2011 Fiscal Year Research-status Report
老朽化した既存建築物の柔性型架構増築による構造性能リニューアル技術の開発
Project/Area Number |
23560680
|
Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
伊藤 拓海 東京理科大学, 工学部, 講師 (50376498)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 賢志 千葉工業大学, 工学部, 准教授 (20397029)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 平面異種混合構造 / 耐震改修 / 空間拡大 / 接合部 / あと施工アンカー / 載荷実験 / 塑性解析 / 非線形立体応答解析 |
Research Abstract |
既存RC建物に対して鉄骨架構を増築して耐震補強する、いわゆる平面異種混合構造が提案されている。本年度の研究では、RC造と鉄骨造の異種構造間の接合法の開発と、立体応答性状を解明するための解析的検討を行なった。老朽化したRC建物に鉄骨ブレースを用いた外付け耐震補強が提案されており、すでに多数の採用実績がある。同手法において、異種構造間の接合法に関して具体的な複数の方法が提案されている。ここで、同手法における接合部では、主としてせん断力が作用することになるが、本研究で対象とする平面異種混合構造の接合部の応力状態は、直接的に曲げや軸力が作用する。しかし、このような平面異種混合構造で想定される応力状態に対する異種構造間の接合部の技術についての提案はまだない。そこで本年度の研究においては、既存の異種構造間の接合法を参考として、連結接合部の具体的な接合技術を提案した。さらに、接合形式を変数としたハーフスケールの接合部試験体を製作し、載荷実験を実施した。実験結果より、耐力と変形能力、さらに崩壊形態や耐荷機構を実測し、分析と検討を行った。また、連結接合部の耐力の計算法を提案し、予測精度の検討を行った。以上より、平面異種混合構造の連結接合部の接合法としての有効性と適用性を確認した。次に、平面異種混合構造の立体的な応答性状の把握を目的として、非線形立体地震応答解析を実施した。まず、平面異種混合構造物の地震応答解析を実施し、さらに等価線形化法による推定を行った。また、完全に一体となって挙動すると仮定した場合の耐震性能評価法を検討した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画において、本年度は平面異種混合構造の連結接合部における具体的な接合法を提案し、成立性の確認を目的とした構造実験を実施することを目的としていた。さらに、立体応答性状の把握を目的として、解析的検討を行なうことを目的としていた。前者については、平面異種混合構造により効果的な耐震補強効果を得るため、連結接合部が具備すべき要求性能を列挙し、連結接合部の保有性能を把握する目的で構造実験を実施した。当初の予定では、具体的な接合法を提案し、実際に試験体を製作して構造実験を実施することとしていたが、概ねその計画を達成できた。さらに、実験結果の分析と考察を通じて、本年度の接合法の改善すべき点や課題も浮かび上がったため、次年度の実験計画へ反映させたいと考えている。後者については、平面異種混合構造による立体架構全体の応答性状を把握し、効果的な補強効果を得るための条件や問題を明らかにするため、非線形立体応答解析プログラムを用いて解析的検討を行なった。当初計画していた検討項目については概ね解析的検討を行なうことができた。さらに本年度の検討により、引き続き検討すべき課題も明らかとなった。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度の実験結果を通じて、提案した接合法の改善すべき点や課題を整理し、次年度の実験計画へ反映させたいと考えている。本年度は、増築鉄骨部分の架構形式について、いわゆるT型形式による単調載荷実験を実施した。実験結果より、接合部の応力状態が引張となる箇所において、試験体の設計時には想定していなかった崩壊モード(接合層のモルタルのひび割れ)が発生した。この崩壊モードは、脆性的な崩壊を迎える可能性があり、その究明もしくは同モードを回避する方法を提案することが重要であると考えている。そこで、本年度の実験結果ならびに解析結果に基づき、最大引張力が作用する箇所に、脱落防止アンカーを用いた試験体を用意し、その有効性について実験的検討を行う。さらに、T型形式とした増築鉄骨部分を、門型鉄骨架構に修正して、実際の建物に近い状況を再現する試験体を製作し、載荷実験を実施する予定である。さらに、平面異種混合構造の精緻な検討を行う必要があるが、接合部の実験結果から得られた知見や力学モデルを構築し、これらの成果を立体応答性状に関わる解析パートに反映させて、総合的な検討を行うことも予定している。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度の実験結果より明らかとなった接合法や実験方法に関わる学術的かつ方法的な課題について、その改善を図った接合部試験体を製作し、構造実験を実施する。そのため、試験体製作とそれに関わる諸費用を次年度研究費として計上する予定である。本年度の収支実績から、この試験体の製作のみで次年度の研究費の大半を使用することとなる。さらに、本年度の研究成果を、2012年9月に開催される世界地震工学会議にて発表予定であり、発表登録費や渡航費等を次年度研究費として計上する予定である。
|