2011 Fiscal Year Research-status Report
視覚能力レベルに応じた「迷い点」による空間の分かりやすさ評価ー居住福祉施設の場合
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23560732
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
森 一彦 大阪市立大学, 生活科学研究科, 教授 (40190988)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
酒井 英樹 大阪市立大学, 生活科学研究科, 准教授 (90277830)
戒田 真由美 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (70336767)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 居住福祉施設 / 空間の分かりやすさ / 視覚能力レベル / 迷い点 / 迷いマップ / 場所 / 経路 / 空間構成 |
Research Abstract |
高齢者・障害者が自立して移動し、主体的に生活する上で「空間のわかりやすさ」は極めて重要な要件となっている。特に視覚・認知能力の低下した高齢者や障害者の「迷い行動」は転倒や失禁などの要因となるため自立行動を制約し、結果的に身体機能が低下する「負のサイクル」が形成される。本研究では、2000年の介護保険制度以降、急速に整備された老人ホーム、グループホーム、高専賃などの約2万施設の居住福祉施設に着目し、それらの多種多様な施設環境において、空間の分かりやすさを向上させる手段として、視覚能力レベルごとに迷いやすい地点(以下、迷い点)を特定し、その発生特性から「空間の分かりやすさ」を評価する方法を明らかにする。H23年度は以下を実施した。1.アンケートによる「迷い行動」の実態調査として、全国の居住福祉施設(有料老人ホーム)から1000施設をランダムに選出し、郵送アンケートによって実態を調査した。273施設からの回答を得た。(1)共用空間の概要(広さ、機能など)と利用度(人数と頻度、時間)、(2)迷い行動の発生頻度と発生状況(その際の目的)、(3)転倒事故の発生頻度と発生状況(その際の目的)について調査した。調査結果として、居住する高齢者の多くが重度である有料老人ホームの場合、共用空間の利用が少なく、その結果、迷い行動や転倒事故が顕在化していない実態がある。2.訪問ヒアリングによる「迷い行動」の実態調査として、アンケート結果から代表的な20施設選出し、共用空間における「迷い行動」の実態を訪問ヒアリング調査によって行った。主な調査項目は、(1) 迷い行動の発生頻度、(2) 迷い行動の発生場所(迷い点)、(3) 迷い行動への対処方法である。調査結果として、転倒事故についての意識が高い反面、迷いについての意識の低さがあった。迷いによって、利用の定価や事故の誘因などの関係性の分析が必要であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度(23)は、全国の約2万施設の居住福祉施設から1000施設をランダム抽出し、「迷い行動」および転倒事故の発生状況を把握した。さらにその結果から特徴的な20施設選定して訪問調査を行い、「迷い行動」の発生場所の実態を写真撮影(新規購入備品による)と平面図上記録で把握した。施設によって居住者の介護度に大きなさがあり、共用空間利用の観点から、介護度の低い「住宅型」有料老人ホームについて焦点をおいた。ただ、共用空間の重要性の観点からは、介護度の高い居住者は外出機会もすくなく、共用空間の重要性はより高いと考えられ、今後の課題としたい。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目(24)以降の研究として、当初の計画通り、「迷い点」の発生特性をしらべる。具体的には、訪問調査の結果を基に、代表的な施設を10施設選出し、視力低下めがねによる探索行動実験を行う。実験結果から「迷い点」を特定し、その空間的特徴を統計分析する。視力低下めがねの実験結果から、視覚能力レベルごとの迷い点マップを作成し、「共通の迷い点」、「弱視に特徴的な迷い点」などの発生特性を統計的に分析する。被験者30名(視力1.0、視力0.6、視力0.3、視力0.1の各5名)と実験者2名が実際の10施設に順々に訪問実験を行う。探索行動の目的は、訪問調査の結果で決定する。(現時点での想定では「トイレを探す」、「自室に戻る」、「食堂に行く」などが想定している。その実験結果をもとに、「迷い点」の発生特性を以下の手順で分析する。(1) 実験結果を基に、「迷い点(迷った地点)」を平面図上にプロットする。(2) 各被験者の迷い点を同一平面図上に集計し、発生頻度の高い「迷い点」を特定する。(3) 迷い点の中から、「視力に関係なく共通する迷い点」「弱視に特的な迷い点」などを抽出し、物的環境との関係から発生特性を統計的に分析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の予定通り、初年度の研究発表、および被験者30名(視力1.0、視力0.6、視力0.3、視力0.1の各5名)と実験者2名が実際の10施設に順々に訪問実験を行う。予算としては、研究発表旅費200千円、被験者謝金1000千円、他諸経費を予定している。
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Research Products
(8 results)