2013 Fiscal Year Research-status Report
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23560757
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Research Institution | Nagasaki Institute of Applied Science |
Principal Investigator |
村田 明久 長崎総合科学大学, その他部局等, 教授 (40113253)
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Keywords | 都市計画・建築計画 / 民俗学 / 文化的景観 / キリシタン集落 / 禁教令 / 墓地 / 外海 / 石積み建造物 |
Research Abstract |
25年度は、外海地域の文久2年絵図と現在の地図を照合作業することで、絵図記載の家屋、墓地等の集落構成要素や藩領境の現地特定を可能とした。これまであいまいな存在であった禁教時代の集落形成の解明に取り組み、日本建築学会の研究報告等で発表した。また、『新長崎市史 第三巻近代編』で、幕末から明治にかけて、キリスト教布教が都市部から周辺部に及ぶ形成過程について、長崎外国人居留地の果たした役割、国際関係と地域形成史の面から明らかにした。 照合作業から、大村領では一般的な大集落・大墓地による地区を形成したのに対し、キリシタン集落のあった深堀領では小集落・小墓地による集落を形成し、対照的な様相であったこと。また墓碑年代から大村領では立墓、佐賀領では伏墓のように、当時は全く別々の墓碑景観が存在し、今日のように混在した状況でなかったことが判明した。さらに深堀領の墓地環境は、林地、畑地、辻道の場合が多く、集落上手の林地に墓地をつくるのが典型的で、明治期になっても近世の小墓地形成が続いたことを明らかにした。次に集落の位置確定ができたことから、文久2年絵図(1862)、御境絵図(1844)での家屋数の増減から、街道型、拠点型、開拓型、拡大型という集落形成の動きを把握した。当初の街道集落や拠点集落では比較的大きな辻墓がみられ、後になると小集落・小墓地にまとまる開拓集落が形成された。このように、キリシタン集落地域では初期と後期で立地環境が異なることを明らかにした。以上のように、キリシタン集落形成の独自性についてそれぞれ例証を示し、その集落景観の顕在化をはかり意義付けした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
(1)文献調査は、研究の各課題に応じ進行できている。 (2)地籍図データと絵図資料の照合作業(3)石積み建造物・境界構成物の分布図、についてほぼ完了した・・・・・照合作業はパソコン上で作業可能となり、研究作業を独自に進められる環境をつくり、次の(4)(5)(6)の照合作業を24年度から25年度にかけて進めた。石積み建造物のうち、西彼杵半島におけるネリベイ建物の分布図を作成した。境界構成物については、小さくて現地判別等の困難が予想され、境界線の確認はできているので、図面上の照合調査に留めた。 (4)痕跡状況調査(5)キリシタン集落と石積み建造物の関係の整理(6)近世から明治期の集落変遷、については7割程度完了した・・・・・(4)は24年度より25年度にかけて進めた。まず石積み建造物のうち、23年度にネリベイ建物、24~25年度は文久2年絵図によりキリシタン集落形成の特徴を数量的に明らかにして25年度に学会発表した。さらに現地調査から墓碑銘と集落とのつながりが推測されたため、25年度計画に墓碑調査を加えて墓碑銘の分析作業とまとめの期間として26年度まで延長した。(5)は近世期、近代期について、石積み建造物の分布及び建築技術史的調査を24年度に終えた。(6)は教会、墓地、農地等の教会関連施設は23,24年度の現地調査で確認しており、(4)の結果を加えて、26年度に明治以降の集落変遷をまとめる。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)外海地域の地籍図データと絵図資料の照合作業で得られた「痕跡調査」の資料整理を通して、幕末期、明治期の集落形成についてまとめ、幕末明治の集落形成の変化を把握する。明治期の集落形成は、教会関連施設に加え、教会周辺に形成された新しい集落を対象に、その変化状況についてまとめる。 (2)幕末期佐賀領のキリシタン集落の特徴である「小墓地を中心に小集団で集まり集落形成した」ことの意味を整理する。そのため追加の「墓碑調査」の分析を進め、集落を構成する家屋と墓地との関係性について把握する。こうした幕末期のキリシタン集落形成の特徴を踏まえて、石積み建造物とキリシタン集落、及び明治期キリスト教の新集落との関係についてそれぞれの景観的特徴をまとめる。 (3)以上を整理して、近世から明治を対象に、禁教時代のキリシタン集落形成についての報告書をまとめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度に、文久2年絵図による立地分析から、小墓地を中心にしたキリシタン集落形成の特徴について数量的に明らかにして学会発表してきたが、現地調査からさらに墓碑銘と集落とのつながりが推測されたので、計画に墓碑調査を加えて、その墓碑銘の分析作業を行うこととしたため、未使用額が生じた。 次年度使用額が31万円余りある。この内訳は、物品費1万円、旅費5万円、人件費謝金5万円、その他(印刷製本費等)20万円余りの使用を計画している。
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Research Products
(3 results)