2013 Fiscal Year Research-status Report
Fluid mud層を考慮した底泥再懸濁フラックスの評価手法の検討
Project/Area Number |
23560617
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Research Institution | Independent Administrative Institution Port and Airport Research Institute |
Principal Investigator |
中川 康之 独立行政法人港湾空港技術研究所, その他部局等, チームリーダー (30360762)
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Keywords | 底泥 / Fluid mud / 底質輸送 / 含水比 / 巻き上げ / ビンガムモデル |
Research Abstract |
主に閉鎖性の強い内湾域で広範囲に堆積する泥質物の移動は,地形変化ならびににごりの発生等に伴う水質への影響など,水域環境の変動にも密接にかかわっているものの,底泥移動プロセスが多様な泥の堆積状態に依存することにより,統一的なモデル化には至っていない.本研究では,特に高含水比底泥(Fluid mud)の存在も含めて,実海域での泥質物の堆積特性に関する情報を蓄積し,それに対する波や流れによる移動現象のモデル化を通じて,泥質物の移動量の評価方法の確立を目指すものである.本年度は,これまでに実施された現地観測データや底質試料分析データに基づく知見を基に,含水の高い底泥の堆積特性や挙動特性を吟味し,その特徴を反映させた挙動モデルの構築を検討し,外力作用に伴う底泥の移動量を算定するために以下の予測モデルの開発を行った. 1)巻き上げフラックス算定モデルの開発:波浪や潮流の作用により生じる,底泥からの巻き上げ量の評価を可能とする算定式を検討した.特に,高含水比底泥(Fluid mud)の性状を考慮して,海水とFluid mud間での密度界面で生じる混合現象としてのモデル化により,拡散フラックスとしての巻き上げ量の推定モデルを提案した. 2)水平輸送フラックス算定モデルの開発:巻き上げと同時に輸送量評価で重要となる,水平方向の輸送量についてもモデル化を検討した.モデル化に於いては,Fluid mudの性状を考慮したビンガムモデルの導入により,せん断応力の作用による底泥の輸送速度を定式化し,定量的な輸送量評価を可能とする算定式の導出を行った. 3)3D流動モデルとの結合:構築したラックスモデルを,波・流等の作用外力による輸送現象を再現可能な底泥輸送モデルへと拡張した.さらに,現地観測データに基づき,底泥輸送を支配する外力特性について,変動外力の合理的な外力評価方法の重要性を確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
計画通り巻き上げフラックスの算定式を提案し,現地観測データとの比較による精度検証を通じて,本提案モデルの妥当性を確認することができた.既往モデルでは,観測データ等との対比を通じたキャリブレーションにより決定する調整パラメータが多く含まれるため,汎用性に欠けたものであったのに対し,本提案モデルでは現象の物理的な合理性に即してモデル化されたものであり,式中のほとんどの係数が対象とする事象の状態を表す物理量(底泥濃度分布,底面せん断応力,など)によって定まるため,少ない調整パラメータでより広範囲な適用条件を有する利点があり実海域の底泥輸送計算にも容易に応用ができるものとなっている. さらに,構築したフラックスモデルを,流動場や波浪推算結果に基づく,底泥輸送モデルへと拡張し,実地形を対象とした計算モデルへと発展させることができた.限られた条件ではあるものの,現地データを用いた検証によりモデル推定精度や改善点を明らかとすることができた.また,実海域での作用外力の変動特性を合理的な取り込むことが,構築したモデルの実用上の活用において重要であることも,本研究を通じて確認できた.この点については,研究期間の延長により成果を発展させてとりまとめを行うことが期待される.
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間中に得た新たな知見(変動外力の重要性)を取り込み,モデルの発展が期待できることから,期間延長によ研究成果の発展的なとりまとめを行う.具体的には,底泥移動量を支配する波浪等の外力特性について,現地データの解析・整理に基づき整理し,より現象に即した外力評価方法を提案する.これにより,これまで構築した底泥輸送量評価式との結合をもとに,全体成果の取りまとめの充実に努める.繰越額(約750千円)の使用計画は以下のとおりである. ■旅費(500千円;国内学会出席(名古屋),海外国際会議出席(アメリカ,オランダ) ■人件費・謝金(150千円;資料整理,英語論文校閲など) ■その他(100;調査雑費,論文投稿など)
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究内容を拡張した段階で成果発表等を行うための経費を確保するため,論文校閲料等の経費について未使用額が発生した.また,2014年2月に予定していた国際会議への出席が病気入院のためキャンセル(同会議出席者への依頼によりポスターは予定通り会場に掲示)となり,海外出張旅費については翌年度への払戻金となったため. 最終成果の論文とりまとめに関する校閲料,投稿料のほか,国際会議等での成果発表のための出張旅費として使用する.①旅費(500千円;国内学会出席(名古屋),海外国際会議出席(アメリカ,オランダ)②人件費・謝金(150千円;資料整理,英語論文校閲など)③その他(100;調査雑費,論文投稿など)
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