2011 Fiscal Year Research-status Report
社会変動に対応した公共ホールの利用圏域モデルと運営コストに基づく再編的地域計画
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23560711
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Research Institution | Sendai National College of Technology |
Principal Investigator |
坂口 大洋 仙台高等専門学校, 専攻科, 准教授 (70282118)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浦部 智義 日本大学, 工学部, 准教授 (10409039)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 公共文化施設 / 利用圏域 / GIS / ハフモデル / 段階的マスタープラン |
Research Abstract |
本年度は、研究初年度の段階として利用圏域研究の整理分析と問題意識の明確化を行った。具体的には、人口減少など縮退状況における、都市及び居住エリアの収縮の問題を中心に、ストック型社会への移行を想定した、利用圏域モデルと広域行政圏における公共文化施設の再編的地域計画の重要性を確認した。次に愛知県、宮城県における現状の施設配置を前提としたハフモデルの有効性と、利用圏域の重層性について検証した。関連してハフモデルを実施する上での魅力係数、及び実際の観客の利用者行動に即した、係数の設定方法も含めての検討を行った。その結果、宮城県では山形県境などにおいて、15km圏内のアクセス不可能な地域が広範囲にあること。また仙台市中心部及び仙台圏の郊外都市において、利用圏域の重層性がみられた。 次に各施設の開館年度の将来的な2030年度の人口状況を加味して、宮城県全体における場合の将来的な利用圏域の変動と吸引人口数の計算を行った。特に幾つかのエリアにおいては、人口減少、少子高齢化に加え施設の老朽化、自治体の財政状況における緊縮などの要素が加わり、施設運営が非常に難しくなる施設やエリアの存在が確認された。また、研究分担者の浦部とともに、吸引率の計算結果を基に考察を行い、老朽化が進展する施設について段階的な更新また研究課題を明確化した。その上で、公共文化施設の立地状況及び現状の施設運営上の課題について、有識者に対してヒアリング調査を企画・実施した。 更に2011年3月11日以降の東日本大震災における東北地方を中心とした、公共文化施設の被害調査を継続して行っている。特に津波による浸水被害だけではなく、地震被害による客席天井の被害、設備の損傷、避難所の有無、も含めた施設被害のデータベースを作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
公共文化施設における施設運営上の課題の明確化と、懸案となっていたハフモデルの係数検討に一定の目処が立った。特に施設運営状況の評価指標に、地域内利用率を設定し運営状況を整理したことで、単なる稼働率の高い低いではなく、地域と施設の関係を表したことで状況と課題が明確になった。また時系列上の施設の老朽化の推移に着目することで、2030年時点での更新ではなく、段階的なマスタープランの作成と更新モデルの重要性を確認した。 またGIS上の施設データベースの作成も、概ね順調に作業が進展した。微修正は要しながらも東北地方の公共文化施設のプロット作業については、整理を終えた。また簡易的なハフモデルをベースとしたシミュレーションデータを用いた施設運営者とのディスカッションについても全般的には前向きな評価が多く、シミュレーションの考え方や内容の妥当性と、実際の施設運営の様々な意思決定における有効なツールであることを確認した。 更には、東日本大震災における施設被害とそれらの復旧過程に関して、施設被害状況のデータベースと復旧プロセスにも研究分担者の浦部と連携することで、地域状況の変化に伴う将来的な施設更新の在り方を東北地方をベースに把握した。また、事例的ではあるが、幾つかの被災施設の復旧方法等について、助言を行ったり、美術館・博物館を含む被害状況のデータベースの構築を試験的に行う等、東北地方全体における公共文化施設全体の活動持続性について、調査研究を進展させた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方法については以下のように考えている。第一には、シミュレーションの精度の向上である。具体的には、ヒアリング調査等を踏まえ実際の運営状況に即したハフモデルの係数の検討を行う。また将来的な人口変動に対して、メッシュデータの精度を整理し、シミュレーション全体の精度を向上させる。2030年を一つのベンチマークとして県レベルにおける広域的な自治体毎の人口推移を計算する。第二は、将来的な社会状況の想定とそれに向けたシナリオの作成である。まず公共文化施設の耐用年数及び機能更新を時系列上に整理する。既往研究におけるデータや、幾つかの施設における改修工事や耐用年数の考え方をヒアリングし基礎データを作成する。第三に、これらの広域のシミュレーションの結果と個別の施設への影響を具体的な施設を想定して、2030年までの段階的なマスタープランの作成の検討を行う。検討方法としては、他館の基礎データベースや対象施設と開館から現代までの利用状況と改修状況を調査し、耐用年数までのマスタープランのモデルを作成する。最終的には、幾つかのストーリーを作成し、これらを統合したモデルとシミュレーションの結果から、東北地方を対象とした公共文化施設のサステナビリティーの指針を得る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度に使用する予定の助成金(繰越金)については、公共文化施設の課題把握のために、昨年度より行っている施設へのヒアリング調査のための旅費及び調査協力者への謝金などに使用予定である。備品費は、施設のシミュレーションを実施するためのPC及び解析のためのアプリケーションの購入。旅費は、準備段階、実施段階、各種発表関係の3つの段階で使用します。準備段階は、有識者からのアドバイス、資料収集、研究計画の打ち合わせ、研究計画打診のための打ち合わせ旅費。実施段階は、各種施設に対するヒアリング、専門組織に対するシミュレーション支援のための旅費。各種発表関係は、日本建築学会及び文化経済学会等における発表旅費などを想定する。消耗品については、研究推進のための関連文献、基礎データなどの購入。用紙他研究遂行のために、必要な消耗品を適宜購入。またその他としては、各種学会の投稿料、印刷代等を含みます。
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Research Products
(2 results)