2011 Fiscal Year Research-status Report
農地の営農と湛水事業による地下水の硝酸性窒素汚染に関する研究
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23560651
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
市川 勉 東海大学, 産業工学部, 教授 (00119645)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 硝酸性窒素 / 地下水汚染 / 湛水田 / 湧水 / 地下水涵養 |
Research Abstract |
本研究は減反田を利用した地下水涵養事業による硝酸性窒素汚染の現状を的確に把握し、湛水事業による汚染の状況を評価することを目的として実施している。 平成23年度は、それまでの実施した減水深調査を継続すると共に湛水圃場での湛水前後の深度別不撹乱土壌を採取し、窒素収支計算によってその溶脱量を算出し、浸透量で除することによって、浸透水に含まれる窒素濃度を圃場の作付け別に比較した。その結果、作物では、メロンなどの果実の場合、圃場に残留する窒素量が多く、窒素溶脱が発生していることがわかった。減水深調査の結果、集中豪雨による影響が湛水田の浸透能力を低下させ、湛水事業による地下水涵養量低下を示唆した。また、下流側の江津湖において14地点における硝酸態窒素濃度の年間変動を測定した。その結果、湧水の窒素濃度は年間変動を繰り返しながら上昇傾向にあること、さらに、流下するにしたがって窒素濃度が低下していることがわかった。これは、ボタンウキクサなどの外来植物の繁茂によるものと推定された。江津湖から下流側への窒素の年間流出量は年間約500Nt と推定され、河川流下によるものより湧出水の流出による窒素の有明海への影響がある可能性を示唆した。さらに、湧出地域周辺の第一、第二帯水層の地下水位と第二帯水層から湧出していると考えられる自噴井戸の地下水の硝酸性窒素濃度観測結果を用いて、湧出に占める上下二つの帯水層からの湧出割合、第一帯水層の地下水の硝酸性窒素濃度の推定を行なった。 これらの研究成果を土木学会全国大会、東海大学産業工学部紀要に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年の湛水田における減水深調査において、それまで高い減水深を示していた湛水田において浸透能力の低下が見られた。この原因は、洪水流が水田地域に侵入し、湛水田の表面にマッドケーキを形成し、浸透能力を低下させたと考えられる。そこで、洪水流が発生した年の涵養量評価の再評価が必要になり、この項目については平成24年度に追加して研究を実施する必要がある。 その他の研究項目、1)湛水田における圃場の土壌中および灌漑用水栄養塩類測定2)前寺、江津湖における湧水量、水質調査の項目に関しては、 調査結果を用いた湛水前後の水質試験結果から地下水への浸透による栄養塩類の量を把握、湧出口での硝酸性窒素の観測結果を用いた上下両帯水層の地下水中に含まれる硝酸性窒素濃度の把握が出来た。 以上のことから、研究の達成度は40%と評価でき、研究全体の進展状況はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度には、ア)湛水田における減水深調査を実施し、減水深分布図をさらに精密なものとする。イ)水田、湛水田の湛水実施アンケートによる涵養量評価も継続して行い、地下水涵養量の変化を追跡する。これらの項目については、平成23年度に明らかになった洪水流による浸透能力の低下の影響についても検討を行なう。ウ)湛水田における圃場の土壌及び灌漑用水中の栄養塩類測定を継続的に行うことによって水田、湛水事業(特に多量の硝酸性窒素が滞留する作物について)、湛水作物の作付けによる地下水の涵養が地下水の栄養塩類の水質の変動に与える影響を評価する。エ)下流部に位置する水前寺、江津湖における湧水量、水質調査を行うことによって、下流部の熊本市上水道の水源地域における地下水・湧水の量と水質の挙動を監視していく。これらの調査・研究を継続的に行うことによって、営農と湛水事業による地下水汚染への寄与度を評価していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、継続して下流域に位置する江津湖における流量観測、主要地点における栄養塩類の調査を月1回実施する。この調査には、観測補助、観測に使用する消耗品が必要となる。白川中流域においては、湛水田の減水深調査を実施し、さらに精密な分布を求め、湛水事業のアンケート調査によって平成24年度の湛水事業による地下水涵養量を推定する。また、飼料用作物やこれまで調査していなかった作物種を栽培した後、湛水する圃場を対照に、湛水事業、湛水作物の作付けによる地下水の涵養が地下水の栄養塩類の水質の変動に与える影響を過去の観測を含めて評価する。これらを継続的に行うことによって、営農と湛水事業による地下水汚染防止の効果を評価していく。これらの観測に水質分析用消耗品、現地観測用消耗品が必要となる。観測成果を取りまとめ、土木学会の全国大会、国際会議で発表する。これらに旅費を支出する。また、水文水資源学会誌に投稿する。
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Research Products
(6 results)