2011 Fiscal Year Research-status Report
鋼構造接合部の破壊に影響を与える多様な溶接欠陥の定量的評価方法の確立
Project/Area Number |
23560673
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
田中 剛 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90243328)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 鉄骨造建物 / 溶接接合 / 溶接欠陥 / 破壊モード / 塑性変形能力 / 実大実験 / FEM |
Research Abstract |
本研究課題は,溶接欠陥の合理的な欠陥評価方法を確立することを目的としている。平成23年度では,大地震時に溶接部の破壊が最も懸念される梁端溶接部を対象として,その中でも,実験資料が不十分であり,溶接欠陥が最も破壊に対して敏感に働く梁端現場溶接形式に関する研究に取り組んだ。当該年度では,溶接部強度を因子として現場溶接形式における溶接欠陥が梁の塑性変形能力に与える影響を検討するために実大載荷実験を行うとともに,有限要素数値解析を実施した。試験体は通しダイアフラム形式で角形鋼管柱とH形断面梁を溶接接合したT字形試験体である。実験因子は溶接部強度および欠陥長さである。溶接部強度については,YGW11を用いてパス間温度を450℃としたFシリーズとYGW18を用いてパス間温度を250℃としたF/Sシリーズの2シリーズとした。欠陥については,固形エンドタブを使用した場合に生じ易い溶接始終端の初層の溶込み不良を対象とし,各シリーズについて,無欠陥および欠陥長さを5(mm),10(mm),15(mm)とした合計8体の試験体を製作した。欠陥は,溶接初層の始終端部にダイアフラムに接して鋼片(5mm×5mm)を設置した上で溶接することにより挿入した。欠陥を挿入した試験体では,全て欠陥先端に発生した延性亀裂が板厚方向および板幅方向に進展し,ダイアフラム側で脆性破壊を生じた。実験結果より以下の知見が得られた。(1)端部欠陥が存在する場合,溶接部強度を上げることで塑性変形能力が向上した試験体は無く,溶接部強度の増加に伴う変形能力の改善効果は期待できない。(2)現場溶接形式の初層の端部欠陥は,塑性変形能力を著しく低下させる。したがって,固形エンドタブを用いて梁端フランジを現場溶接する場合には,溶接施工に注意するとともに,適切な検査方法を採用する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度では,当初の計画通り梁端現場溶接形式に関する系統的な実験資料を蓄積した。これまでに当研究室で実施してきた実験資料と併せることにより,実験データの整備を進めることができた。一方で有限要素数値解析により欠陥先端の亀裂開口変位および応力状態に関する解析データも得られつつあり,現在,実験データと解析データに基づいた検討を始めている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度では,梁端現場溶接形式に生じ易いもう一つの典型的な欠陥である梁フランジ幅中央位置における溶接初層の溶込み不良を対象とする実験と角形鋼管柱と通しダイアフラムとの溶接に生じる溶接欠陥を対象とする実験の2つの実験シリーズを計画している。梁端現場溶接形式の下フランジでは,梁ウェブが邪魔板となるためスカラップの箇所で溶接が中断され,溶接ビードに継ぎ目ができる。この時に溶込み不良などの溶接欠陥が生じることがある。次年度の1番目の実験シリーズでは,この溶接欠陥が梁の塑性変形能力に与える影響を検討するために4体程度のT字形試験体による実大載荷実験を計画している。2番目の実験シリーズである角形鋼管柱と通しダイアフラムとの溶接部に生じる欠陥については,系統的な実験資料が得られていない。欠陥位置(コーナー部と平板部,鋼管の内面側と外面側)および欠陥長さを実験因子として,片持ち柱形式の実大載荷実験を6体程度計画している。載荷は漸増交番繰り返し載荷とし,欠陥が柱の破壊モードおよび塑性変形能力に与える影響を検討する。上記2つの実験シリーズについて,有限要素数値解析を行い,平成23年度の研究成果を含めた検討を行い,合理的な欠陥評価方法の確立を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究課題では,実大実験により破壊性状を調べることが不可欠なので,全体の研究費用のほとんどは,実験に要する費用(試験体の製作,試験片の製作,学生の実験作業に伴う謝金)である。載荷実験は,神戸大学工学部の構造物試験室において,既存の加力装置および計測装置を用いて行うことができるので,設備備品類はほとんど不要である。次年度では,以下の研究費の使用を計画している。(1)試験体製作費:150万円(梁端現場溶接形式T字形試験体:15万円/1体×4体=60万円,柱端溶接片持ち柱試験体:15万円/1体×6体=90万円)。(2)ゲージ:15万円。(3)引張試験:15万円。(4)謝金:10万円。
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