遊泳するアユの挙動を解析した.その結果,アユの魚群形状は,流速の増加に伴い流下方向に細長くなること,3尾アユの先頭交代率は流速の増加に伴い減少すること,流速の増加に伴い対地速度および遊泳速度は増加することなどを解明した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は魚の遡上しやすい魚道の設計指針を策定することにある.これには,魚の遊泳挙動を解明することおよび遡上に適切な魚道の幾何学形状を解明する必要がある.我が国の遡上魚の代表であるアユは単独ではなく,魚群で遡上することが知られている.そのため,まず第一にアユが魚群で遡上する形態を解明する必要がある. 本年度の研究において魚群の最小単位である3尾で遊泳するアユの遊泳挙動についてはほぼ解明が終了した.ただし,魚群が魚道を遡上できる状態,すなわち,最適な魚道の幾何学形状の解明には至っていない.これは,来年度以降に行う予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は3尾で遊泳するアユの挙動を解明した.これは魚群を形成する最低尾数に相当する.ただし,実河川における魚群内尾数は3尾よりも遙かに多いため,本年度は5尾および10尾で遊泳するアユの挙動について解明を行う予定である.尾数の増加に伴い挙動の変化がある一定値に漸近することが推測される.そのため,ある程度尾数を増加させることで漸近値を推定することが可能となる. 一方,我が国の既設魚道の9割を占める階段式魚道の最適な幾何学形状がほとんど解明されていないため,本年度は階段式魚道の幾何学形状を変化させた状態でアユ等を用いた遡上実験を行い,遡上に適切な幾何学形状を解明する予定である.具体的には,潜孔の位置や潜孔の形状,プールの縦横比などを変化させる予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
魚を用いた実験を行うため,魚の購入費や飼育費が必要である.また,階段式魚道において幾何学形状を変化させた実験を行うため,装置作成の材料等の経費も必要となる.さらに,開水路流中および魚道中を遊泳する魚の挙動を撮影するために,ビデオカメラが必要となり,これらの挙動を追跡するために計算機費も必要となる.以上の実験および解析を行うため,研究協力者に対する謝金も必要となる.また,上記の研究によって解明された新たな知見を学会等で発表するために,旅費や論文掲載料等も必要となる.
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