2011 Fiscal Year Research-status Report
「場」の概念からみた図書館における来館を促す建築的魅力に関する研究
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23560751
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Research Institution | Aichi Institute of Technology |
Principal Investigator |
中井 孝幸 愛知工業大学, 工学部, 准教授 (10252339)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 図書館 / 使い分け / 場 / 魅力 |
Research Abstract |
滋賀県東近江市の7つの図書館にて、平成23年10月に3週にわたって、土曜日1日全来館者を対象とした来館者アンケート調査と館内での利用行動を記録する追跡調査を行った。1市6町が合併した東近江市には、図書館建築賞の受賞や建築雑誌に掲載されるなど活動の活発な図書館を多く含んでいるが、その一方で合併後に愛東図書館は一時閉鎖されたが住民の強い要望から平成23年8月に別敷地でリニューアルオープンし、五個荘図書館は取り壊されて新しく建設される中学校と共同で図書館を運営することが決まっているなど、全国的にも注目されている。 過去の研究から、複数の図書館利用は2割から3割程度であったが、東近江市では6割近い利用者が複数の図書館を使い分けていることが明らかとなった。従来の使い分け利用の理由は、近さと蔵書の多さによるところが多かったが、東近江市では各館が施設サービスに特徴を持っていることもあり、使い分けている理由もそうした各館のサービスをきちんと理解して使い分けていることが整理された。遠方から小さな規模の図書館を複数利用したり、図書館職員との会話を主目的に利用する高齢者、静かな館内の雰囲気を求めてやって来る市外からの利用者、医療の専門書が充実している館を選ぶ利用者、同じ日にいくつもの図書館をハシゴ利用する利用者など非常に多くの利用パタンが抽出された。 このように従来からの近い・多いだけではない、各館のサービスを熟知した「相対的な使い分け利用」が具体的に抽出されたことは、たいへん有意義であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
いくつかの地域で調査を行わないと、複数の図書館を使い分ける利用行動から、「場」としての図書館の魅力が抽出できないのではないかと考えていた。しかし、今回調査を行った滋賀県の東近江市は、優れた図書館が数多く立地しており、その個性豊かな各館で図書館サービスに応じた特色を持たせており、その特色を利用者がたいへんよく理解して、様々な図書館を使い分けていることが明らかとなった。 もともと、滋賀県は独自の図書館振興策を持つなど先進地域であり、利用者も図書館利用が成熟していたことも影響していると考えられる。また図書館司書も全国から公募するなど、図書館建築、司書、サービスの質と量ともに充実した地域で調査できたことが大きな要因だと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
公共図書館を中心に「場」の概念からみた図書館利用の研究を進めてきたが、東近江市立図書館での調査からは、図書館に対する多様な施設像や相対的な使い分け利用行動が整理できた。しかし、東近江市で各館の図書館サービスに特徴を持たせているとはいえ、公立図書館であるため、施設サービスにそれほど明確な差をつけることもできないでいる。 そこで、図書館の施設サービス自体をどのように意識して利用しているのかを分析するケーススタディとして、特徴あるサービスを提供している大学図書館にて公共図書館と同様の調査を行い、図書館のどのようなサービスに引き付けられてどのような「場」として認識しているのかを整理することにした。平成23年に工業系単科大学と文系単科大学図書館で同様の調査を行ったところ、特徴づけているサービスに対してさらに強い要望が寄せられ、学習の場だけではなくコミュニケーションの場としての意識が高いことが分かった。 こうした背景から平成24年度は、施設サービスと利用意識との関係を整理するため特徴あるサービスを提供している大学図書館を対象に来館者アンケート調査や館内巡回プロット調査を行いたい。そして、可能であれば海外の大学図書館も研究の対象として広げて、どのような施設サービスを提供すれば図書館をどのような「場」として捉えているかを整理抽出して行きたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、全国あるいは海外も含めて特徴のあるサービスを提供している大学図書館を中心に調査を行うため、調査員の旅費や謝金が大きなウェートを占めることになるが、集計・分析作業を円滑に行うため、パソコンや画像処理ソフトなど数台の購入(物品費)も行いたい。 国内では東京近郊の大学を中心に、英語教育に力を入れている文系の大学や外国語大学、ラーニングコモンズに力を入れている大学などから2,3校を対象とし、海外は研究代表者が所属する大学と姉妹校の提携を結んでいる中国の大学を調査対象として検討したい。
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Research Products
(2 results)