2011 Fiscal Year Research-status Report
空間把握を促進する触知案内図の表示方法に関する研究
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23560754
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Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
後藤 義明 岡山理科大学, 工学部, 教授 (70461209)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 視覚障がい / 触読 / 方向 / 浮き出し / 現在位置 |
Research Abstract |
研究実施計画では23年度は触知図の設置状況と使用実態の調査と文献調査を行うとしている。それぞれについて実績の概要を述べる。1、触知図の設置状況調査 東京都、大阪市、福岡市に存在する駅舎、商業ビル、庁舎、地下街等の公共性の高い69 か所の建築物・施設を訪問し、74 枚の触知図を確認した。それぞれについて、表示の構成(タイトル、凡例、説明文)、設置図への誘導手段(誘導ブロック、音声ガイド)の有無を調べ、触知図の大きさ、設置高さ、表示方法(記号種類、浮き出し部分の幅や突出高さ等)を計測するとともに、触知図の設置状況、触知図本体、触知記号等をデジタルカメラで撮影した。都市別内訳は東京都が建築物・施設訪問数20、触知図数12 枚、福岡市が訪問数28、 触知図数41 枚、大阪市が訪問数21、触知図数21 枚である。なお、同じ建築物・施設の中に設置されていて同一のものと思われる触地図は分析の対象から除いたため、分析対象の総数は60 枚であり、内、トイレ案内図が14 枚、周辺案内図が9 枚、施設案内図が18 枚、構内案内図が19 枚であった。結果については、本年度日本建築学会大会で発表する予定であるが、特に触読する際の最初の手掛かりになる現在位置表示記号に関して、突出寸法の不足や形状の不統一などが判明したことを付記しておく。2、文献調査 研究協力者である(財)共用品推進機構星川専務理事の協力を得て、21の文献を収集し、抄録集(A4版108頁)を作成した。内訳は、調査・実験報告書が15編、ガイドラインが6編(調査報告書が含まれる2編を重複計上)、その他が2編(点字教科書作成マニュアル、触読能力の加齢変化に関わる調査報告書)である。ガイドラインには日本工業規格JIS T 0922が含まれる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1、触知図の設置状況と使用実態の調査/東京、大阪、福岡の調査は終了したので、概ね順調に研究は進んでいるが、23年度の研究実施計画のなかで実現していない内容を以下に記す。・現地調査の目標採取サンプル数は210であった。建築物一か所あトイレ案内図と施設案内図等が3枚以上あるものとして約70の建築物、施設を調査対象とし、訪問したが未設置の建築物が多いために採取アンプル数は74枚にとどまった。しかし、測定項目の追加やマイクロゲージとデプスメーターを用いて浮き出し寸法と線幅を詳細に測定を行う等、調査の精度は高くなっている。また、3都市の調査で触知図設置状況の傾向をつかむことができたと判断し、名古屋市の調査は行わなかった。・視覚に障がいがある人を対象とした使用実態のヒアリング調査を行うこととしていたが、本件に関しては、事前に岡山市在住の複数の視覚障がい者に対してヒアリングを行ったことと、文献調査により既研究に視覚障がい者の日常生活時の支障調査があることが分かったことなどから23年度は実施していない。24年度に行う予定の視覚障がい者による実験時に触知図の利用状況についてヒアリング調査を行う予定であるので、それに替えたい。2、文献調査/計画通り行い、抄録集を作成した。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度は実験研究を行う。研究実施計画では、空間把握に適切な表現方法の検討として、1、適切な縮尺の検討と2、面情報の有効性と性能要件の検討を掲げている。しかし、昨年度の調査で現在位置表示に問題があることが分かったので、本年度の実験目的の中に現在位置表示の分かりやすさの検討を追加し、1、2、と合わせて行う。 評価に関しては、一対評価による主観評価を行うとしていたが、触知図の分かりやすさを触読時間測定と触読時の指の軌跡を分析することによる迷い動作の検出という客観的な評価を加えることとする。特に迷い動作の検出では、簡易的な動作解析プログラムが有効に働くと思われる。実験内容を具体的に述べる。視覚に障がいがある被験者を対象に2種類の実使用実験を行う。実験1では、パラメータを縮尺と線の太さ、触知記号の形状とサイズとし、それぞれの条件を変えた触知図を用いて、官能評価と指先の動作分析を行う。実験2では面情報を設定したサンプルを用いて、線情報のみの従来の方法との比較を行う。実験に際しては、触知図の使用状況のヒアリング調査を合わせて行う。なお、当初、被験者目標数を25名としていたが、分析手法の変更と、試験体の追加により、予定数を達成することは困難と思われる。そこで、実験の信頼性を損なわない範囲で被験者数を減らして実験実施回数の増加に対応する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前述したとおり、分析手法と分析対象を追加したために、簡易的な動作解析ソフトを新たに購入する。また、実験時に指の動作を撮影できるように実験装置を制作する。昨年度の繰り越し額と本年度の決定額を合わせた範囲で実験に関わる費用(触知図実験体、約50万円、実験装置制作費、約20万円、被験者謝礼等、約30万円、その他実験実施に関わる経費、約10万円)と動作解析ソフト購入費(100万円以下)を使用する予定である。なお、昨年度の研究成果を日本建築学会大会(9月開催)にて発表するための費用(2名分約10万円)を計上する。
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