2012 Fiscal Year Research-status Report
歴史博物館の建築展示を活用した体験型住教育プログラムの構築
Project/Area Number |
23560725
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
碓田 智子 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (70273000)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷 直樹 大阪市立大学, 生活科学研究科, 教授 (40159025)
増田 亜樹 大阪人間科学大学, 人間科学部, 助教 (50441126)
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Keywords | 歴史博物館 / 住教育 / 建築展示 / 体験学習 |
Research Abstract |
歴史博物館の建築展示を活用した住教育プログラムの応用事例として、平成24年度は、海外調査を含めて野外博物館の調査に力点を置き、①民家展示の建築的特色、②民家展示の活用方法、③民家展示を使った学習プログラムと学習教材について検討を進めた。また、大阪市立住まいのミュージアムの江戸時代の町並みを再現した建築展示ををモデルに、2種類の異なる見学方法のプログラムを作成し、その学習効果の検証を試みた。さらに、情景再現展示を持つ歴史博物館についても補足調査を行った。 1.野外博物館の民家展示を活用した学習プログラムについては、わが国の野外博物館(44館)の民家展示、および歴史博物館の野外展示としての民家展示(9館)について、展示の内容とそれを活用した学習プログラムを検討した。民家展示の空間を活用した学習プログラムには、子ども向けのものづくりやお話が大半を占めること、また民家内部への立ち入りの自由度とプログラム内容には関連性があることなどが把握できた。 2.スカンセン(スウエ-デン)、フィン、フリ-ランドムセ、デン・ガムレ・ビュおよび(デンマ-ク)の野外博物館の視察調査によって、民家展示の教育活用には、当時の生活を演出する「人」の存在と、日常のさりげない生活の細やかな演出と展示がキ-になっていることなどが確認できた。 3.大阪市立住まいのミュージアムの町並みを再現した展示室をモデルにした見学プログラムは、学芸員が要所で解説しながら、見学者とともに展示室を巡る見学方法(解説型見学)と、各町家にその住人に扮したスタッフを配し、訪れる人に解説する方法(訪問型見学)を開発した。大学生を対象に見学方法の違いによる学習効果を検証したところ、訪問型見学は学習内容にムラが生じるが、見学者の理解が深まる傾向がみられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
歴史博物館の情景再現展示の建築的特色については、昨年度の補足調査を行い、その結果の一部を日本建築学会近畿支部研究報告集に投稿した(平成25年3月投稿)。これについては平成25年6月の近畿支部研究報告会で報告予定である。 また、歴史博物館の情景再現展示を活用した学習プログラムについては、海外調査で得られた知見をもとに、江戸時代の町並みの再現展示を持つ大阪市立住まいのミュージアムをモデルに、2種類の見学プログラムを開発し、建築を専門とする学生と建築を専門としない学生を対象に評価実験を行った。本年度の評価実験の結果は精査中であるが、これに先だって行ったプレ実験の結果を、平成24年度の日本建築学会大会学術講演会(「歴史博物館の情景再現展示を住教育に活用するための学習支援の試みと評価」)で発表した。加えて、大阪市立住まいのミュージアムで本研究の成果の一部の応用となる企画やプロジェクトを行った成果を、住まいのミュージアム研究紀要に報告した。 スウエ-デンとデンマ-クの野外博物館の海外視察調査で得られた知見は、住まいのミュージアムをモデルとした訪問型見学の企画・開発やプログラム内容の考案に活かすことができた。しかしながら、短期間の海外視察調査であったので、学会発表につながるような精緻な研究デ-タを得るものには至っていない。 以上、研究成果は適宜、学会等で発表しており、本研究全体としてはおおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
1.野外博物館と情景再現展示を持つ歴史博物館を対象とした建築展示の特色と住教育への活用に関する補足調査: これまでの調査結果を整理し、補足調査を行いながらまとめていく。また、住教育プログラムを推進する上での博物館の運営上の課題を、研究協力者である大阪市立住まいのミュージアムの学芸員の助言協力を得ながら整理していく。 2.歴史博物館の建築展示を活用した体験型住教育プログラムの実践と評価:これまで2年間の研究では、小学生向け、中学生向け、大学生向けなどに分けて、歴史博物館の建築展示を活用した体験型住教育プログラムを検討してきた。しかし、この間の研究によって、どの年齢層にも応用可能なプログラムを開発し、それを見学者の年齢や専門性、理解度に応じて柔軟に対応させる方が、実際の博物館で実践しやすいものになるのではないかという考えに至っている。そこで、前年度に試行した住教育プログラムをもとに、総合的な体験型住教育プログラムを大阪市立住まいのミュージアムの常設展示室をモデルに実践し、その評価を行う。 3.研究のまとめ:野外博物館の民家展示を活用した学習プログラムの事例、および歴史博物館の情景再現展示を使った学習プログラムの事例について、住教育の視点から特色と課題をまとめる。また、大阪市立住まいのミュージアムの町並み再現展示をモデルに実践した住教育プログラムの評価を行う。以上を総合して、歴史博物館の建築展示を活用した体験型住教育の構築に関する課題を検討し、研究成果をまとめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度も、平成24年度とほぼ同様に、博物館の実地調査のための旅費に加え、資料整理や住まいのミュージアムでのモデルプログラム実施補助の謝金、および消耗品に研究費を使用する。 平成24年度は、北欧の野外博物館の海外調査も含め、野外博物館実態調査と資料分析が中心になったが、その研究資料の整理は学部学生による研究補助では困難であったため、研究代表者や分担者が行った。そのため、謝金が当初の計画よりも少なくなり、約18万8千円の執行残となった。この分は、最終年度となる次年度に、引き続き博物館の補足調査を充行うための旅費に加え、研究資料のまとめのための謝金として使用する計画である。
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Research Products
(8 results)