2013 Fiscal Year Annual Research Report
古墳壁画の保存・公開における環境制御手法に関する研究
Project/Area Number |
23560694
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小椋 大輔 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60283868)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鉾井 修一 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80111938)
安福 勝 近畿大学, 建築学部, 講師 (20581739)
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Keywords | 古墳壁画 / 保存 / 公開 / 劣化 / 結露 / 温湿度 / 見え方 / 塩 |
Research Abstract |
熊本市の国史跡・釜尾古墳では、装飾が冬期に乾燥し、夏期に濡れることで見え方が変化するとの報告があるが、そのメカニズムについては十分に分かっていない。本研究では、これらのメカニズムを明らかにし、保存を前提として装飾古墳の公開時の見え方と見学者の健康を考慮した、適切な公開方法を提案することを最終的な目的としている。最終年度では、以下の結果を得た。 1.装飾のある玄室での結露発生の主要因を明らかにすることを目的として、実測値から入口扉の隙間からの水分移動量や、石室内での水分発生量を算出し、検討を行った結果、夏期に結露が発生しやすく、冬期に乾燥する傾向にあること、夏期の結露発生の主要因は入口周辺の室内表面での蒸発であり,冬期の乾燥の主要因は入口扉での結露凝縮であることを明らかにした。夏期の結露発生抑制対策として、扉の日射遮蔽や断熱、扉の気密化といったことを明らかにした。 2.水膜を介した石材と顔料の間での多重反射を考慮した石材を背景とした顔料の予測モデルを用いて、弁柄の濡れ状態に対して分光反射率の再現ができ、濡れによる彩度の変化は多重反射の増減により説明可能であることを明らかにした。また、釜尾古墳装飾の顔料に対して、同モデルを適用した結果、背景の石材による多重反射が影響して、濡れによる彩度が低下した可能性が高いことを示した。 3.劣化現象の一つである塩析出に関係する塩を含んだ材料の平衡含水率の測定を行った。塩が含まれる材料の平衡含水率は塩溶液の濃度のみならず塩の結晶化の度合いに応じて、純水を含む材料の含水率と大きく異なる事が確認された。塩の結晶化の程度を考慮して平衡含水率を近似するモデルを提案し、これにより塩が結晶化する場合の実験結果をよく再現できた。
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