2011 Fiscal Year Research-status Report
フルプレキャスト鉄筋コンクリート造コア壁の構造性能に関する研究
Project/Area Number |
23560683
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Research Institution | Fukui University of Technology |
Principal Investigator |
仲地 唯治 福井工業大学, 工学部, 教授 (90410373)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 鉄筋コンクリート / コア壁 / プレキャスト / 水平つなぎ筋 / コッター / 靭性 |
Research Abstract |
超高層鉄筋コンクリート造建物において、最近、建物の中央部に重要な耐震要素としてコア壁を配した構造が増加しており、今後、本構造建物は、より一層増加していくと考えられる。しかし、現在のところ、コア壁を施工するにあたり、フルプレキャスト化は全く図られていない。本構造の今後の発展の為にはフルプレキャスト化は不可欠であるが、フルプレキャスト化した場合の構造性能は不明であり、構造性能の解明、設計法提案を本研究の目的としている。 本年度は研究の初年度にあたり、2年目以降の水平加力実験のパイロット実験として、概要を把握するためにフルプレキャストコア壁の水平加力実験を実施した。実験としては、RC造コア壁をフルプレキャスト化した場合についての構造性能を検討するため、コア壁の圧縮端部近傍を模擬したフルプレキャスト壁柱1体による水平加力実験を行った。壁柱のプレキャスト化は、壁柱を柱形に分割し、柱部材間の接合面には接合筋を配筋せず、コッターを設けグラウトを充填する方法とした。柱部材間の接合を目的とした配筋として、水平つなぎ筋を2階及び3階床レベルに集中配筋した。 実験の結果、最大耐力、限界部材角他、塑性領域の範囲、鉛直接合部における目開き、ずれ等の挙動、壁脚部におけるプレキャスト柱の挙動等が明らかとなった。フルプレキャストのコア壁については、これまでに構造実験は皆無であり、今回、初めてその基本的構造性能が明らかになったといえる。本研究で用いたフルプレキャスト化の方法により、一体打ちと同程度、もしくはそれ以上の構造性能をもつコア壁の設計、施工の可能性が開けたといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フルプレキャストコア壁の構造性能を解明するために、当初予定では、水平加力実験を試験体数2体で実施する予定であった。また、コア壁のプレキャスト壁板接合部を模擬した部分試験体を用いて接合部実験を実施し、高圧縮応力下における接合部耐力等を把握する予定であった。しかしながら、部分試験体を用いた接合部実験は実施せず、水平加力実験の実施試験体数は1体とした。 部分試験体を用いた接合部実験については、既往の研究において、接合領域全体を圧縮強度程度の高応力とした実験例はなく、本実験により、コア壁の隅角部及び隅角部近傍における鉛直及び水平接合部の力学的性状を把握することができると考えた。しかし、コア壁の隅角部近傍の圧縮性状を再現するには、まず、コア壁全体の挙動の中における隅角部近傍の高圧縮領域の挙動を捉えることが先決と考え、先に水平加力実験を実施することとした。 水平加力実験を実施した結果、部分実験の実験方法として、既往の接合部実験で用いられた方法、たとえば純せん断実験等よりも、水平加力実験により近い方法による部分実験の方が応力状態をより近い形で再現できると考えた。そこで、今年度は水平加力実験の実験結果をもとに新しい部分実験の方法を検討するところまでとし、実験実施は次年度とした。 水平加力実験に関しては、パイロット試験体として、フルプレキャスト試験体1体、一体打ち試験体1体、合計2体を予定していたが、先に、フルプレキャスト試験体による実験を実施し、その実験結果を検討した結果、フルプレキャストコア壁の耐荷機構は一体打ちの場合とかなり異なることが明らかとなった。このため、2体目の実験は一体打ちではなく、耐荷機構をより明確に検討できる試験体とした。そこで、平成23年度は2体目の試験体計画のための検討までとし、一体打ち試験体による実験は次年度に実施するものとした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に実施したフルプレキャスト試験体による実験結果をもとに、当初計画で予定していた部分実験よりも水平加力実験に近い形での部分実験を実施し、接合部に影響を及ぼすパラメーターについて検討する。パラメーターとしては、水平接合筋量、コッター形状、拘束筋量等が考えられる。 部分実験の結果については3次元FEM解析を実施する。3次元FEM解析の実施により、試験体内部の応力状態等、実験では計測できない性状について知見を得ることができる。また、部分実験におけるパラメーターについて、限られた試験体数を補うためのパラメトリックスタディを実施することにより、各パラメーターが接合部の耐力等の構造性能に及ぼす影響について検討することができる。 これら部分実験及び3次元FEM解析による検討結果をもとに、平成24年度におけるフルプレキャストコア壁の水平加力実験の試験体を計画し、実験を実施する。水平加力実験のパラメーターは、部分実験及びFEM解析による検討結果からフルプレキャストコア壁の構造性能に特に大きな影響を及ぼすと考えられるものを選定する。また、当初計画を予定していた一体打ちの試験体も製作し、合計で4体程度の試験体を製作し、実験を実施する。 水平加力実験の実験結果は、部分実験及びそのFEM解析の結果と相互に検討し、フルプレキャストコア壁の耐荷機構及び構造性能解明のための資料とする。また、平成25年度における部分実験及びフルプレキャストコア壁の水平加力実験試験体設計のための検討資料とする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度には、接合部の部分実験とフルプレキャストコア壁の水平加力実験を実施する。実験の試験体製作にあたり、材料となるセメント、砂、砂利、混和剤、高強度鉄筋、普通強度鉄筋、型枠作製のための合板、フォームタイ、スペーサー、試験体吊り上げ用インサート、ひずみ計測のためのひずみゲージ等が必要となる。これらの費用を勘案したうえで、接合部の部分実験は試験体数を約10体とし、1体あたり2万円で合計20万円を予定している。また、水平加力実験の試験体数は4体程度とし、1体あたり10万円で合計40万円を予定している。部分実験については、新たに加力装置(ジャッキ、PC鋼棒、ナット、座金、取付用金具等)を製作するため、35万円を計上する。 平成23年度に実施したフルプレキャストコア壁の水平加力実験を平成24年9月にポルトガルのリスボンで開催される第15回世界地震工学会議で発表予定であるので(論文投稿中)、国外旅費として45万円を計上する。試験体費用、加力装置製作費用、海外旅費を合わせて140万円の使用を計画している。 平成25年度では、平成24年度で実施した実験から得られた知見をもとに、さらに部分実験及び水平加力実験を実施する。部分実験試験体10体で20万円、水平加力実験試験体4体で40万円、学会発表(建築学会支部大会及び全国大会、コンクリート工学会講演会)のための国内旅費として20万円、合計80万円を予定している。
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Research Products
(1 results)