2011 Fiscal Year Research-status Report
都市高速道路の料金政策に着目した交通運用に関する研究
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23560636
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
秋山 孝正 関西大学, 環境都市工学部, 教授 (70159341)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥嶋 政嗣 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 准教授 (20345797)
鈴木 崇児 中京大学, 経済学部, 教授 (70262748)
井ノ口 弘昭 関西大学, 環境都市工学部, 助教 (10340655)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 交通計画 / 都市高速道路 / 対距離料金制 / 交通運用 / 知的情報処理 |
Research Abstract |
本研究の初年度として、都市高速道路の料金制度に関する基本的事項を整理するとともに、対距離料金設定方法について考察した。具体的には、以下の手順で検討を行った。1)まず都市圏全体の「社会的余剰」(利用者便益)に基づく料金政策の理論的背景を整理し、次善料金として都市高速道路の有料制の妥当性を検証した。現実的な都市高速道路の料金政策として、「対距離料金」を取り上げ、基本的理念と有効性を交通経済理論の面から整理した。2)需要変動型モデルを都市道路網の実態に関して、京阪神都市圏を対象地域として基本データを収集した。また、京阪神都市圏の都市高速道路の幹線道路網に対して交通需要関数を想定した交通需要変動パターンを提示した。3)都市道路網の基本的な交通均衡解析を実行した。2種類の交通量算定技術を提案した。すなわち、(1)経路別料金算定と多層型ネットワーク経路探を包含したモデルを定式化した。また、(2)複数回の高速道路利用(乗り継ぎ)を表現可能とするため、最短経路探索に関する「代替的仮想リンク設定法」を提案した。4)ここまでの研究成果を踏まえて、(1)都市高速道路の任意の課金額設定と(2)複数回利用交通の算定を包含した都市道路網の交通均衡分析法を開発した。この際、大規模道路網を対象とすることから、計算時間の増大に対応するため、修正型の計算アルゴリズムを検討した。5)都市高速道路の対距離料金設定に関する社会的便益の算定を実行した。「均一料金」設定時の都市道路網の交通状態との比較に基づく便益を算定した。また、都市道路網における交通状態を算定して、対距離料金決定に伴なう影響範囲を検討した。6)これらの検討結果を踏まえて、都市高速道路の対距離料金の基本的形状に着目した設定方法の有効性を整理した。さらに、対距離料金制の運用にともなって期待される交通混雑緩和および社会的便益の影響範囲について議論を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は初年度であり、主として以下のような研究を推進する予定としていた。(1)都市圏全体の「社会的余剰」(利用者便益)に基づく料金政策の理論的背景を整理し、次善料金として都市高速道路の有料制の妥当性を検証する。特に現実的な都市高速道路の料金政策として、「対距離料金」を取り上げる。このとき、「対距離料金制」の基本的理念と有効性を交通経済理論の面から整理する。(2)需要変動型モデルを都市道路網の実態に関して、京阪神都市圏を対象地域として、道路交通センサス、起終点調査などの基本データを収集する。また、京阪神都市圏の都市高速道路の幹線道路網に対して交通需要関数の設定により、交通需要変動を明確化する。(3)都市道路網の基本的な交通均衡解析を実行する。2種類の交通量算定技術を提案する。1)経路別料金算定と多層型ネットワーク経路探を包含したモデルを定式化する。2)対距離料金下で特徴的な交通現象である複数回の高速道路利用(乗り継ぎ)を考慮した最短経路探索方法として、「代替的仮想リンク設定法」を提案する。(4)ここまでの研究成果を踏まえて、1)都市高速道路の任意の課金額設定と2)複数回利用(乗り継ぎ)交通の算定を包含した都市道路網の交通均衡分析法を開発する。この際、京阪神都市圏の大規模道路網を対象とすることから、演算内容の複雑化に伴う計算時間の増大に対応するため、並列計算処理の技術を導入する。(5)都市高速道路の対距離料金設定に関する社会的便益の算定を実行する。現行の「均一料金」設定時の都市道路網の交通状態との比較により便益を算定する。(6)都市高速道路の対距離料金の基本的形状に着目した設定方法の有効性を整理する。対距離料金の運用時に期待される交通混雑緩和および社会的便益の影響範囲について議論する。これら(1)~(6)の各項目について研究を完了し、一部の研究成果は学会報告をおこなっている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の検討結果を踏まえて、対距離料金を拡張した現実的な課金政策に関する分析を行う。特に「時間的・空間的」な運用視点から、弾力的な料金設定の有効性を検証するとともに、具体的な都市高速道路料金設定方法に関する検討を行う。1) 前年度の「対距離料金制」を拡張した料金形式を検討する。具体的には交通需要関数を設定するとともに、「時間帯別料金」「区間別料金」等の時間的・空間的な料金設定を検討する。2) 時間的・空間的に多様な料金設定方法を提案する。このとき、膨大な計算プロセスを簡便にするため、実用性に配慮した「知的情報処理モデル」を導入した算定法を提案する。3) 具体的な知的情報処理過程として、(1)事前に料金形式の複数ケースの定量的評価値を算定する。(2)設定形式と社会的便益(算定結果)の非線形関係をファジィNN型推計モデルを用いて表現する。(3)社会的便益推定モデルを内包した組み合わせ最適化手法(GA,IA等)を利用して料金形式の具体的な設定を行う。4) 各要素パラメータを最適設定した時間的・空間的な料金形式として、時間帯別・区間別(ゾーン別)の一般的な対距離料金を提案する。これより都市高速道路の適切な料金設定が、都市道路網の交通調整面から効果的で、社会的に適正な料金(次善料金)として有効に機能することを示す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
料金設定の各種方法を検討するための交通均衡分析のモデリングにおいて、交通工学分野、計算機工学分野の知見を整理する必要があり、当該分野の関連書籍を計上している。また、研究成果発表のための旅費、および研究分担者との打合せのための旅費を計上している。さらに、多数の計算機プログラムの運用と計算結果の整理のためのアルバイト代を計上している。さらに、研究成果の論文投稿のための経費を計上している。
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