2012 Fiscal Year Research-status Report
パーミアビリティからみた住宅地空間評価に関する研究
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23560744
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Research Institution | Tokyo City University |
Principal Investigator |
天野 克也 東京都市大学, 工学部, 教授 (60159457)
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Keywords | 防犯環境設計 / パーミアビィリティ / 低層住宅地 / 多摩田園都市 |
Research Abstract |
本年度の研究目的は、対象住宅地に居住する居住者の生活行動と意識評価を把握し、パーミアビリティ指標との関係を解明することである。前年度の成果を踏まえて得られた結果まとめると、次の1~4に要約できる。 1.住宅特性については、前面道路に対して見通しが悪い住宅は隣棟との見通しも悪く街区が全体的に閉ざされる傾向がある。監視性、領域性の各指標と侵入罪との間の強い関係性がみられ、道路・相隣からの見通しの確保(自然監視性の確保)、住宅廻りの整備(領域性の明確化)が、犯罪者を敷地に入りにくくさせていること、庭での行為の多様性が犯罪発生を起こりにくくしていることを明らかにした。 2.住宅周辺特性については、SS理論におけるIV平均、循環度、格子度間で関係性がみられ、IV平均と侵入犯罪との間で強い関連があることが認められた。これらのことから、移動効率がよく街路の選択が多くなると、居住者にとって移動の利便性が増し、多様性が多くなるが、一方、犯罪者にとっても逃げ道が多くなる状況にあることを示した。 3.住環境の総合評価との関係性から、全体として、住まいの防犯安全性、街路歩行の快適性、街路ルート選択の多様性、住環境の快適性の4つが総合評価に影響を与える要因であることを示した。 4.以上より、住宅地のパーミアビリティを総合的な観点から捉え、犯罪発生の実態、居住者意識評価及び生活行動との関係を解明した結果、自然監視性の確保、領域の明確化、庭での行為の多様性が犯罪を抑制しうること、さらに、防犯安全性、街路歩行の快適性、街路ルート選択の多様性、住環境の快適性を向上することが住宅地のパーミアビリティを高めることに寄与することを明らかにした。街路については、住民にとっての移動のしやすさや経路の選択の多さは、同時に犯罪者にとっても逃げ易さにつながり、この点に留意すべきであることを言及した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究成果としては、研究実績の概要で示したようにその目的を達成したと考えている。しかし、年度途中で研究代表者が病気により2か月近く療養したため研究成果の学会発表が充分できなかった。これに対しては、平成24年度末に当該年度の成果を査読付き論文を3編投稿し、採用が決定している。従って、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、最終年度に相当し、パーミアブルな住宅地空間形成のため計画条件の検討と総括を行うことが目的となる。研究は次の3段階に分けて進める。 1.住宅地空間形成の計画条件の抽出:平成23年度、24年度の研究において明らかにした犯罪実態、居住者の生活行動及び意識評価との関係性に基づき、パーミアビリティ指標による住宅地空間形成に向けた計画条件化を行う。 2.計画条件の居住者による許容性調査:平成24年度位と同様の世帯を対象とするアンケート調査により、この計画条件を居住世帯に提示し、住宅地空間形成のルールとしての許容性評価を求める。地区居住者による許容性調査は、対象地区に居住する世帯を対象とするアンケート調査(郵送による配布・回収)により、居住者にこれまでの研究成果の概要とその結果得られた住宅地空間形成のための計画条件を提示し、その許容性評価を求める。調査対象は、計5,000世帯程度を想定している。 3.研究の総括:以上の結果を踏まえ、住宅地(低層住宅地)におけるパーミアブルな住宅地空間形成のための計画条件を、居住者が許容する住宅地空間形成のルールとしてまとめ、その課題を考察するとともに研究全体の成果を総括する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.「次年度使用額」(424,769円)が生じた状況 現在までの達成度の項に記したように、研究代表者が約2か月病気のため療養したので、この間の研究予算(特に謝金に関する費目)の執行が滞り、さらに、当初予定した研究成果の学会発表も実現しなかったことが主な理由である。 2.平成25年度の研究費の使用計画 上記「今後の研究の推進方策」示したアンケート調査にかかわる調査票の印刷費、その封入・配布及びデータ整理のための謝金・交通費、アンケート郵送費(配布・回収)、ファイル等文具費が必要となる。また、前年度の成果を含め学会発表のための旅費、研究論文の別刷り印刷費、研究成果報告書の印刷費、さらにその成果概要を掲載のための研究室ホームページ製作費が必要となる。
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