2011 Fiscal Year Research-status Report
農山村と都市との関係を考慮した国土計画のあり方に関する研究
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23560621
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
林 良嗣 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (00133091)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 博和 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (90293646)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 中山間地域 / 国土計画 / QOL / 持続可能性 / 流域圏 |
Research Abstract |
今年度の目標は、中山間地域が有するストックおよびフローを表現する指標を開発し、データベース化することであった。そこで、中山間地域でストックとして最も多く存在する、森林に注目し、この中の人工林ストックを対象に分析を進めた。ケーススタディとして、三重県の松阪市を選定した。なお、ストックの把握において自然林(天然林)は後に述べる投入フローがゼロであるとして、分析の対象から外した。人工林ストックの把握には森林簿という森林の戸籍票に類似したものを利用した。一方、フローは人工林維持管理に投入される金額を定量的に算出し、人件費や建設費、機械利用費用などを詳細に算出することで、人工林維持管理にかかわるライフサイクル及び年度あたりでの費用を確認した。以上より、人工林からの発揮が期待される生態系サービスを考慮して、森林の社会的必要性(NOF)指標を開発し、ストックの量とそれに投入されるフローを定量的に示すことを試みた。NOF指標はB/Cのような費用効率性指標として構築することで、費用対効果を基にどの森林から管理をすべきかを分析することが可能となった。また、地域の住環境の質に対して、研究代表者が以前から進めている、QOL指標に基づく定量的な評価を行った。今回はアンケートを松阪市で取ることによって、都市住民および中山間地域住民の期待する住環境の差異をはかることが可能となった。加えて、都市地域、中山間地域それぞれでQOL値の高い地域と低い地域を確認し、それらを踏まえた上で現地調査による集落の状況を確認した。NOFおよびQOL指標によって、中山間地域ではこれまでに十分に議論が行われなかった、社会的に中山間地域に人が住む意味と、彼らに好まれている居住地域を明らかにすることができたことは成果として大きいと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、ストック、フローに基づいた指標を開発し、これを実地に適用を試みている。これ加えて、QOL指標適用のために新たにアンケート調査も終了しており、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、NOF指標と、QOL指標の統合化を検討しており、これを地域の社会的必要性指標として構築予定である。また、分析結果における結果を実際の集落と比較し、QOL指標に不足している要素を新たに把握し、歴史、文化的要素も含んだ指標への発展を考えている。さらに、森林管理が及ぼす効果において、現在は既往研究による貨幣換算評価を多く用いているが、これを改良し、水文学、森林科学の知見を用いることにより物理現象として自然現象を捉え、よりマクロに森林地域を分析することを検討している。また、23年度は研究に必要なデータの収集などが主であったため、24年度以降は収集したデータを利用して研究発表を行いたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
23年度に行った中山間地域に関わるストックとフローの相互作用の検討を踏まえて、集落の持続可能性を診断し、それに基づく治療方法について検討する。現状では、中山間集落の多くが持続不可能な状態にあると考えられる。しかしながら、QOLの確保、環境問題への対応、ライフスタイルの変化などを考慮した上でストックの新たな可能性を考えることで、新たなアウトフロー・インフローの価値が見いだせる。そこで、実際の中山間地域を対象に集落ベースでのストックとフローを定量的に把握(診断)し、各集落の差異を検証し、どのような地域が将来的にも持続可能であり得るか、また、持続可能な状態に変えることができるかについて、適切な治療方法を検討する。このとき特に重要なのは、都市域とのフローを円滑化・活発化することで、都市域にとっての中山間集落の存在意義を高めること、およびストックを有効に活用しうる集落となるための居住地再編である。一方、持続可能でない「撤退」集落と判断された際、撤退が完了するまでの間に集落を畳んでいくソフトランディング策についても検討を行う。これらを通じて、中山間地域に存在する集落の「選択」と「集中」を行い、中山間地域全体としての持続可能性の向上を検討する。
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