2012 Fiscal Year Research-status Report
中国蘇州庭園における自然観の表現と空間形態に関する研究
Project/Area Number |
23560760
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
三谷 徹 千葉大学, 園芸学研究科, 教授 (20285240)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
章 俊華 千葉大学, 園芸学研究科, 教授 (40375613)
鈴木 弘樹 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50447281)
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Keywords | 庭園 / 都市 / 中国 |
Research Abstract |
1、第3回現地調査(11月20日~11月25日) 庭園および蘇州市運河について、今回は、各研究者のテーマ別に独立した調査を行う。1)章俊華+王暁田調査チーム:拙政園、留園、網師園、獅子林、滄浪亭、芸圃、藕園の7ヶ所の私家庭園において、全園林建築の扁額を再調査する。延べ212枚の扁額内容が入手され、データとして整理する。2)鈴木弘樹+殷ゆえ調査チーム:内部からの定点定条件撮影による画像を作成し、結果24視点場の分析対象画像を得るとともに、現地視点場での被験者調査のSD法心理実験と空間要素指摘法実験を行う。また写真による被験者調査(計18 名)を行い、空間心理と空間要素の類型化分析を行い、視点場から見る建築と庭の空間構造と心理的評価の構造を明らかにする。3)三谷徹+大野暁彦+孫みんかいチーム:2011年度の庭園内水際空間の研究と照らし合わせるため、平江路、山唐街において、水上ボートから運河内の水際建築の連続立面のための撮影調査を行う。加えて、同里、周庄、の運河沿い建築を視察する。4)意見交換:蘇州大学教授曹林ねいと相互の研究内容を話す機会をつくり、意見交換を行う。 2、成果と展望 1)「見えない庭」の特性をはかるものとして、扁額に表された内容の分析結果を論文として発表する予定である。2)「見える庭」の分析として、昨年度得られた画像解析を行い、園林建築からの景観の類型について発表する。さらに、園林建築からの景観をその心理評価の分類と照合することで、一定の傾向があることが理解され、その結果を論文として発表する予定である。一方、園林建築と泉水水辺までのランドスケープデザインにある相関があることが断面分析を通じて認められたため、論文発表する。 以上のように、それぞれのテーマを持つ3チームが個別の成果を出しつつあるので、2013年度はその複合考察に時間を費やしたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2012年度はそれまでに収集したデータの分析を行うとともに、改めて現地調査をしたため、分析ターゲットも明確であり、部分的ながらも、発表に足る具体的結論を得ることができた。 1)「見える庭」として空間分析を目標としていた鈴木らの研究も、園林建築からの景観を分析対象とし、その網羅的収集と類型化分析によって、蘇州庭園の中にある一定の空間タイプの存在することが認められた。特に園林建築まわりの外部空間言語に着目した三谷らの研究チームでは、園林建築をこれまでの中国独自の伝統的呼称の分類からいったん解放し、内外空間の連続性というファクターから類型化したことによって、建築と庭園デザインの相関が認められるようになることの発見があった。このような新たな知見は、当研究予算により、現地での実測調査が可能であったことの成果と考えられる。2)「見えない庭」の研究においても、現地でつぶさに扁額を探した結果、蘇州庭園全般の網羅的研究が可能となり、扁額内容の意味についても、庭園空間との関連で一定の類型のあることが示されてきている。現在5類型が認められ、四季情感、倫理哲学、生物五感、風景詩画、出世思想としている。 以上のように、園林建築の特性を思考のキーとして庭園空間やそのデザインの背景を探ってゆくプロセスが、各テーマの共通手法として認識されたことで、次年度に向けてのまとめの共通の道筋が見えてきたと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2013年度前半は、「見えない庭」「見える庭」各チームにおける考察と、論文発表などを含むまとめをおこなう。1)「見えない庭」チームは、園林建築における文学的背景の読み込みに時間を費やしているため、2012年度までには扁額の類型化を見いだすところまでの成果である。これを各庭園内の背後に横たわる空間構造として把握できないかの分析に着手したい。2)「見える庭」チームでは、2012年度に、園林建築からの心理評価に類型の見られることが判明したため、さらにその相関にどのような意味があるかをさぐる。一方泉水護岸実測チームの分析によって、園林建築を伝統的呼称と異なる空間形式から分類が有効であることが認められたため、その成果との合体が考えられる。 2013年度中期には、1)園林建築からの景観に関する研究、2)園林建築と泉水護岸ランドスケープの関係の研究、3)園林建築の扁額の意味と空間デザイン、4)庭園内建築と都市建築の類似的関係の4分野の知見を統合することにより、総合考察を行う予定である。これにより「見える」物理的デザイン特性が、庭園の背後にあたる「見えない」意味論的構成、また、庭園の外にあたる「見えない」都市と何らかの関係を持っているかについて展望を得たいと考える。 2013年度後期は、それら成果と展望を、これまでの研究協力者である蘇州市園林局研究員へ発表し検討をする予定である。2014年度に向けて、カラー印刷を目標とした冊子編集を行う予定である。 さらに、継続的研究展開に向けて、次回は朝鮮文化圏における宮廷離宮庭園への応用に向け、手法の整理が重要と考えている。この応用は最後に日本文化圏庭園研究への汎用を見据えるものとなる。 現地訪問は、鳥インフルエンザの状況によっては実施できない場合もある。その場合は費目および計画の変更もあり得る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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