2012 Fiscal Year Research-status Report
伝統民家継承に関する手法研究-理念と技術伝承を通じた共通認識涵養をめざして-
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23560762
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
大野 敏 横浜国立大学, 都市イノベーション研究院, 准教授 (20311665)
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Keywords | 壁土 / 真壁市 / 東日本震災復旧 / 伝統的木造修復 / 芝棟茅葺き / 茅葺き師 |
Research Abstract |
平成24年度は、茨城県真壁市において壁土づくりの体験学習と岩手県洋野町における芝棟茅葺きの技術記録を主体に活動した。 真壁市の伝統的木造建造物は2011年3月の東日本震災において相当な被害を受けたが,市内の歴史的建造物の修復はあまりはかどっていなかった。震災被害は瓦葺き屋根と土壁に顕著に認められ,その復旧については壁土(屋根土)などの準備が必須と考えられた。しかし被災地における伝統的素材の入手は容易でなく,手間暇もかかるため復旧工事において本格的な壁土を要することは難しいと推察された。しかし壁土は適切な準備と講師がいれば,素人のボランティアでもまかなうことができる。しかも地元の人たちが関心を持って協力することによって,地域の伝統を守る気概も喚起できる.そこで地元建築史会・行政と協力して,学生参加も含めた「壁土づくり体験講座を」4回にわたって実施した。その際には,伝統工法の解説や修復事業の実例見学・意見交換なども含め、伝統木造の仕組みを知りながら具体的な修復手法の概要も知る機会を持った。 一方、岩手県の芝棟茅葺きは,地元の元茅葺師である古老を講師に仰ぎ,この地域の茅葺きと芝棟づくりを公開体験する機会を持った。事業実施は洋野町が行ったのであるが、そのための基礎調査や準備・学習実施経緯などについての記録をとった。そして壁土づくりと芝棟茅葺きの実施記録を冊子にまとめた。また、民家野外博物館である川崎市立日本民家園との連携による歴史的資産を護る建築家養成講座はh24年度で通算4回目を迎え、定着しつつある。さらに、長野県佐久市の若宮神社の氏子組織に活動内容と聞き取りし、境内古建築の実測調査を行い,地域の人たちが建築を維持する実態について一例を収集した。さらに平成25年度は、茅葺き後術者の養成研修(京都)に講師として3回招かれ,九州の総会の基調講演を行い、成果を上げた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
技術保存.公開については昨年度は3件を実施した。特にその経緯2件を記録として冊子化できたことは大きな意義がある。今後の啓蒙の機会に良いテキストが出きたと考えている。また、茅葺き技術における日本で唯一の選定保存技術組織「公益社団法人全国社寺等屋根技術保存会」に茅葺き師養成講座講師として3回招かれ,若い技術者に対して啓蒙する機会を与えられたこと、そしてその総会「茅葺きフォーラム2012」において基調講演を行えたことは、技術の保存継承意識に関する研究上大変有効であった。
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Strategy for Future Research Activity |
茅葺きの後術伝承に関する活動は,公益財団法人全国社寺等屋根技術保存会との連携(講演を通して技術者への傾向が可能)なので今後も継続していきたい。また、川崎市立日本民家園における調査演習は,5回目を迎えるので,参加者のアンケート内容を検討してみたい。壁土づくりと茅葺きの体験学習に関する小冊子(H24年度研究費で作成)は、今年度の活動の中で配付して、反応を確認し,ヴァージョンアップや新企画へ反映してみたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(8 results)