2012 Fiscal Year Research-status Report
農地の営農と湛水事業による地下水の硝酸性窒素汚染に関する研究
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23560651
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
市川 勉 東海大学, 産業工学部, 教授 (00119645)
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Keywords | 硝酸性窒素汚染 / 湛水事業 / 湧水 |
Research Abstract |
平成24年度は、研究対象地域における現地調査を継続的に実施し、研究課題に関係する調査データを取得するとともに、これまでの研究成果を2012年10月にインドネシアで開催された”ICEBESE 2012 : International Conference on Environmental, Biological, Ecological Sciences, and Engineering”で“Estimation of Groundwater Recover by Recharge in the Agricultural Area”と題して発表した。また、同じ2012年9月に、鹿児島大学で開催された日本地下水学会秋季大会で、「熊本・白川中流域における減反田における湛水事業による地下水涵養の効果」と題して発表を行った。これらの発表では、2004年から湛水事業を開始して以来のデータを取りまとめ、湛水事業による地下水位回復や下流部の江津湖の湧水量回復への効果について詳細に発表した。 また、2009年から継続的に観測している湧出口での硝酸性窒素濃度観測結果から、硝酸性窒素濃度の上昇傾向について2013年3月に熊本日日新聞に公表した。 これまでの調査データの蓄積によって、農地における湛水事業の前後における土壌調査データを蓄積しているが、湛水前の作物の状況によって、土壌中に残留する窒素量が異なることがわかった。通常の作物、例えば、麦の場合、湛水によって溶脱する窒素の量は少ないことがわかったが、最も残留が多い飼料作物についてさらに調査を行い、平成25年度に発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の研究項目のうち、下流部の江津湖の湧水に含まれる栄養塩類、特に、硝酸性窒素の濃度は毎月観測し、2009年4月以降、年々上昇していることが判明した。また、上流の白川中流域における湛水事業による地下水涵養量は毎年推定している。これらの成果は、国際会議や学会での発表のほかに、熊本日日新聞など報道機関を通じて公表した。 これまで、湛水前の作物別に湛水前後に深度1mまで10cm間隔で採土し、簡易土壌養分試験によって湛水前後の窒素量を把握した。その結果を用いて湛水事業の湛水前の作物別浸透量と溶脱量から湛水事業による窒素負荷の状況が推定できる。この解析は最終年度の平成25年度に実施する予定である。 さらに、熊本県・市の地下水流動解析から砥川溶岩に入ると地下水流加速度は40m/日にも達するため、白川中流域から江津湖までは約15年程度かかるものと推定されている。そのため、現在の浸透水に含まれる硝酸性窒素は途中の畑作地帯を通じて上昇し、江津湖へ湧出することが推定された。 平成24年度までに、9年間にわたる湛水事業の地下水涵養量が把握できたこと、その間、下流の江津湖の湧水量の変化を観測したことにより、湛水事業の評価が実施された。また、湛水田の湛水前後の土壌中の窒素の濃度変化が把握できている。 以上の結果から、研究目的の達成度は、75%程度と考えられ、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度に当たる平成25年度は、地下水流動の下流部にある江津湖の湧水量、湧水中の窒素濃度の観測、白川中流域の湛水事業による地下水涵養量の推定、飼料作物を作った後の湛水による窒素溶脱量の観測を継続的に実施するとともに、これまでの観測データを併せ、湛水事業による窒素溶脱の程度を評価し、その成果を学会誌、学会に投稿する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、江津湖の湧水量、水質調査を実施するとともに、白川中流域湛水事業の地下水涵養量評価、湛水田による窒素溶脱量の調査を継続して実施する。そのため、観測、データ整理に研究補助、水質観測のためのデジタルパックテスト、ECメーター、pHメーター、流量観測時に使用するウェーダー、野帳、文具、採土時に使用する観測用消耗品の購入に研究費を使用する。また、日本地下水学会に発表すると同時に、学会誌に投稿するための費用を使用する。 特に、平成24年度に残額が発生した理由は、多くの検体(年間約1,000検体以上)の水質試験を実施するために、デジタルパックテスト対応のパックテスト(試薬、1件体・1項目当たり約100円)を購入する必要があるが、試薬の使用期限は一年であり、平成25年に使用する試薬は、平成25年度当初が適切であるため、平成24年度中に購入せず、平成25年度に購入するためである。
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Research Products
(2 results)