2012 Fiscal Year Research-status Report
東アジア経済統合下における国土計画の動学的戦略外部性に関するゲーム論的研究
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23560622
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小林 潔司 京都大学, 経営学研究科, 教授 (50115846)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松島 格也 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60303848)
大西 正光 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10402968)
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Keywords | 東アジア / 国土計画 / 国際インフラ / 調整 / コミットメント |
Research Abstract |
本研究は,東アジア諸国において,高度な経済的依存関係が深化する環境において,国土計画が果たしうる戦略的機能を明らかにすることを目的としている.1年目の平成23年度では,最もシンプルな形で戦略的外部性が存在する2国モデルの枠組みから分析を始め,国土計画の策定プロセスにおける戦略的相互関係の構造を明示的に表現し,国土計画が経済統合下における国土計画のコーディネーション機能のメカニズムについて主観ゲームの考え方を援用し分析した.しかし,昨年度のモデルは,国土計画を策定・公表する以前の段階において,政府間のコミュニケーションできない状況を前提としていた.平成24年度では,昨年度のモデルを拡張し,事前の政府間における戦略的情報交換が可能な場合の国土計画の策定プロセスについて分析を行った. 具体的には,空港のように,自国だけではなく外国にも経済効果をもたらすスピルオーバー効果が存在する国際的インフラの整備計画を想定した2国モデルを構築した.スピルオーバーが存在する場合,2つの国の間でインフラのサービス水準に関する調整の失敗が生じる可能性がある.今年度の研究では,国際的なインフラ整備計画について国土計画を通じて策定,公表することにより,調整の失敗の可能性が軽減されることが示唆された.国土計画がもたらす,このような調整の失敗を軽減する機能を政策調整機能と呼ぶ.国土計画の政策調整機能は,政府の国土計画に対するコミットメントの強さに依存する.政府が事前の段階で国土を公表したとしても,公表内容を事後的に実施しないことが予想される場合には,国土計画の公表は,外国政府の意思決定に対して影響を与えない.国土計画に対するコミットメントの強さは,政府の従前の行動パターンから推論される.以上の理論的知見に基づき,25年度では,東アジアを対象とした具体的な政策論を展開する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画では,平成24年度以降に,「国土計画が諸外国の連携戦略に与える影響に関する分析」を実施する予定であった.平成23年度で実施した理論的モデルを拡張させることにより,事前の計画である.「国土計画策定,公表前に行われる戦略的コミュニケーションが,国際的交通インフラに係わる国土計画にどのような影響を与えるかを分析する.」という課題については,すでに結論を得ている.2国モデルから3国モデルへの拡張により得られる理論的示唆については,未だ,明確な結論を得ることができていないものの,国土計画に関する政策調整機能が生じるメカニズムの本質的な部分については,ほぼ特定されたと考える.
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Strategy for Future Research Activity |
3年の研究期間のうち,2年間は国土計画の基本的機能に関する理論的知見を導き出すことに重点を置いてきた.3年目の25年度は,導き出された理論的知見に基づいて,東アジア地域のための政策的示唆を導き出すことを目指す.具体的には,以下のような,具体的計画に基づいて研究を実施する. 東アジア諸国における国土計画策定過程の現状分析(大西・松島):国土計画を巡る諸外国の戦略的構造モデルでは,極めて多様な前提条件のパターンが存在しうる.その中で,東アジアの現実を繁栄した国土計画戦略モデルを特定するためには,現実的に妥当性のある前提条件を導く必要がある.平成23年度に収集した情報・資料から妥当と想定される前提条件を導くための現状分析を併せて実施する. 東アジア諸国の繁栄に資する国土計画の規範的な策定戦略の提言(小林・松島・大西):最終的な研究成果として,国土計画の戦略的策定を通じて,東アジア全体が繁栄し,すべての国がその繁栄を享受できるようなシナリオを理論的分析により導く.その上で,国土計画の規範的な策定戦略について一つの試案を提示し,実際の国土計画の考え方に対する新たなコンセプトを浸透させていきたいと考える.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度の研究は,特段の施設,設備を必要としない.研究資料としては,ゲーム理論に関連した書籍,東アジアの経済統合の動向に関連する文献が必要である.既述の通り,成果発表は学術論文への投稿論文が基本であり,論文の投稿料,別刷りのための経費が必要で ある.また,学会においても研究成果を継続的に実施する必要があるため,国内・海外出張のための旅費が必要である.特に,東アジア諸国における国土政策に関する実務的,学術的議論の動向についてフォローするために,各国における国際会議への参加を計画して いる. また,本研究においては,高度なデータ処理は行わないものの,関連文献の収集に当たっては,学生によるアルバイトを活用する予定にしており,そのための謝金が必要となる.また,随時,専門的な知識を有する実務家に対するヒアリングや講演依頼を行うことを予 定しているため,専門知識の供与に対する謝金も必要となる. さらに,次年度は最終年度であるため,理論的な示唆を政策的示唆につなげていくための,具体的な情報や,各国の政策に精通した研究者や実務家との情報交換が不可欠となり,海外旅費に対して重点的に支出される計画である.
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[Book] Thomas Telford Publishing2012
Author(s)
Kiyoshi Kobayashi, Khairuddin Abdul Rashid, Masamitsu Onishi, Sharina Farihah Hasan
Total Pages
252
Publisher
Joint Venture in Construction 2: Contract, governance, performance and risk