2013 Fiscal Year Annual Research Report
城下町高田・港町直江津・在郷町稲田の比較をとおしてみた雁木町家の居住特性
Project/Area Number |
23560720
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
黒野 弘靖 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (80221951)
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Keywords | 住宅論 / 雁木 / 高田 / 直江津 / 稲田 |
Research Abstract |
現在も維持されている日本の伝統的な街路空間〈雁木〉の景観について、それが支えられてきた空間的しくみを明らかにすることを目的とした。上越市にある城下町〈高田〉・港町〈直江津〉・在郷町〈稲田〉の雁木通りの景観的相違を、共用空間と町家との間で利用と所有の関係が調整された結果と捉え、変容過程からその相補的な関係を分析し、伝統的な景観が保持されてきた住み手の側の根拠を把握した。 平成25年度には、近世前期に町立てされた在郷町〈稲田〉1丁目を対象として雁木町家の実測調査を行った。〈稲田〉は南北に流れる用水の両側に道路がとおり、雁木町家が並ぶ。向かい合う8軒の配置図を実測し、近代の変容過程を把握した。〈稲田〉では1970年代まで農業兼業の雁木町家が26軒あった。このうち2軒について平面図を実測した。2軒ともに所有耕地は屋敷の裏側と用水の反対側の両方に分布していた。敷地の間口は6m、奥行きは50mに揃い、敷地裏にミチと水路が通る。各戸は1960年頃まで付属屋を持たず、刈り取った稲を用水沿いに植えた樹木に干し、雁木町家のミセで脱穀していた。トオリニワと雁木を持つ平面構成は農業を続ける間は継承されていた。作場道が用水を横切る所には洗い場があり、農作業の帰りや野菜洗いや洗濯に共用された。用水沿い樹木には馬をつないだり物干し竿を渡したりした。〈稲田〉の街路景観は農業と水利用に対応していた。 平成23年度に実測した〈高田〉と平成24年度に実測した〈直江津〉と居住特性を比較した。〈高田〉の商業、〈直江津〉の海運、〈稲田〉の農業と街ごとに産業があった。敷地形状と屋敷構えはそれに対応している。水系の敷地に対する位置は、共用装置の配置を規定し、居住特性の根拠となっていた。これにより街ごとに固有の雁木通りの景観が成立していると把握できた。
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