2011 Fiscal Year Research-status Report
空コンテナの一時利用制度を活用した国内貨物の輸送が都市交通環境に与える影響の分析
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23560624
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
秋田 直也 神戸大学, 海事科学研究科(研究院), 講師 (80304137)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 環境政策 / 地球温暖化ガス排出削減 / 物流・貨物輸送 / 空コンテナの効率輸送 |
Research Abstract |
本年度は、運送事例調査の結果をもとに、空コンテナ輸送と国内貨物輸送とのマッチング成立のための条件の整理を行い、導入効果をあらわす評価指標の検討を行った。 輸出・輸入において空コンテナのマッチングを成立するには、輸入者と輸出者に対して、とりわけ、(1)コンテナの大きさの一致(20FT、40FT、HQ)、(2)利用する外航船社の一致、(3)輸入側で空コンテナとなるタイミングと輸出側で空コンテナを調達するタイミングの一致が求められていた。そして、運送事例が限られる背景には、利用する外航船社の不一致と輸入側で空コンテナとなるタイミングが不確実であることがマッチング成立の大きな障壁となっていることと、これら要件を一致させる手間が非常に掛かることがあげられる。 また、空コンテナのラウンドユース輸送の実態として、(1)輸入荷主から輸出荷主へ、直接、空コンテナを輸送する方法と、(2)輸入荷主から、内陸部デポに空コンテナを搬入して、輸出荷主へ輸送する方法の2つがみられた。そして、(2)における内陸部デポとしては、民間倉庫または第3セクターが運営するインランドデポや、JR貨物駅、トラック運送事業者の施設を利用するタイプに大別できた。 さらに、導入効果をあらわす評価指標を、荷主、外航船社、運送事業者、社会といった関連主体ごとに設定した。その上で、空コンテナのラウンドユース輸送に対する各関連主体のモチベーションを高めるためのパートナーシップ構築のあり方の検討や、導入効果を算出するにあたっては、空コンテナの移動に着目して行う場合と空コンテナを運送するためのトラックの移動に着目して行う場合の2通りで検討することが必要であることがわかった。 その一方で、社会的な環境づくりが整備されてきており、オフセット・クレジット(J-VER)制度における方法論の設定や、免税コンテナーの国内運送の規制緩和が実施されたことなどにも配慮したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、運送事例調査を、NPO団体や実際に空コンテナのマッチング輸送を行っている荷主、運送事業者、第3セクター組織などを対象に実施し、実態の把握を行った。そして、一方で、空コンテナ輸送と国内貨物輸送とをマッチングさせる手法の開発を試みているが、当初は、以下の3つのケースの目的関数を設定していた。・ケース1:空コンテナの総輸送距離が最小となるように、空コンテナ輸送と国内貨物輸送との組み合わせを抽出するマッチング手法の開発。・ケース2:国内貨物輸送による環境負荷の軽減効果が最大となるように、空コンテナ輸送と国内貨物輸送との組み合わせを抽出するマッチング手法の開発。・ケース3:空コンテナの総輸送距離と国内貨物輸送による環境負荷の軽減効果の両方を考慮した、空コンテナ輸送と国内貨物輸送との組み合わせを抽出するマッチング手法の開発。 しかし、運送事例調査の結果から判断すると、これらケースをさらに細分化する必要があると考えた。このため、空コンテナ輸送と国内貨物輸送とをマッチングさせる手法の開発が完成するまでには至っていない。 こうしたことを総合的に判断して、「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
空コンテナ輸送と国内貨物輸送とをマッチングさせる手法の開発を引き続き行う。具体的には、より実態を再現可能なモデルとするため、(1)輸入荷主から輸出荷主へ、直接、空コンテナを輸送する方法と、(2)輸入荷主から、内陸部デポに空コンテナを搬入して、輸出荷主へ輸送する方法の2つの輸送方法ごとに、モデルの開発を行う。さらに、導入効果の算定にあたっては、(1)空コンテナの移動に着目して行う場合と(2)空コンテナを運送するためのトラックの移動に着目して行う場合の2つのケースで行う。 また、空コンテナODと国内貨物ODを変化させた数ケースのシナリオを設定する。そして、設定したシナリオごとに、開発した導入効果予測・評価システムを用いて、それぞれの導入効果を算定する。その上で、理論的な側面から、高い導入効果が得られる空コンテナ輸送と国内貨物輸送の組み合わせを明らかにする。 さらに、神戸港・大阪港の港勢圏に立地する荷主を対象としたアンケート調査を企画・実施する。具体的には、前年に行った輸送事例調査の結果やシナリオごとに得られた本輸送システムの導入効果などから、本システムの利用意向に寄与すると考えられる要因を抽出し、アンケート調査項目を設計する。その上で、郵送によるアンケート調査の配布および回収を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度、海コン車の追走調査を実施する予定であったが、空コンテナのマッチング輸送を実際に行っているトラック運送事業者との交渉がまとまらず、実施に至らなかった。このため、研究費を次年度に繰り越し、あらためて、海コン車の追走調査(5日間程度)を、企画・実施する。なお、実施にあたっては、NPO団体との連絡を積極的にとり、多くの助言を受けたい。また、現在、トラック運送事業者の協力が得られる目途が概ねついている状況にある。 さらに、神戸港・大阪港の港勢圏に立地する荷主を対象としたアンケート調査を企画・実施する。アンケート調査票の配布・回収は郵送で行い、日本国内における既往の調査などから、回収率は10%程度と考えられることから、2000票程度の配布を検討している。なお、アンケート調査票の準備・配布・整理にあたっては、研究補助員を動員することによって効率的に行いたい。 また、各調査で得られた結果を統計的に処理するために、デスクトップ型パソコンならびに統計解析用アプリケーションソフトを計上した。さらに、NPO団体との研究打合せのための国内旅費と、得られた成果を、所属する土木学会などで積極的に発表するための国内・外国旅費を計上した。
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