2012 Fiscal Year Research-status Report
伝統大工技術により補修された木造軸組架構の性能評価実験
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23560685
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Research Institution | Tottori University of Environmental Studies |
Principal Investigator |
中治 弘行 鳥取環境大学, 環境学部, 准教授 (80314095)
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Keywords | 伝統的構法 / 大工技術 / 補修 / 構造性能回復 |
Research Abstract |
平成23年度に実施した差し鴨居を抵抗要素に持つ柱間隔1820mmの木造軸組架構の性能評価実験に引き続き、柱継ぎ手の抵抗方向を90度回転させたものについて、同様の木造軸組架構の性能評価実験を行った。すなわち、平成23年度の実験では継ぎ手の曲げ抵抗が大きい、いわゆる強軸方向であり、平成24年度の実験では弱軸方向での実験である。比較条件をできるだけ同じにするため、試験体の製作を平成23年度と同じ大工に依頼した。補修された木造軸組を想定して金輪継ぎおよび尻ばさみ継ぎで柱根継ぎしたものを各1体、計2体について実験を行った。根継ぎ位置は、土台より500mm上方が継ぎ手の中間部となるようにした。また、継手長さを300mmとした。差し鴨居と柱の仕口は雇いほぞに鼻栓とした。同じ変形を2度経験するように見かけの変形角が1/480~1/7radまで徐々に増加させる変形制御の正負繰り返し面内せん断加力を行い、荷重と変形の関係ならびに継ぎ手仕口での変位・ひずみを計測した。鋼製おもりにより約19kNの鉛直荷重を作用させた。おもりによるPΔ効果を除去した荷重変形関係を比較すると、最大耐力は、金輪継ぎを弱軸方向に用いた試験体が2.97kN (強軸方向では3.91kN)、尻ばさみ継ぎを用いた試験体が3.02kN (強軸方向では4.38kN)であった。平成23年度の実験と同様に継ぎ手箇所での柱に生じる曲げモーメントは大きくなく、軸組全体として1/7radの変形に至っても、継ぎ手そのものにはほとんど損傷が見られない。したがって、大工が経験に基づいて適切であると判断して用いられている柱継ぎ手位置が妥当であると言える。一方、軸組としての水平抵抗力は柱継ぎ手の方向により左右されることが明らかになった。これらの実験結果をまとめ、平成25年度日本建築学会中国支部研究発表会で報告予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の実験結果をふまえ、平成24年度には継ぎ手の抵抗方向が異なる場合についての実験を行い、継ぎ手の使用方向により木造軸組全体の水平抵抗性能にも影響があることが明らかとなった。平成24年度に行う予定であった補修土壁に関する実験が時間の関係で実施にいたっていないため、平成25年度中に実験実施できるよう、実験計画の変更を検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度には、未実施となっている補修土壁の実大実験について、土壁の補修方法に関する聞き取り調査を行い、夏休み前に試験体作製、秋以降に補修による構造性能回復に関する検証実験を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
未実施の実験遂行のための試験体作製費と必要な消耗品を合わせて50万円、実験補助に対する謝金20万円、研究発表等のための国内旅費10万円のほか、計測等に用いる計測機器やソフトウェア等のメンテナンスにかかる費用30万円程度と計画している。
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Research Products
(2 results)