2011 Fiscal Year Research-status Report
強い非線形性を伴う構造物の解析・設計のための非滑力学的方法論の展開
Project/Area Number |
23560663
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
寒野 善博 東京大学, 情報理工学(系)研究科, 准教授 (10378812)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 接触問題 / 弾塑性問題 / 凸最適化問題 / 凸解析 / 半正定値計画 / 整数計画 / 摩擦 / 張力構造 |
Research Abstract |
非滑力学(Nonsmooth Mechanics)は,構造物の種々の非線形現象を理論的・数値的に解析するための強力な方法論である.本課題では,建築構造物の解析の現場で困難とされてきた強い非線形性を伴う問題に改めて注目し,非滑力学の立場から捉えなおすことで,より適切な定式化と頑健な数値解析法を開発することにある.平成23年度は,非滑力学の対象の典型例として,(1)接触問題の数値解法のウォーム・スタート法の開発と,(2)ケーブルの弛みを含む得る張力構造物の設計法の開発を行った.このうち(1)の手法は,非滑力学の中で最も基本的な接触問題に対して,前ステップで得られた解を次ステップの求解に有効に活用する手法を提案した.次に(2)では,具体的な張力構造物としてテンセグリティを取り上げ,その最適設計法を開発した.ケーブルに弛みが生じることを許す場合,テンセグリティは非滑力学の対象となる.つまり,変形後に弛みが生じるか否かは未知な状態で設計を行う必要がある.このときの各ケーブルの状態の場合わけを適切に扱う数理的な道具として,相補性条件と整数性制約の二つがある.この研究では,整数性制約を用いてケーブルの状態を記述すると,テンセグリティの設計問題全体が整数計画の枠組で扱えることを明らかにした.整数計画は,近年になって高速なソフトウェアが盛んに開発されており,解ける問題の規模も飛躍的に大きくなっている最適化問題である.従って,このような定式化を行うことで,複雑で新しいテンセグリティを設計する自由度が広がることが期待できる.以上のそれぞれの数値手法について数値実験を行い,有効性を検証した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
摩擦なしの接触問題に対して,ウォーム・スタートという概念を導入した数値解法を開発した.摩擦なしの接触問題は非滑力学の古典的な対象であり,非滑力学の新たな展開をめざすという本課題の目的によく合致している.建築構造物の中でも設計が難しいテンセグリティを具体的な事例として取り上げ,その設計問題を整数計画という数理的な道具で解く手法を開発した.これは,建築構造力学に内在する非線形問題を掘り起こして非滑力学の考え方を適用することで解決するという事例の一つであり,本課題の中心的な成果の一つである.
|
Strategy for Future Research Activity |
ケーブルのみに限らず,弾塑性問題など,建築構造物の解析・設計に現れる種々の非線形問題への展開をめざす.また,接触問題にまつわる解析・設計手法については,さらに深く研究を行う.その際には,ケーブルの弛みを許したテンセグリティの設計法において有用であった整数計画の活用法を参考にする.さらに,それらの応用として,特別な機能をもつ構造物の設計法を開発する.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
非滑力学が対象とする具体的な物理現象は,多岐にわたるため,広範囲の文献調査が必要であり,計算力学および数理工学関連書籍の購入費を申請している.対象分野が多岐にわたることは,国内外の関連研究者と会い,議論および情報収集を行うことの重要性を意味している.このために,国内および国外の旅費を申請している.学会参加費の計上についても,同じ理由による.機能をもつ構造物の設計法の開発に関しては,必要に応じて,模型を製作して構造物の挙動を確認することも検討する.
|
Research Products
(5 results)