2011 Fiscal Year Research-status Report
水没する河川構造物周辺の底面流速解法と非平衡流砂運動を考慮した局所洗掘解法の開発
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23560611
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
内田 龍彦 中央大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (00379900)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 底面流速解析法 / 底面圧力 / 局所洗掘 / 非平衡流砂量 / 水深積分モデル / 非静水圧分布 / 浅い流れの仮定 / 解析法の適用範囲 |
Research Abstract |
河川構造物周辺で発生する局所洗掘は,構造物の基礎を晒し,構造物の破壊等の甚大な被害に繋がる危険性があるため,古くから洗掘予測は治水上極めて重要な課題であり,多くの研究が行われてきた.また,河川構造物周辺に形成される瀬淵構造等が河川環境にとって重要であるとの認識から,より精度の高い河川構造物周辺の河床変動予測が求められるようになってきた.河床変動予測に関する技術的課題は,河床変動を引き起こす流砂運動の解析法に関するものと,流砂運動を引き起こす底面近傍の流れの解析法に関するものに分けられる.本研究では水深平均流速場と底面流速場の解析における二次元解析,三次元解析の適用範囲を流れの水深スケールと対象とする流れのスケールの比によって明らかにした.これにより解析対象に応じた適切な解析法が明らかとなり,河川構造物近傍の流れと河床変動解析のためには静水圧分布等の浅い流れの仮定を用いない準三次元解析法が必要であることが示された.このために,鉛直方向流速のポアソン方程式と底面圧力方程式を導入した新しい底面流速解析法を開発し,橋脚周辺の局所流場に対して解析法の有効性を示した.本解析法では,三次元解析のように流速や圧力の鉛直分布を解くことなく,流砂運動を引き起こす底面近傍の流れと流れ場の抵抗を生じさせる底面の圧力の解析法を反直接的に解くことができる点に特徴がある.このため,本解析法は広域の流れ場から局所流までを一体的に解くことが可能であり,洪水時の河川構造物周辺の局所洗掘の有力な解析法と考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の大きな課題は大きく二つに分けられる.一つは河床変動を引き起こす流砂運動の解析法の構築ともう一つは,流砂運動を引き起こす底面近傍の流れの解析法の構築である.昨年度は後者の課題について,対象とする流れのスケールに応じた適切な解析法の選定方法を示し,流砂運動を引き起こす底面近傍の流れと流れ場の抵抗を生じさせる底面の圧力の解析法を反直接的に解くことができる新しい解析法を構築し,大きく進展することができた.このため,本研究初年度として順調に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
底面流速解析法の現地スケールの局所流場の妥当性の検証:現地スケールの局所流のデータは極めて乏しいことから,現地河川において局所流を計測し,検証する.底面流速解析法を用いた局所洗掘解析法:底面極近傍の流速と渦度の変形を考慮し,河床材料に作用する流体力の評価方法を検討する.次に,水没構造物周辺の砂粒子の離脱,掃流・浮遊運動,停止・堆積の素過程を表現できる非平衡流砂運動モデルを構築し,底面流速解法とカップリングした河床変動解析法を検討する.具体的には,砂粒子の運動量保存則,質量保存則から,掃流砂の加速・減速を伴う非平衡運動を記述する.そして,底面流速解析法の底面近傍流速を用いて,砂粒子の非平衡掃流運動と浮遊運動を接合し,非平衡流砂モデルを構築する.構造物を越流する急変流場と下流の局所流場の解析法:河川横断構造物などで水没構造物下流の水位が低下すると,跳水形態が潜り噴流に変化し,極めて深刻な局所洗掘現象が生じる.この場合,下流水面形が複雑になること,水面で剥離を生じる等,下流水深が高い現象の解析よりさらに複雑化する.このような現象を広域の解析が可能な水深積分モデル用いて解析するために,本研究で開発する底面流速解法を応用した解析法を開発する.水路条件や他の構造物の影響下にある河川構造物周辺の局所洗掘解析法:実河川では,河川構造物周辺の流れと河床変動は水路線形や,他の河川構造物による流れと河床変動の影響を受けて複雑に変形する.また,水制などの水没河川構造物は,群としての効果を期待することから,このような構造物周辺の流れと局所洗掘の相互作用を解析法を検討する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度の研究成果を発表し,研究の進展のために国内外の最新の研究動向の情報を取得するため,学会参加費と旅費を使用する.底面流速解析法の妥当性の検証のための現地データ取得のために,現地観測に関する各種消耗品,計測器具レンタル費用,学生の謝金を使用する.非平衡流砂モデルの構築のためには,多くの砂粒子の運動の素過程等のモデル化が必要であり,既往文献調査,既往実験データ整理,流砂研究情報収集のための打ち合わせ旅費を使用する.解析モデルを構築するために計算機のメモリー,ハードディスク増設,及びデータ保管,データ整理用アプリケーションソフト類などのコンピュータ関連消耗品を使用する.昨年度の繰越金は主として消耗品類を予定している.
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