2011 Fiscal Year Research-status Report
歴史的家屋の継承促進のための空き家バンクシステムの実態と課題に関する研究
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23560721
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
小林 史彦 金沢大学, 環境デザイン学系, 講師 (70293371)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 空き家バンク / 歴史的家屋 |
Research Abstract |
WEB検索により、東日本大震災による被害の大きかった茨城県、宮城県、福島県、岩手県を除く全国の市区町村およびその他の各種主体により運営されている空き家バンクの悉皆的把握を行った結果、454の空き家バンクが把握できた。 それらの空き家バンクの運営主体に対して、空き家バンクの運営目的、運営主体の組織構成、事業内容、実績等を問う郵送アンケート調査を実施し、317主体から回答を得た。それらの内、空き家バンクに該当すると思われる296の空き家バンクを対象として分析を行った。得られた主な知見は以下のとおりである。 運営主体は、行政のみが93%を占め、行政以外の主体が運営に関与しているものは7%と少ない。空き家バンクの取り扱い対象は、本研究の主たる関心の対象である歴史的家屋を主対象とするものは8%と少ないが、これらも含めて歴史的家屋の取り扱い実績のあるものは83%と多く、また歴史的家屋を主対象としていない空き家バンクにおいても歴史的家屋への入居希望者が一定割合存在する。 空き家バンクを構成する物件収集、入居者と物件のマッチング、入居後の支援の3つのサブシステムそれぞれについて、取り組み内容の類型化を行い、それらの組み合わせにより空き家バンクの類型的把握を行った。3つのサブシステムにおける取組が偏りなくバランスが取れているものは8%と少なく、いずれか1つのサブシステムに偏っているものが44%、いずれのサブシステムも充実していないものが24%と多いことが明らかになった。特に運営主体が行政のみのものにおいてその傾向が強く、行政と行政以外の主体が運営するものにおいてはシステム構成のバランスが取れているものが多いことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年度は、空き家バンクの悉皆的把握とその目的およびシステム構成に着目した類型的把握を行うこと、それらに基づき現地予備調査を実施し、詳細事例調査対象を選定することが目的であった。 空き家バンクの悉皆的把握は概ね完了しているが、その過程で都道府県が市町村や各種主体による空き家バンクの運営を支援している事例が見受けられたため、都道府県を対象とした調査の実施が今後必要である。 システム構成に着目した空き家バンクの類型的把握についてもほぼ完了しているが、上述した都道府県の関与実態を踏まえて、再類型化を行う必要がある。 詳細事例調査対象の選定については、歴史的家屋を対象とする空き家バンクの先進地域と考えられる西日本の事例を中心とした現地予備調査を実施し、運営主体および入居者へのヒヤリングを行ったが、空き家バンクのシステム構成の類型的把握を行うための分析期間を十分に確保したため、予定よりもやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
まず都道府県を対象としてアンケート調査を実施し、都道府県による空き家バンク運営および支援の実態把握を行う。その結果を平成23年度に実施した市区町村および各種主体による空き家バンク調査結果と併せ、空き家バンクのシステム構成の再類型を行う。 次に、再類型結果を踏まえて詳細事例調査対象候補とする空き家バンクを選定し、それらを対象とする現地調査(関連主体のヒヤリングなど)を実施し、最終的な詳細事例調査対象とする空き家バンクを選定する。 選定した空き家バンクを対象として、運営主体や関連主体(不動産業者、地域組織等)へのヒヤリング調査、空き家バンクを通じた入居者へのヒヤリング調査を実施し、それぞれの主体からみた空き家バンクの評価と課題を明らかにする。 なお、当初は平成24年度に実施を予定していた詳細事例調査対象エリアにおける空き家所有者調査は、平成23年度に実施した予備調査からも、運営主体や関連主体へのヒヤリング調査により当該事例の実態と課題を把握してからの方が効果的であると考えられたため、同調査後に実施するものとする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度に実施した全国的な空き家バンクの悉皆的把握は、当初は郵送調査による予定であったが、事業の性格上ウェブ上に情報が掲載されているケースがほとんどであると判断し、WEB調査に切り替えた。そのため、調査費用が当初予定より縮小された。 また、アンケート調査結果の分析期間を十分に確保したため、詳細事例対象選定のための現地予備調査の実施回数が当初予定より減少したため、旅費が当初予定より縮小された。 それらについては、平成23年度に実施を予定していた詳細事例対象選定のための現地予備調査費用として使用するほか、追加実施することとした都道府県の現地予備調査費用等として、使用する予定である。
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