2011 Fiscal Year Research-status Report
中国蘇州庭園における自然観の表現と空間形態に関する研究
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23560760
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
三谷 徹 千葉大学, 園芸学研究科, 教授 (20285240)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
章 俊華 千葉大学, 園芸学研究科, 教授 (40375613)
鈴木 弘樹 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50447281)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 庭園 |
Research Abstract |
1、庭園第1回調査:11月21日~26日。1)基礎資料収集および実測調査の許可をもらうため、蘇州市園林局副局長楊輝および蘇州市園林設計院院長賀風春との研究計画打合せ、園林局各庭園管理主任へのヒヤリングを行う。2)概要把握のため、市内庭園の拙政園、留園、隅園、獅子林、網師園、蒼浪亭の視察および泉水調査を行う。3)拙政園(61ヶ所)、留園(47ヶ所)において水際の亭と汀線にかけての断面詳細寸法を実測する。4)市内水系の概要を把握するための、現存運河の流路調査を行う。3、庭園第2回調査:3月13日~20日。1)拙政園、留園、獅子林、蒼浪亭、芸園、隅園、網師園、治園、環秀山荘における亭と汀線の、オートレベルを用いた再実測調査を行う。2)蘇州園林博物館における泉水水源に関するヒアリングを行う。3)現存状況がもよいと判断された平江路、山唐路の護岸形態調査を行う。4、成果と展望1)庭園泉水の都市水系に関する知見:現在水門で管理される市内運河と市外河川水位実測、市内運河と庭園内井戸の水位の実測、庭園内井戸と庭園泉水の水位の実測から、また現地での過去の泉水管理の方法に関するヒヤリングから、蘇州市庭園では、伏流水水位の把握が重要であることを知る。2)庭園空間の文学的表象に関する収集データと知見:拙政園と留園の扁額の名称、意味、掛かれた場所とその庭園空間について現地踏査や文献調査、ヒヤリングなどを行い、すべての亭のデータが把握できた。今後は、その文字表象が庭園空間に与えたイメージの特徴ついて、明らかにする予定である。3)庭園空間の物理的形態に関する収集データと知見:構築物と庭園の関係をアイテムカテゴリーによる数値化から見直し、そのデータをもとにクラスター分析して型として分類した。それらをマトリックス分析することにより池回遊型、築山回遊型、庭園連結型等の類型化が行える可能性が見えてきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的の「見える庭園空間」研究のためのデータは、亭から泉水への連続撮影、水際の詳細実測によって準備された。また「見えない庭園空間」考察のための基礎資料は、拙政園、留園における全ての扁額対聯を調査できたためおおむね整えることができた。これには蘇州市園園林局の各庭園管理主任との連携をはかる下準備ができたことが大きく貢献している。通常入館できない建築物の内部から庭園への連続撮影が可能となりデータ作成に貢献した。一方もうひとつの研究目的、都市水系と庭園泉水の関係に関する基礎資料は、蘇州市園林局から都市計画局への連繋が思わしくないため、詳細地理情報が得られにくい状況である。今後も都市インフラに関する地理情報は、当地の行政事情から得られにくいのではないかと推測される。しかし、泉水、井戸、運河の実測は進んでおり、これをもとに分析考察する方向を見定める必要がある。また、今年度は少数の対象庭園での重点的実測を予定していたが、もう少し市内全体の泉水の状況把握を行う必要があると考える。園林局管轄庭園泉水の調査方法もシステム化されてきたため、それらのデータ収集も増やしてゆく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
庭園と都市水系の全体像を把握するためには、対象庭園の追加、変更の必要性が見えてきた。当初計画では、市の園林局管轄庭園、数カ所を対象予定としていたが、そのほか市内に、国管轄の庭園、民有管轄の庭園泉水も現存していることがわかってきた。これらの補足的調査も重要と考える。特に民有庭園の泉水が現存していれば、庭園空間デザインとしての価値はなくとも、水系の関係データとして調査の価値があると考える。24年度はそれらのデータ収集の可能性を探る。庭園内の空間分析については、当初通りの対象庭園において、さらに分析箇所を増やしていく予定である。23年度は亭の分析を主体に行ったが、24年度はこれを泉水をめぐる廊のシークエンスとして分析するため、写真撮影と実測調査のデータ収集を行いたい。以下、調査計画スケジュールである。庭園第3回調査:各庭園の実測調査よりも都市水系に関する調査、庭園水源に関するヒヤリングを主体とする。また、23年度に調査しなかった民有庭園の現存泉水の状態調査の手がかりをつかむことが目的となる。特に池底の井戸から伏流水を取水したと推測されてきた怡園、環秀山荘、運河からの取水が推測されてきた西園、隅園、網師園の再調査も行う予定である。庭園第4回調査:主要庭園の再度調査と民有庭園の泉水調査を目的とする。25年度に向けて、三谷、章、鈴木各研究者の分析結果を持ちより、考察を進める。たとえば、断面想起分析においても、特に框景の中の泉水景があたえる空間認知に焦点を当てた分析が考えられる。また扁額から泉水空間構成とその文学的意味づけの関連を考察することも考えられる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度も、現地での継続的実測調査、撮影調査を重ね、資料の充実化をはかることが重要と考えられる。当初計画通り、現地への渡航費滞在費および庭園管理者への実測調査協力依頼のための人件費の使用が予定される。庭園第3回調査:時期:夏期の調査を予定。調査員:研究分担者鈴木とその協力者を中心とする調査員。「見える庭園空間」考察のための断面想起法データの充実のため、鈴木弘樹と指導博士課程学生を中心とする調査グループ、都市水系の基礎データを調査するための三谷徹指導博士課程学生を中心とする調査グループ。庭園第4回調査:時期:冬期調査を予定。調査員:「見えない庭園空間」考察のための文学表象資料収集のため、章俊華を中心とする調査グループ。また泉水と建築の詳細調査補足のために、三谷徹を中心とする調査グループ。また、23年度物品費に端数の残額が生じたため、24年度に購入する資料費用にあてる予定である。
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