2011 Fiscal Year Research-status Report
城下町高田・港町直江津・在郷町稲田の比較をとおしてみた雁木町家の居住特性
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23560720
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
黒野 弘靖 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (80221951)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 住宅論 / 町家 / 雁木 / 水路 / ミチ |
Research Abstract |
現在も維持されている日本の伝統的な街路空間〈雁木〉の景観について、それが支えられてきた空間的しくみを明らかにすることを目的とする。居住特性とは、住居と共用空間とのシステム化された対応関係をさす。これには当初の設定や居住者による働きかけも含まれるものとする。同じ上越市にある高田・直江津・稲田の雁木空間の相違を、町家と共用空間との間で利用と所有の関係が調整された結果もたらされたものと捉え、その相補的な関係を変容過程から分析し、伝統的な景観が現在まで保持されてきた住み手の側の根拠を把握する。 この目的を達成するため、平成23年度には、城下町高田のうち南北方向に雁木通が延びる北本町通と南本町通を対象として、(1)雁木通をはさんで向かい合う4軒の並び(合計8軒)についての平面図・配置図・敷地断面図の実測、(2)共用空間と住居の相補関係の変容過程の把握という2段階の調査をおこなった。 敷地の奥行きには25間から40間と差があるものの、敷地裏側の境界は水路により規定されている。また、道路から奥行き21間までに建物が建っていること、その建物は分棟型で雁木1間、主屋(ホンヤ)9間、ロウカ6間、付属屋5間と道路からの位置が揃っていることを把握した。雁木町家にはトオリニワがあり、主屋(ホンヤ)からロウカを経て、付属屋のアマヤを通り、敷地裏に出ることができた。裏側の水路沿いには洗い場があった。雁木町家は軒を接して建つため、トオリニワによって表側から裏側に行き来することができた。冬期には屋根雪を裏庭に下ろし、春に融けるまで待った。雪処理のため隣家との境界に塀はつくられない。夏季には裏庭に蔬菜や草花が育てられる。裏庭や洗い場付近で行き来し、花や野菜を届けている。このように開放的な裏庭が水路により束ねられ、雁木町家の居住者をつなぐ契機となっていると把握できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の目的には、同じ上越市にある高田・直江津・稲田の雁木空間の相違を分析するとした。平成23年度は、三カ年の初年度に当たり、高田の雁木空間について実測調査をおこなう予定を立てていた。その予定は達成している。詳細な予定として、北本町通としていた調査対象地を、南本町通にも拡大することができた。当初計画では、相隣関係にもとづく配置構成の規則性として、中庭の向かい合わせによる除雪の円滑化やチャノマ上部の天窓向きの統一による採光と通風の確保を予想していた。実測調査と聞き取りの結果、敷地奥行きの相当な相違にもかかわらず、敷地裏に水路を通し、そこに洗い場を設けており、その洗い場を含む裏庭が隣戸とのつながりをもたらす場となっていることを把握できた。また、主屋・ロウカ・付属屋は隣戸側に窓をもたない一方で、雁木、ミセ、チャノマ、ザシキ、中庭と間口一杯に開放的につくられており、主屋のもっとも奥側(ザシキ)にある常居から、雁木通りの来訪者を確認することができる住まい方も把握できた。このような成果を得たことから、「おおむね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度と平成25年度は、同じ上越市にある在郷町稲田と港町直江津の雁木空間について、実測調査を進める予定としている。在郷町稲田は、用水路が南北に流れ、その両側に道路がとおり、雁木町家が並ぶという特徴的な構成をしている。城下町高田の雁木通りとは異なる景観上の特徴が相隣関係にもとづく配置構成の規則性とどのように関連しているかを把握する。連携研究者との研究報告会については、平成23年度に実施できなかったため、平成24年度に計画している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
用水路の両側に雁木通りが通る在郷町稲田の2地区(稲田1丁目と3丁目)について、連続する屋敷の実測を行う((1)段階の調査)。さらに、近代を通じての居住特性の変容過程を把握する((2)段階の調査)。具体的には、明治25年の地籍図、昭和30年の土地更正図により、共用空間ならびに屋敷を含めた所有と利用の状況を把握する。とくに稲田では耕地を所有する雁木町家が多く見られるので、耕地の所有と水系についても変容過程を把握する。これにより明治30年代と昭和30年代における居住空間を復原的に図化し、現況図と聞き取りを併せて、近代以降の居住特性の変容過程を明らかにする。実測と資料整理(図面の電子データ化)については、大学院生6名による6日間の補助を得て進める。
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Research Products
(2 results)