2011 Fiscal Year Research-status Report
伝統民家継承に関する手法研究-理念と技術伝承を通じた共通認識涵養をめざして-
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23560762
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
大野 敏 横浜国立大学, 都市イノベーション研究院, 准教授 (20311665)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 建築史・意匠 / 伝統民家 / 保存技術 / 茅葺 / 野外博物館 / 伝統的土壁工法 |
Research Abstract |
3月11日に発生した東日本震災によって、東北地方はもちろん北関東においても伝統的民家が被害を受けた。そのため今年度の実地調査は野外博物館・重文民家・伝統的建造物群保存地区のいずれにおいても,被害実態調査とその対応策に関する助言が活動の中で重きを占めた。すなわち1)川崎市立日本民家園の震災被害調査。2)茨城県下における津波被害の重文民家調査、登録や地方指定の文化財建造物や伝統的建造物群の震災被害調査(建築学会の支援活動の一環でもあった)。3)宮城県下における伝統的建造物群の震災被害調査(建築学会の支援活動の一環でもあった)。その一方で川崎市立日本民家園における茅葺展示や神奈川県の実施した歴史的建造物保存活用推進員の講習会で「民家継承に対する共通認識涵養」の重要性を説き、岩手県洋野町に多数残存する芝棟茅葺民家の顕賞手法を検討するなどの調査・啓蒙活動を推進した。また、民家野外博物館の全国組織である文化財集落施設協議会総会に出席して,伝統的建築技術の継承拠点としての野外博物館の重要性を説いた。さらに来年度以降の具体的な伝統的建築技術継承に関する啓蒙(人材づくり)試行として、1)茨城県真壁における壁土づくりを契機とした重伝建地区における技術伝承活動。2)岩手県洋野町における芝棟茅葺き屋根の仕組みを知り補修方法を考える啓蒙活動。の企画を立案した。これらはいずれも平成24年度に試行する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3月11日に発生した東日本震災によって、東北地方はもちろん北関東においても伝統的民家が被害を受けた。そのため今年度の実地調査は野外博物館・重文民家・伝統的建造物群保存地区のいずれにおいても,被害実態調査とその対応策に関する助言が活動中心であった。しかも被害調査は広範囲であったため、伝統的民家を含む歴史的建造物の被害調査は「民家継承に対する共通認識」を持つ仲間の存在が必須であった。そこでは神奈川県や静岡県の歴史的建造物保全調査講習会の修了者が大きな力となっていた。ただしこうした人材育成はまだ一部で始まったばかりで,そのきっかけを望む地域は少なくない。そうした地域の一つに真壁重伝建地区(茨城県桜川市)がある。そこでは従来から行政・地域・大学が連携して歴史的資産を活かしたまちづくりが行われてきたが、震災で瓦葺屋根と土壁に甚大な被害を受け、伝統的建築技術の継承(資材・人材・修復ノウハウ)が問題になっている。その課題解決の糸口として、土蔵の体験修復実績を踏まえて具体的プロジェクトを企画し得た(H24年度4月から着手)ことは大きな成果と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
東日本震災の発生により歴史的建造物も各地で大きな被害を受けた。その復興に際してはますます伝統的な建築技術に関する技術者・行政・所有者(市民)の理解が必要となっている。したがって計画の具体的実行対象は,震災被害地域との関連が強まるが、内容は当初計画通り推進する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.茨城県真壁重要伝統的建造物群保存地区において、壁土づくりを契機とした伝統的建造物の保存修理に関する技術研修会を試行し、資材の確保と・人材育成・地域との連携のあり方のモデルづくりを試行する。2.岩手県洋野町における芝棟茅葺き屋根の実態(職人・材料・仕様・維持修理状況など)把握に努め、具体的な茅葺き屋根修復提案と小規模な修復体験を試行し、地域への啓蒙活動の一歩を踏み出す。3.川崎市立日本民家園における茅葺き演示や人材研修(神奈川県主催)において.野外博物館が技術保存に果たすべき役割を啓蒙する。4.野外博物館・重伝建地区・重要文化財民家所有者の会などと,伝統建築修復技術について意見交換する機会を持ち、現場で必要とされる修復技術に関する情報を正確に把握する。5.上記の活動内容を記録して冊子体にまとめる原案を作成する。
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[Presentation] NINKA2011
Author(s)
大野敏
Organizer
シュツットガルト大学建築学部
Place of Presentation
ドイツ・シュツットガルト大学
Year and Date
2011年12月8日
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