2011 Fiscal Year Research-status Report
歴史博物館の建築展示を活用した体験型住教育プログラムの構築
Project/Area Number |
23560725
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
碓田 智子 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (70273000)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷 直樹 大阪市立大学, 生活科学研究科, 教授 (40159025)
増田 亜樹 大阪人間科学大学, 人間科学部, 助教 (50441126)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 住教育 / 歴史博物館 / 建築展示 / 情景再現展示 |
Research Abstract |
歴史博物館の建築展示を活用した住教育プログラム構築のための応用事例として、野外博物館と情景再現展示を持つ歴史博物館を調査対象に、(1)展示の建築的特色、(2)展示の活用方法、(3)建築展示を使った学習プログラムと学習教材について検討を進めた。なお、情景再現展示とは、民家や町並みの一部を実物大で復元し、その中に生活用具や人形等を配して、当時の住まいや住生活を再現する展示手法と定義している。 平成23年度は情景再現展示の調査に力点をおいて研究を進めた。既調査も含め調査を行った公立の歴史博物館51館のうち、32館が合計73件の情景再現展示を持っていた。再現の時代は近世が29件、近代が24件で、全体の3分の2を占めること、近世では農家や町家、近代では戦後の庶民住宅や商店など、住宅系の再現展示が多いことが明らかになった。全体的に、建物一棟全体を再現し、その内部空間に生活用品や人形を配して、暮らしぶりを詳細に再現するものが多い。しかし、観覧者が建物内部にまで自由に入れる情景再現展示は多くはなく、土間部分までの範囲で立ち入りが制限されているケ-スが少なくなかった。さらに、歴史博物館の常設展示のタイプを「分野展示」「通史展示」「主題展示」に分類して検討した結果、「主題展示」では展示室全体を使い、複数の建物によって町並みを再現する大型の情景再現展示が特徴的であった。歴史博物館での体験学習は研修室等で行う館が多く、常設展示室内の情景再現展示の空間を体験学習の場に積極的に活用している館は少ない傾向が見られた。一方、野外博物館については、民家の空間を活用し、ボランティアによる囲炉裏端体験、脱穀体験など、当時の生活を味わえる体験型プログラムの事例が収集できた。歴史博物館の常設展示室における建築展示の住教育への活用には、野外博物館で可能な内容と常設展示室内で可能な内容と課題を整理・検討する必要性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、歴史博物館における情景再現展示と野外博物館の展示を対象に、その建築的特色と住教育への活用について調査研究を進めた。うち、歴史博物館の情景再現展示の建築的特色と住教育への活用実態については、全国の公立歴史博物館51館について実態調査を行った結果の中から、とくに常設展示室における情景再現展示の建築的特色を詳細に分析した知見をまとめ、大阪人間科学大学の紀要に報告した(「公立歴史博物館における情景再現展示の特性」)。また、関連研究を日本建築学会計画系論文集にも報告した(「公立歴史博物館の常設展示の類型とその変遷に関する研究」、「公立歴史博物館における通史展示の展示シナリオと展示設計」)。情景再現展示に関しては、当初の計画以上に研究が進展したといえる。 一方、野外博物館については東北地方に調査対象館がまとまってあるが、東日本大震災後であったため、視察調査の開始時期が遅くなり、全体的な傾向を把握するに十分な調査事例数を得ることができなかった。野外博物館の建築展示の実態と住教育への活用については、次年度に補足調査をすすめる必要がある。 以上から判断して、本研究全体としてはおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)野外博物館と情景再現展示を持つ歴史博物館を対象とした建築展示の特色と住教育くへの活用に関する調査 前年度の調査結果を整理し、とくに調査件数が不十分だった野外博物館を対象に、建築展示の実態と建築展示を活用した住教育について調査を進める。(2)北欧の野外博物館における建築展示の活用に関する調査 野外博物館の建築展示を積極的に活用した学習プログラムに関しては、1891年に開館し、民家と人の暮らしを再現した世界初の野外博物館であるスカンセン野外博物館(スウエ-デン)などの北欧の野外博物館の調査を行い、比較検討を行う。(3)歴史博物館の建築展示を活用した体験型住教育プログラムの開発 北欧の野外博物館での展示と活用の手法、わが国の野外博物館の民家展示の活用手法、また屋内型の歴史博物館にみる情景再現展示の活用手法の調査から得られた研究成果をもとに、歴史博物館の建築展示を体験型住教育に活用するにあたっての課題や問題点を明らかにするとともに、建築展示を活用した体験型住教育プログラムの開発を行う。歴史博物館の教育利用者層を踏まえ、小学生向け、中学・高校生向け、大学生向けの学習内容の検討と教材開発を進めていく。開発した住教育プログラムを、平成25年度に大阪市立住まいのミュージアムの常設展示室をモデルに実践し、その評価を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度も、今年度とほぼ同様に、博物館の調査研究のための旅費を中心にして、資料整理とデ-タ入力補助のための謝金、および消耗品に研究費を使用する。 なお、今年度は調査資料の整理やデ-タ入力作業のための謝金に、当初の見込みよりも経費がかからなかったかったため、122,480円が執行残となった。これについては、今年度は充分な調査件数が得られなかった野外博物館についての補足調査、および海外調査(スウエ-デンのスカンセン野外博物館など、北欧の野外博物館調査)とあわせ、次年度に野外博物館の実地調査を充実させたいので、その旅費に使用する計画である。
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Research Products
(5 results)