2011 Fiscal Year Research-status Report
住宅ストックの有効活用に向けた中古住宅市場の活性化策と適正価格評価手法の開発
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23560727
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
趙 世晨 九州大学, 人間・環境学研究科(研究院), 准教授 (80304848)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 中古住宅 / 価格構成 / 立地条件 / 地理的加重回帰モデル |
Research Abstract |
本研究は、本格的な少子高齢化社会、人口・世帯減少社会の到来を目前に控えたわが国の現状を踏まえ、量的充足から質的充足へ、そして住宅ストック重視、市場重視等の政策転換が求められている中で、中古住宅市場の活性化によるストックの有効活用、柔軟な居住地選択機会の提供による住み替えを促進するために、中古住宅の価格を適正に評価できる地理的加重回帰モデルを構築し、地区別中古住宅価格の構成要因を明らかにした上、今後の中古住宅市場の活性化へとつながる適正価格評価の仕組み及びそれに関わる政策提言を行うことを目的としている。 上述の目的を達成するために、本研究では空間的自己相関の概念に基づいて、地理的加重回帰モデルを導出し、住宅情報タウンズ及び都市計画基礎調査のデータを用いて、モデルのパラメータの算出し、その妥当性を検証した上で、中古住宅価格決定関数の推定を行う。次いで、地区別の価格形成要因を定量的に明らかにし、中古住宅市場の選好傾向、潜在的な需要構造を解明し、中古住宅流通市場の活性化方策を検討する。 本年度は3ヵ年計画の初年度であり、主に中古住宅に関するデータベースの作成を行った。具体的には住宅情報タウンズより住宅価格、面積、築年数、設備などの情報、そして都市計画基礎調査より立地条件に関するデータをそれぞれ取得し、GIS(地理情報システム)上でデータベースを作成し、加工した。なお、研究対象都市は、大都市の代表として大阪市、地方中核都市の代表として福岡市をそれぞれ取り上げて、GIS上で中古住宅に関するデータベースを作成した後、統計分析により両都市の中古住宅の価格分布及び立地特徴を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は3ヵ年の計画である。本年度は初年度であり、おおむね当初計画の通り、研究対象都市の中古住宅データベースをGIS上で作成し、また立地的影響の有無を検証するために、住宅の立地条件及びその特徴分析を行ったことによって、本研究の目的を達成するための最も基礎かつ重要な作業を完了したことで、今後の研究計画の遂行に大いに役に立った。さらに最新の研究成果を学会などで発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方策は当初予定の通り、第2、3年度には具体的に以下の作業を行う予定である。第2年度:地区別の価格形成要因とその分布状況の分析 地理的加重回帰モデルの要点は、重み行列の作成にカーネル関数利用することである。つまり、立地環境の影響に関する重み関数の設定は線形関数でも可能であるが、地域間の滑らかな影響変化を捉えるためにカーネル関数などを利用することが妥当であると考えている。また、局所的な宅価格形成要因の決定係数を推定し、それぞれの有意性の検定を行う。まず住宅属性(面積、築年数、設備(システムキッチン、床暖房など)等)の関数の有効性を検証し、次いで立地環境の影響分布を明らかにする。さらに、地区ごとの影響要因を分析し、立地要因と属性要因は、どのように価格に影響し、重視されているかを明らかにする。さらに欧米中古住宅の市場及び活用方法について調査を行う。第3年度:中古住宅市場の選好傾向と活性化策の提示 住宅に限らず、一般的に需要の高い地域は価格も高くなる傾向はあることに加えて、中古住宅は、地区のイメージや周辺住宅の価格に大きく影響されており、供給側と需要側とのミスマッチの発生は否めない。ここで、地理的加重回帰モデルの推計で得られたパラメータを元に、全変数を備えた物件が各地区に存在すると仮定し、各地区固有の値を挿入することによって、中古住宅の需要構造、選好傾向など、つまり地区ごとの潜在的な需要構造を明らかにする。また、現段階で想定できる展開としては、本研究の成果をもって、各分野の専門家(例えば、行政、不動産、経済など)と協議・検討し、今後わが国の住宅政策の決定への提言を目指す。また、民間関連企業との共同研究を実施しながら、中古住宅価格の評価基準を共有し、流通の促進を図る施策を提示する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度に使用する予定の研究費が約45万円であるが、これは研究代表者の主宰している研究室が単独で研究計画を遂行するに加え、既存の設備やデータの蓄積を活用することで、研究予算の施行をコンパクトに抑えることが出来たためである。翌年度以降に請求する研究費と合わせた使用計画として、まずデータ収集と研究発表のための比較的少額の国内旅費を計上している。また、欧米諸国の中古住宅政策及び市場調査のため、海外旅費が必要である。さらに、本研究は研究代表者と指導する大学院生によって遂行されるが、理論モデルを構築する際に統計解析に対する深い理解と知識が求められており、専門家からの知識提供やアドバイスが必要である。そのための謝金を計上している。加えて使用データの量は膨大で、データの整理や入力のアルバイト代として謝金を計上している。
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Research Products
(2 results)