2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23560688
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Research Institution | Nagasaki Institute of Applied Science |
Principal Investigator |
安井 信行 長崎総合科学大学, その他部局等, 教授 (20310021)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 角形鋼管柱 / 局部座屈 / 累積塑性回転角 / 幅厚比 |
Research Abstract |
本研究は平成23年度から25年度までの予定で,鋼構造骨組の柱に大地震を想定した0.03rad程度の一定振幅の部材回転角を繰返し作用させた場合の挙動を把握し,幅厚比と累積塑性回転角の関係を明示するとともに,設計に適用可能な式を提示することを目的としている. 平成23年度は,幅150mmで板厚が9.0,6.0,4.5mmの3種類の角形鋼管柱(幅厚比はそれぞれ16.7,33.3,25.0)の単調載荷実験と繰返し載荷実験を合計18体実施した.なお,軸力比は現実的な軸力を想定して0.1,0.2,0.3とし,細長比は30とした.繰返し載荷の実験結果から,材端モーメントが全塑性モーメントに低下するまでの累積塑性回転角と幅厚比の関係が得られ,軸力比と幅厚比が大きいほど累積塑性回転角は小さくなる結果を得ている.ただし,平成23年度だけの実験では結果が少ないため,平成24年度以降の実験でデータを充実させる. 実験と平行して有限要素解析を行っており,平成23年度は100ケース以上の解析を実施し,実験結果を精度よく表現可能な解析条件を模索した.その結果,解析モデルの要素の種類は8節点厚肉シェル要素を用い,要素分割数や軸方向長さや歪硬化の勾配等,幅厚比や軸力比によらず統一して用いることのできる解析条件を決定し,有限要素解析の結果が単調載荷の実験結果を良好な精度で表現可能であることを明らかにした.一方,繰返し載荷に対する有限要素解析は,軸力比が0.3で耐力劣化が大きい場合には,解析結果は実験結果野耐力劣化挙動を概ね表現可能であるが,軸力比や幅厚比が小さく,徐々に耐力劣化する実験結果を解析で十分表現するには至っていない.この原因はバウシンガー効果によるもので,材料の履歴則を焦点とした解析の更なる検討が平成24年度以降の課題である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度に予定していた角形鋼管柱の実験では,当初は軸力比を0.1,0.3,0.5としていたが,現実的な値として0.1,0.2,0.3と変更して実験を行った.実験した試験体数は18体であり,当初の予定通りである. 平成23年度に予定していた有限要素解析は,実験結果を精度よく表現可能な解析条件を決定することである.単調載荷に対する解析結果や,耐力劣化の大きい繰返し試験体に対する解析結果は実験結果と良好に対応したため,概ね順調に進んでいるといえる.耐力劣化が緩やかとなる試験体に対する解析結果は,実験結果を十分表現できないことも明らかとなったが,解析が実験結果を表現できない可能性も想定していた範囲内であり,平成24年度以降の実験に用いる試験体と,今後の解析的検討の方向性を考える上での貴重な成果である.
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の研究から,一定振幅の繰返し曲げを受ける角形鋼管柱に対する有限要素解析は,必ずしも実験結果を良好に表現し得ない可能性が見られた.そのため平成24年度には,実験データだけで幅厚比と累積塑性回転角の関係を求めることができるように,当初の計画よりも多くの実験を実施して多くの実験データを集め,データの信頼性を高める.実験では,軸力比0.3で繰返し振幅が±0.03radの場合に絞り,当初の目的よりも幅厚比のパラメータを3種類程度増やす対応をとる.平成24年度に製作する試験体を含めると幅厚比の種類は合計10 種類となる. 一方,有限要素解析による研究では,材料の繰返し履歴則に焦点を当て,集中的に履歴則をパラメータとした解析的検討を実施することにより,実験を良好に表現可能な解析条件を調べる研究も継続する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度の次年度使用額(1145円)と平成24年度の研究費は,大半を角形鋼管柱の繰返し曲げ実験に用いる試験体の製作費に使用する.平成23年度の結果から,試験体の幅厚比パラメータを増やす必要が生じたため,試験体を再検討し,必要なパラメータの試験体が研究費の予算内で確保できる試験体の数を決定する.具体的には,平成23年度に製作した角形鋼管柱(幅150mmで厚さ9.0,6.0,4.5mm)に加えて,平成24年度には幅125mmで厚さ6.0,4.5,3.2mm,幅100mmで厚さ3.2,2.3mm,幅175mmで厚さ9.0,5.0mmの7種類の角形鋼管柱試験体を製作する計画としている. また,平成23年度と平成24年度の研究成果をまとめて学会発表するため,一部を旅費に使用する.
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