2011 Fiscal Year Research-status Report
パーミアビリティからみた住宅地空間評価に関する研究
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23560744
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Research Institution | Tokyo City University |
Principal Investigator |
天野 克也 東京都市大学, 工学部, 教授 (60159457)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 防犯環境設計 / パーミアビリティ / 低層住宅地 / 多摩田園都市 |
Research Abstract |
本年度の研究目的は、パーミアビリティを反映する住宅地空間指標を抽出し、住宅地におけるパーミアビリティ指標と犯罪発生実態との関係を解明することである。対象住宅地として、横浜市青葉区多摩田園都市における第一種低層住居専用地域の中から、街路特性と犯罪件数に特徴がみられた15 町丁目を選定した。犯罪発生は、神奈川県青葉警察署資料をもとに平成21、22年度の町丁別実態を把握した。パーミアビリティ指標は、Space Syntax理論における指標とアリス・コールマンの概念を踏まえた。SS理論からは、IV 値平均・循環度・格子度の3指標を、コールマンからは、監視性、接近性、領域性、防御性に分類できる前面視野等の17指標に着目し、それぞれ地形図、現地調査から求めた。以上の方法を踏まえ、次のことを明らかにした。(1)循環性に優れ格子状の街路パターンに近づくほど、路上犯罪が減る傾向がある。このことは、循環性の高さは街路における人の流れを促す一因となり、また、格子度の高さは通行者の見通しに影響を与えることによると考えられる。(2)SS理論の街路特性3 指標と住宅への侵入犯罪との間には、明確な創刊関係がみられなかったが、循環度は、各犯罪に対して正の関係、逆に、IV 値平均及び格子度は負の関係を持つ傾向がある。(3)コールマンに基づく17指標の街区単位の平均値をもとに求めた各指標間の相関関係より、前面道路に対して見通しが悪い住宅が多い街区は隣棟との見通しも悪く、街区全体が閉ざされている傾向にある。(4)犯罪発生の多い地域では、コールマンのパーミアビリティ指標のうち、玄関位置、階段有無、緑道接道、袋小路接道、全体の手入の5指標で得点が高い(即ち、問題が多い)傾向が認められた。以上より、防犯環境設計の観点から住宅地の課題として、見通しのよい街路形態、住宅からの監視性の確保とよい環境の維持が重要であることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」で示したように、研究の目的に対しておおむね順調に研究を進めることができた。ただし、当初対象地域を20地区を見込んでいたが、神奈川県の即地的、即ち街区レベルの領域の犯罪データが入手できず、かなり広範な町丁目単位でしか把握できなかったため15地区に修正した。その理由は、町丁目単位の規模は、世帯数で約500から3500世帯と、街区単位と比較してかなり多くなり、調査の負担を調整したためである。しかし、対象地区が少なくなっても研究そのものの目的は達成されたと判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の研究目的は、対象地域の居住者の生活行動・意識評価を把握し、パーミアビリティ指標との関係を解明することである。次のように2段階に分けて研究を進める。1.居住者の生活行動と意識評価の把握:対象地域の居住世帯を対象とするアンケート調査(下記参照)により、居住者の住宅廻り、及び対象地区内での日常的な生活行動と地区内住環境に対する意識評価を把握する。生活行動は、対象地区内の行動領域(よく利用する街路、公園などから把握)と住宅廻り(街路から見える庭や窓、住宅前の街路等)の設えや維持管理状況に着目する。意識評価は、防犯上及び災害時の避難からみた安全性、街路の通行利用からみた利便性、地区景観等の多様性、住環境全体の快適性に着目する。アンケート設計に先立ち、生活行動の概略、意識評価の内容を検討するために予備調査として観察調査とヒアリング調査を行う。アンケート調査について:対象地区に居住する世帯を対象とするアンケート調査(配布・郵送回収法)により、居住者の生活行動と意識評価把握する。調査対象は、町丁目単位となるので、15地区を地区特性(人口、街路、地域施設等に着目)によって分類し、対象を絞って行うものとする。2.パーミアビリティ指標と居住者の生活行動・意識評価との関係平成23年度に求めたパーミアビリティ指標と居住者の生活行動と意識評価との関係について、相関分析、要因分析(重回帰分析、Amos等)にもとづき解明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.「次年度使用額」が19,510円生じた状況「現在までの達成度」で示したように、入手できる犯罪データの空間単位の制約から対象地区の空間単位が大きくなったため、対象地区数を少なくなくして、調査負担を調整した。対象地区数は少なくなったが、対象空間と住宅戸数が増えたので、調査のための謝金が当初より超過するものと想定し、旅費の使用を取りやめて調整した。しかし、調査謝金が見積もりより少なく済んだため次年度繰越金が発生した。2.平成24年度の研究費の使用計画 上記「今後の研究の推進方策」で示したアンケート調査及び予備調査において、アンケート票の印刷費、その封入・配布及びデータ整理のための謝金・交通費、アンケート郵送費(回収時)、ファイル等文具費に使用する。また、前年度の成果を含め学会発表のための旅費に使用する。
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