2012 Fiscal Year Research-status Report
交差遅れ効果モデルによる住宅・地域環境の健康形成要因構造の解明
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23560699
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
白石 靖幸 北九州市立大学, 国際環境工学部, 教授 (50302633)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊香賀 俊治 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (30302631)
星 旦二 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 教授 (00190190)
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Keywords | アンケート調査 / 共分散構造分析 / 時間的先行性 / 交差遅れ効果モデル / 同時効果モデル |
Research Abstract |
先行調査として、2009年に北九州市八枝地区などを対象としたアンケート調査を実施し、健康形成要因構造モデルの構築によって、住宅・地域環境が階層的に住民の健康状態に寄与することが確認された。これを踏まえ、昨年度は2回目の追跡調査、今年度は更に3回目の追跡調査を行った。今回の調査では、3年間にわたる縦断データによって、良好な住環境に属する群と対照群の健康状態の推移について比較・検証すると共に、因果モデルである交差遅れ効果モデルと同時効果モデルを構築し、住宅・地域環境が居住者の健康状態に及ぼす因果効果について考察を行った。以下に主な成果を示す。 2012年度の調査における回答者は、60歳以上の高齢者が76.1%を占め、また男女比は11:9、回答者の居住地域割合は、泉ヶ浦在住が約半数であった。 CASBEE健康チェックリストのスコアと疾病有無の関係を分析したところ、1時点のみならず経年変化を考慮しても住宅の性能が疾病の有無に影響している可能性が示唆された。 交差遅れ効果モデル及び同時効果モデル構築のため、住宅・地域環境側の因子として、先行研究と同様に室内住環境、施設整備環境、社会支援環境、屋外住環境、街区整備環境の5因子が抽出された。また健康側の因子についても、健康3要素に係る精神的健康、身体的健康、社会的健康の3因子が抽出された。これら計8つ因子を用いて、各ペア(28組)の因果関係について検証を行った。それぞれのペアにおいては、2009年から2012年の経年変化に加えて、補足的に2009年から2011年、2011年から2012年の推移についても分析を行なった。有意な関係性の示された2組の因果関係として、特に交差遅れ効果モデルにより、『街区整備環境(2009年)』が後年の『精神的健康』に影響を及ぼすことが示唆された。同様に住環境から健康への因果効果が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度、物理環境調査の一環として予定していた住宅・地域環境の長期実測調査に関しては、居住者の承諾が得られなかったため、今年度も引き続き実施に至っていない。代わりに今年度も2011年度の追跡調査と同様のアンケート調査を実施した。よって、今年度は、「研究実績の概要」にて示した通り、2009年、2011年に加え、2012年のデータを用いた健康形成要因構造の解明の項目(交差遅れ効果モデルによる影響評価や各種健康症状における健康形成要因構造の解明)を行った。 上記の理由により、現在までの達成度は、おおむね順調に進展しているとの評価に至った。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画書に示した通り、健康形成要因構造の解明を引き続き行う。特に、今年度の調査・分析より健康影響が確認できた交差遅れ効果モデルにおいて、背景因子を用いた階層的な分析により交絡要因の影響とバイアスを除外し、同モデルの信頼性を高める。また、多母集団同時分析を実施し、属性別(年齢、性別、住まい等)の効果量の異質性について検証する。 一方、住宅・地域環境における健康形成要因構造は、各健康症状によってその規定要因・構造が異なることが予想される。従って、各疾病・疾患における健康形成要因構造に関する分析も実施し、住宅・地域環境における詳細な規定要因の解明を試みる。更に、これらの形成構造は、ライフステージや性別によって異なる可能性があるため、同時分析を実施することにより属性間の差異に関する検証を行う。 上記分析は、基本的に統計分析を専門とする白石が担当し、医学的知見から星、住宅・地域環境の性能評価の観点から伊香賀がそれぞれ助言、サポートを行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2013年度は、得られた3年分のデータを用いた統計分析の実施及び研究の最終的な取りまとめを行うため、主に謝金(50万円)が必要となる。その他、学会発表や研究打ち合わせの為の旅費として40万円(打ち合わせ2回、国内発表2回)を支出予定である。
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Research Products
(1 results)