2011 Fiscal Year Research-status Report
浮遊微生物の濃度と菌叢解析による室内環境リスク評価の試み
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23560708
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
石松 維世 産業医科大学, 産業保健学部, 講師 (40289591)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 浮遊微生物 / 濃度測定 / 細菌同定 / 細菌叢解析 |
Research Abstract |
平成23年度は、予定していた築年数が異なる建物内にあって空調系統や使用頻度も異なる室内3箇所および屋外において、予定していた2か月に1回ではなく月1回のサンプリングを行い、ろ過捕集法による菌数濃度と衝突法による生菌数濃度とを求め比較した。同時に、細菌叢解析に必要な細菌数を捕集するための捕集用フィルターと吸引流量、捕集時間の検討を行った。その結果、毎月のサンプリングでは、使用頻度の高い実験室において衝突法による生菌数濃度が高い傾向が認められ、屋外濃度との比であるI/O(Inside/Outside)比も1を超えることが多かった。したがって、実験室では在室者により常時新鮮な細菌が供給されていることが認められた。浮遊微生物の菌数濃度と生菌数濃度との比較では、培養できない微生物も検出できる菌数濃度の方が、生菌数濃度より2桁ほど高かった。日本建築学会による浮遊微生物濃度規準『AIJES-A002-2005』と比較すると、細菌では規準値をほぼ満足していたが、真菌では実験室で規準値を超えることがあった。しかし、I/O比は1を下回っていたことから、室内に発生源はないと考えられ、実験室以外から真菌が流入していることが示唆された。また、細菌叢解析のための捕集条件は、浮遊細菌濃度が3×102 cells/m3以上あれば、孔径0.8 mのメンブランフィルターを用い流量20 L/minで72時間捕集すると、4枚のフィルターが必要となった。これにより、細菌数濃度測定で室内の濃度が得られれば、それに応じた捕集時間や必要フィルター枚数を求めることができるようになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた4箇所の浮遊微生物濃度測定については、予定通り進行しており、必要な浮遊微生物濃度データは得られている。その成果は、平成24年度の日本産業衛生学会と日本建築学会において発表する予定である。また、衝突法によって得られた各測定場所の細菌コロニーは、釣菌後に分離培養を行って保存菌株を調整し、冷凍保存している。当初の計画では、衝突法で得られた細菌コロニーの同定を行うように申請してなかったが、コロニーとして得られた細菌をも、細菌の簡易同定キットであるapiシリーズ(シスメックス・ビオメリュー)を用いて、細菌種の同定を始めたところである。一方、菌叢解析に必要な細菌数を確保するための捕集条件の設定が遅れたため、初年度に予定していた細菌叢の解析は実施できなかった。しかし、捕集に適したフィルターの選定および使用するポンプの耐久性と捕集時間との関係も確認され、最終的な捕集条件が決定できた。これにより、今年度は季節ごとに細菌叢解析用の捕集を行い、順次網羅的細菌叢解析を行う準備が整った。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度と同様に、平成24年度以降も月1回の浮遊微生物濃度の測定を継続し、浮遊微生物の菌数濃度(cells/m3)と生菌数濃度(CFU/m3)の場所別変動および季節変動を解析していく。また、衝突法によって得られた細菌コロニーについて、分離培養と菌株の凍結保存を行い、順次細菌の簡易同定キットであるapiを使用して同定を継続する予定である。また、平成23年度実験によって細菌叢解析のための細菌捕集条件が整ったので、今年度は通常の浮遊微生物濃度測定と併行して細菌叢解析のための捕集を順次行っていく。捕集した浮遊細菌については、申請時の予定を変更して本大学の事業組合SMART LLPに依頼し、網羅的細菌叢の解析を行う予定である。しかし、1検体あたりの解析料が13万円であることから、予定していた予算では不足するため、2か月ごとではなく季節ごとの試料を解析するように予定を変更し、少ないサンプリング回数で最大の成果が得られるように当初の予定を変更する。これらの試料捕集や細菌のapiによる同定を実施するために、実験補助のアルバイトを1名雇い、継続的に研究を実施していく予定である。また、これまでの研究成果の一部は、今年度の日本産業衛生学会や日本建築学会での発表を予定しており、今年度以降についても成果が得られ次第、各分野での学会発表を行っていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度に交付される予定金額は、平成23年度の繰越金を含めた約180万円である。研究申請時には、細菌叢解析は自分で行う予定であったが、本学の事業組合であるSMART LLPに解析を依頼するよう変更した。また解析料は1試料13万円であるため、当初計画していた試料数を解析すると研究費が不足することが判明した。そのために、解析用試料の採取を2か月ごとから季節ごとへと変更し、試料数を少なくして最大の結果が得られるように予定を変更した。したがって、平成24年度は、細菌叢解析依頼費用として、その他費を120万円使用する予定である。また、浮遊微生物濃度算出のための捕集と細菌叢解析のための捕集を実施する必要があるため、実験補助のアルバイトを4時間勤務で週3日雇いあげる予定である。そのため、約6カ月分の謝金として30万円を見積もっている。また、当初の計画には入ってなかったが、よりよい結果を得るために、衝突法で検出された細菌コロニーについて、細菌同定キットapiを使用して同定を行っていく。このキットの購入を中心に物品費として20万円、研究成果発表のための旅費に10万円の使用を予定している。
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Research Products
(1 results)