2012 Fiscal Year Research-status Report
老朽化した既存建築物の柔性型架構増築による構造性能リニューアル技術の開発
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23560680
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
伊藤 拓海 東京理科大学, 工学部, 講師 (50376498)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 賢志 千葉工業大学, 工学部, 准教授 (20397029)
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Keywords | 平面異種混合構造 / 耐震改修 / 空間拡大 / 接合部 / あと施工アンカー / 載荷実験 / 塑性解析 / 非線形立体応答解析 |
Research Abstract |
既存RC建物に対して鉄骨造を増築して耐震補強する平面異種混合構造が提案されている。本研究課題では、前年度考案したRC造と鉄骨造の異種構造間の接合法について、本年度は実際の建物を想定して実験対象範囲を拡大し、力学的機構や弾塑性挙動の解明を目的とした構造実験を実施した。さらに、平面異種混合構造の立体応答性状について、時刻歴応答解析による検討に加えて、等価1自由度系縮約による最大応答評価を行い、予測精度の検討を行った。また、崩壊形制御を意図した増築による耐震改修の可能性を検討した。 実験的検討に関する研究について、前年度は異種構造間の接合法としてあと施工アンカーを利用した直接接合と間接接合の適用を提案し、その成立性に関する基礎的な実験を行った。本年度は、建物3層を想定し、直接接合工法による試験体を製作して載荷実験を実施した。実験結果より、耐力と変形能力、崩壊形態や耐荷機構を実測して分析を行った。また、連結接合部の耐力の計算法を提案し、予測精度の検討を行った。以上より、平面異種混合構造の連結接合部の接合法としての有効性と適用性を確認した。 解析的検討に関する研究について、3層RC造に鉄骨造を増築する場合を想定し、改修後の建物の地震応答評価を試みた。1次モード応答のみに着目し、等価1自由度系縮約により最大応答評価を行った。検討の結果、最大応答は良好な精度で評価できたものの、連結部の最大せん断力に関しては過小評価となる傾向となった。なお、連結部が現実的に設計可能であるか検討し、問題ない事を確認した。また、9層SRC造骨組を対象として、増築により層崩壊を防止して全体崩壊機構を実現させるための条件を明らかにするための解析的検討を行なった。検討の結果、層崩壊を防止するためには、増築鉄骨架構にはAi分布による静的漸増載荷解析より得られるせん断力よりも大きな耐力が必要となることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、前年度に実施した連結接合部の成立性確認実験の結果に基づき、実際の建物を想定した試験体を製作し、構造実験によりその力学的特性と弾塑性挙動を明らかにした。さらに、実験結果に基づき、耐荷機構と構造性能に関わる解析モデルを提案し、予測精度について検討を行った。当初の研究計画では、構造実験を実施して連結接合部の力学的機構と弾塑性挙動の解明を目的としていたが、その計画を達成できた。さらに、実験結果に基づいて解析モデルを提案することができ、耐力や損傷状況を予測するめどがたち、当初の計画以上の成果を得ることができた。なお、本年度は学会等への論文投稿と研究発表を通じて、学外から様々な意見をいただくことができた。その中で浮上した課題を整理し、次年度の研究計画へ反映させたいと考えている。 解析的検討に関する研究については、平面異種混合構造による改修後の建物の地震応答性状に関する検討を行い、評価法の提案と耐震改修効果に関わる要求性能の検討を行った。等価1自由度系縮約による最大応答評価法の適用性と有効性を検証し、また耐震改修効果を得るための骨組が具備すべき条件、ならびに課題を明らかにした。さらに、多層骨組における崩壊制御設計の可能性を検討した。以上より、平面異種混合構造の立体応答性状に関わる評価法を提案し、中高層規模の建物の耐震補強効果を解析的に明らかにしたことで、当初の研究計画を達成することができた。なお、耐震改修後の建物の連結接合部の弾塑性応答性状や要求性能を把握することができたため、次年度は実験計画へ反映させる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度、本年度に引き続き、平面異種混合構造として耐震改修効果を得るための連結接合部の工法の提案と、その力学的特性や弾塑性挙動の解明を目的とした実験を行う予定である。そこで、これまでの実験結果を精査し、連結接合部の工法の改善すべき点や課題を整理し、次年度の実験計画へ反映させる。特に、本年度の論文投稿や研究発表を通じて学外から様々な意見をいただき、その中で既存RC造と増築鉄骨造のそれぞれの弾塑性挙動を考慮した場合に発生しうる接合部の軸力を考慮した実験計画を予定している。試験体の基本構成はこれまでと同様であるが、ディテールの修正等を検討し、載荷計画として可搬式ジャッキの本数を増やし、連結接合部に軸力を導入する載荷方法を予定している。合わせて、有限要素法解析を用いて接合部の力学的特性や弾塑性挙動を事前に予測し、試験体製作、計測計画、載荷方法に反映させる予定である。 また立体架構の弾塑性挙動と耐震改修効果に関わる解析的検討について、次年度は中低層RC造建築物に対し、異なる層数のS造骨組を増築する場合(例えば6層の既存RC造建築物に対し4層のS造骨組を増築する場合、あるいは増築S造骨組において最下層に吹抜けを設ける場合、など)を想定した検討を行うことを考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度と本年度の実験結果より明らかとなった連結接合部の工法や、実験方法に関わる諸課題について、その改善を図った接合部試験体を製作し、構造実験を実施する。そのため、試験体製作とそれに関わる諸費用を次年度研究費として計上する予定である。次年度は、試験体の設計ならびに計測計画を検討するにあたり、有限要素法解析を行い、精度の高い実験を実施できるように予備解析も充実させる予定である。そこで、必要に応じてこれらの計算にかかる諸費用を、次年度研究費に計上する予定である。以上の実験関連の費用として、本年度の予算実績から、試験体の製作費のみで次年度の研究費の大半を使用するが、必要経費を計上することとなる。 さらに、本年度の研究成果をPSSC(Pacific Structural Steel Conference)2013にて発表予定であり、その渡航費等を次年度研究費として計上する予定である。
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