2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23560681
|
Research Institution | Tokyo City University |
Principal Investigator |
西村 功 東京都市大学, 工学部, 教授 (60328929)
|
Keywords | 免震構造 |
Research Abstract |
◇平成23年度~平成24年度までの研究概要と今後の予定 本研究課題は、高層建物の第1層のみを免震構造とするのではなく、多層に渡って免震構造部材を配置することにより、長周期で高減衰の振動系を作り、結果として高耐震な建築構造物を比較的低価格で実現することを目標にしている。昨年までの解析研究により、多層に免震構造部材を配置した場合の地震応答解析プログラムを作成し、必要な部材性能について基本的な知見を得た。この結果に基づき、本年度は大学の知的財産権登録を目指し、その後、研究成果を論文にまとめる予定である。 本年度は、解析研究から必要とされる性能を満足すべき、実用的な試験体を製作し性能確認実験を実施する予定である。 ◇具体的内容 高層建築(10階建以上)は、その形状が積層ゴムと同じである。積層ゴムは鋼製の積層板とゴムの薄層が互層構造となって鉛直荷重を支えるとともに水平剛性が低い構造となっている。一方の高層建築も床を支える梁によって硬くて薄い層と柱によって作られた空間という柔らかい層が互層構造を成している。従って、大きな変形が生じた時の座屈性能や変形したときの水平剛性の低下などは、ほぼ同じ力学的な性状を示す。そこで、高層建物の柱に積層ゴムを部分配置することにより剛性を調節すると、大きな変形能力と鉛直荷重支持能力を兼ね備えた「高耐震」構造を実現することができる。この考え方は、従来の構造設計手法とは大きく異なるため(部材の平面保持の仮定が成立しないので曲げモーメント分布の変化の割合がせん断力に等しくない)解析が不可能であった。本研究の最も大きな成果は、この仮定を設定しなくても荷重変形関係を大変形領域で正確に評価できるモデルを解析ソフトに組み込んだ点にある。この数値解析ソフトにより、従来困難であった減衰性能の評価を正確に行えるようになり部分免震支承の配置計画を行えることが可能となった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
◇研究目的 本提案は高層建築の耐震性能を飛躍的に向上させる耐震構造システムに関する研究である。本研究成果が実用化されると、ラーメン構造と比較して応答せん断力は1/4程度、応答変形は1/2に削減される。また、免震構造と比較すれば、免震構造で不可能であった応答変形の削減と応答せん断力の削減を同時に達成することが可能となる。 ◇達成度の評価理由 本提案の研究目標に照らして、現在までのところ解析研究はほぼ順調に進んでおり、部分免震構造を実用化するのに必要な積層ゴム支承の性能を特定するところまで進んでいる。残された課題は、性能を満足する積層ゴム支承を製作し実験によってその性能を確認することである。実用化に至るまでは、開発部材の大臣認定取得、一般的な汎用構造解析ソフトへ部材性能データを入力することなどが残された課題である。以上の研究達成状況と当初の研究目的を照らし合わせて、現状の研究達成状況は概ね予定通りである。
|
Strategy for Future Research Activity |
◇本研究課題提案時点での研究達成度 既に、解析研究はほぼ当初の計画通り進んでおり、部分免震構造用積層ゴム支承に必要な部材性能を検討する段階に進んでいる。当初の目標は、プロトタイプの部分免震構造用積層ゴムを実験によって性能確認し、実用化の一歩手前まで行う予定であった。平成25年度は試験体を計画し、制作メーカと協議を行い実用化を目標とした試験体の制作を行う予定である。 また、平成25年度は最終年度であり、大学を通じた特許出願、研究論文の発表、実用化を目的としたプロトタイプ積層ゴムの形状検討を行う予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究費の残額は¥1,890,000であり、試験体の制作、あるいは実験装置の拡張に当てる計画である。鉛直荷重500トン、曲げ剛性 1KN・cm/rad程度、水平変形性能100mm、程度の性能を想定しており、現有の実験装置を拡幅して500トンの鉛直載荷実験が可能となるように、油圧ジャッキ(200トン)を一台、追加する計画である。必要な概算は\2,000,0000程度と考えている。
|
Research Products
(2 results)