2014 Fiscal Year Annual Research Report
フランスの持続可能な地区整備事業エコ・カルティエと団地更新に関する研究
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23560752
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Research Institution | Sugiyama Jogakuen University |
Principal Investigator |
阿部 順子 椙山女学園大学, 生活科学部, 准教授 (50381455)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | エコ・カルティエ / フランス / 持続可能 / 団地更新 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、2008年よりフランスのエコロジー・持続可能な発展・運輸・住宅省が主導しているエコ・カルティエ(Eco-Quartier)(以下EQ)事業、なかでも団地更新と関連のある事業に着目した。3回の現地調査および関係者へのヒアリング調査、文献調査を行い、EQの実態・理念の把握に努め、以下の知見を得た。 ①EQ受賞事業の中で、団地更新と関連のあるものは少数で、新築が中心でスタートしたことが明らかになった。②問題地区の団地ではEQの認証が得られたとしても劇的なイメージ改善にはならない。断熱改修による光熱費の大幅なダウンこそが住民の最大の関心事である。長年取り組んできたものがたまたま評価されただけ、受賞団地の供給主体は捉えている。省エネ建物の基準は既に浸透しているので、EQによる仕事の変化はあまりないという建築家の意見が多かった。一方で、EQコンクール参加は、事業目的を鮮明にし、政治家・環境活動家等が関心をもちやすく、事業を加速できる面もある等、公的セクターの実務では成果が観察された。③EQでは、暮らし方も省エネ建物に対応して変化すべきだが、暮らし方の教育が機能しておらず、今後大きな課題となろう。④全国コンクール実施と模範的事例の表彰・認証というシステムの継続性は、現時点では不明であるが、模範的な事例を国が認証し、積極的に情報公開していることは知見の共有という点で優れた方法である。⑤住民にとっては光熱費のダウン・居住性能の向上、団地供給主体にとっては管理物件の魅力アップによる住民獲得・賃料収益増といったメリットこそがインセンティブになっている。日本も環境配慮でアピールするだけでなく、現実的なメリットのある更新手法をとるべきである。⑥全土の等しく持続可能な発展という点でエコ・カルティエは、フランスの長年の団地更新(問題地区の改良)のコンテクストの中に位置づけることも可能である。
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