2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23560733
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
宇高 雄志 兵庫県立大学, 環境人間学部, 教授 (80294544)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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Keywords | マレーシア / 多民族混住 / 建築 / 生活空間 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、マレーシアにおける都市や農村の生活空間と多民族の混住状況の変容を追うことを目的とした。 1990年代前半に実施した、農村、住宅団地、市街地などの8地点での同一地点に対して再訪調査を実施し考察した。主な成果は以下のとおり。 第一に、再訪問調査の目的と方法について精査し国際的な研究動向を中心に整理した。また、統計資料などを用いてこの20年間の社会情勢の変化を分析できた。この20年間で同国は高い経済成長を示し国土開発は急速に進んだ。住宅は急速に工業化し伝統的な生活様式も画一化の傾向にある。民族政策の転換、環境保護や伝統文化の保全に対する関心の高まりも指摘した。 第二に、多民族混住を「村落」「都市」「周縁」「郊外」の枠組みで8地点の実態を記述した。「村落」では、地方開発の進展により村落の就労が農業から製造業に転換しつつあり、マレー村落の相互扶助や民族関係に影響していること「市街地」は、従前、中国系が優勢なこともあり国家的開発の枠外にあったが、近年の世界遺産登録等による観光資源として注目され多元文化を表象するものとして注目されていること、「周縁」では、従前は都市周辺の開発余地としてとらえられていた空間が環境保全や化的多元性の象徴として再注目されていること、「郊外」では、経年した新興住宅団地が徐々に一定の民族集団に純化され老朽化をたどっている一方で、巨大開発が持続していることを指摘した。いずれの地点でも生活者は自らの民族文化を生活空間に維持しつつも社会の変化に影響されている様を論じた。 第三に、民族混住の状況はそれぞれの居住地で社会変動を受けしなやかに変化していることを指摘し、これを民族「共住」とよび論述した。これは単なる物的な混住ではなく異なる文化的背景を有する民族集団が、必要に応じて適切な間合いをもうけつつ、自律的に相互の空間的、社会的関係を調整していることを指摘できた。
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