2012 Fiscal Year Research-status Report
空間把握を促進する触知案内図の表示方法に関する研究
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23560754
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Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
後藤 義明 岡山理科大学, 工学部, 教授 (70461209)
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Keywords | 現在地 |
Research Abstract |
研究実施計画では「24年度は空間把握に適切な表現方法の検討について実験研究を行う」としている。計画では適切な縮尺の検討を行うとしていたが、23年度の調査で、触知図情報で最も重要と思われる現在地情報が混乱している状況を見い出したため、現在地情報の表示について重点的に調べる実験を2度行った。 1)現在地記号の形状に関する実験/全盲の被験者3名に現在地記号の形状、大きさ、凸高さ、設置位置を変化させた触知案内図(感熱紙による簡易版)5種類を触知してもらい、現在地表示を見つけるまでに要した時間の計測と分かりやすさに関する5段階の官能調査を行った。また、触知中の手の動きをビデオカメラで撮影し画像解析ソフトを用いて詳細に動作を調べた。全組み合わせ189通りのうち55通りの実験を行った結果、触知案内図における現在地表示の分かりやすさに影響を与える因子は現在地記号の高さと設置位置であった。 2)現在地記号の表面性状に関する実験/全盲の被験者6名に現在地記号の表面性状、形状、凸高さ、設置位置を変化させた触知案内図(アルミ製の一般品)5種類を触知してもらい、1)と同様の実験を行った。表面を加工して手触りを変えることで感知性を向上させることができると仮定して、234通りのうち35通りについて実験を行った結果、半球状の感知記号の分かりやすさが突出しており、粗面仕上げは分かりやすさに貢献しないことが分かった。 実験1)に関しては、2012年度日本建築学会中国支部研究発表会で口頭発表した(25年3月3日)。また、実験2)の結果を加えて2013年度日本建築学会大会(8月30日~9月1日北海道大学)にて発表する(3編投稿済み)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
触知図の適切な縮尺検討を中心に実験を進める計画であったが、23年度の調査結果で現在地記号の混乱が問題であることがわかり、実験内容を変更することになったので、現在地記号に関する実験研究を2種類行った。研究計画でのサンプル数はそれぞれ、15と20であったが、今回は異なる5種の触知図を新たに製作し、それぞれについて形状、高さ、設置位置、表面性状などをパラメータとしたので、実験1)では55、実験2)では35のサンプル数の実験を行った。 なお、被験者については両実験で8名(共通した被験者は2名)であり研究計画の25名には及ばないが、実験の精度を上げたために1人あたりの試行回数が多く量的には十分であったと評価する。前年度行わなかった触知図の使用状況のヒアリングについてこれらの被験者について実施したことを付記する。また、触知中の手の動きについては前年度購入した画像解析ソフトを用いて様々な触読動作が存在することが分かったので、有効に利用できたと評価する。 研究発表は2012年度日本建築学会中国支部研究発表会で1編発表した。また、2013年度日本建築学会大会(8月30日~9月1日北海道大学)にて3編発表する(投稿済み)ので十分と評価する。 予算では繰り越しが発生しているが、25年度に新たに行う実験用触知図製作費に充当させることになっている。なお、実験は岡山県立盲学校の協力を得て行った。その過程で県立盲学校の触知案内図を新たに作ることをテーマに、本研究の目的である情報量が多い場合の分割提供の研究を進めることになった。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度は触知図に記載する情報量とその提示の仕方について実験研究を行う。研究実施計画では、情報量、並びに階層的な理解を促す表現等について検討することとして、①触知図に掲載される情報量の調査、②触読者の情報入手可能量の検討、③触知情報の分断と連続性の可能性検討について行うとしている。 24年度の研究計画であげていながら実施しなかった④適切な縮尺の検討については、24年度に使用したサンプルを元に、自動車や人、家具など大きさを類推できる情報を記載した触知図を製作し、建物の大きさを把握できるかどうかを確認する。①については23年度調査で得たサンプルの整理を行うことで代用できるために新たに調査を行わない。②及び③については24年度に協力関係を得た岡山県立盲学校の校舎配置図を題材に、視覚障がい者による実験研究を行う。その結果から、情報量の多い触知案内図の情報分解の手法を探り、その結果に基づいた触知図を試作して評価し改良を行う。具体的には複雑な情報を1枚の触知図で表現する場合と関連付けた数枚で表現する場合とを視覚障がい者が比較使用する。その際の情報量の把握程度を計測し、評価する。合わせて情報量の異なる実験用触知案内図を複数枚用意し、時間と正誤率などを評価尺度に用いて、情報入手可能量を調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今後の研究の推進方策に示したとおり、25年度は2種類の実験研究を行う。縮尺については縮尺の異なる実験用触知図を数多く用意する。触知情報量及び段階的提供手法については県立盲学校の校舎配置図という情報量の多い触知図を題材に、段階的に情報を提供する実験用触知図を用意する。また、実験の結果を反映した触知図を成果として製作する。昨年度の繰り越し額と本年度の決定額を合わせた範囲で実験・試作に関わる物品費115万円(触知図実験体製作費60万円、成果品試作費20万円、実験装置制作費15万円、実験実施に関わる雑費10万円)を、また交通費として35万円(24年度の研究成果を日本建築学会大会(北海道、8月開催)で発表するための交通費(3名分21万円、研究相談等の打ち合わせ・情報収集のための交通費14万円)を、人件費として30万円(被験者謝金等20万円、データ整理のための人件費10万円)、大会発表のための参加費、発表登録費、並びに報告書作成費を雑費12万円として計上する。
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[Presentation] 触知動作の特徴2013
Author(s)
佐藤嘉海・後藤義明
Organizer
日本建築学会大会学術講演梗概集2013年度
Place of Presentation
北海道大学
Year and Date
20130830-20130901
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