2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23560763
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田路 貴浩 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50287885)
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Keywords | 森田慶一 / ヴァレリー / エウパリノス / 制作論 |
Research Abstract |
本年度の前半は、昨年度後半からの調査に引き続き、森田慶一がポール・ヴァレリー「エウパリノス」と出会った経緯の調査を進めた。その結果、おそらくフランスから帰国し京都帝国大学講師となった九鬼周造から「エウパリノス」を知ったこと、しかし、その理解は美学者深田康算のプラトニズム美学に依拠していることが明らかになった。これら調査結果は日本建築学会計画系論文集に投稿した。後半は、「エウパリノス」から建築制作論を抽出する試みを前年度に引き続き行った。哲学者の九鬼周造、田辺元、文学者の塚越敏らの解釈を参照し考察を深めた。成果は日本建築学会近畿支部研究発表会、同大会での口頭発表原稿にまとめ投稿した。 また、森田慶一建築論の意義をより広い文脈のなかで捉えるために、分離派100年研究会を立ち上げ、研究会を開催した。その概要は下記のとおりである。 第1回研究会 2012年10月27日(土) 東京大学 本郷キャンパス 工学部1号館 長谷川章(東京造形大学 教授):ドイツ・モダニズム建築の源流 ― 青島の「改革建築」と日本分離派/田所辰之助(日本大学 准教授):モダニズムに託されたものは何か ― ヴィルヘルム帝政期における建築とデザインの改革 第2回研究会 2012年11月24日(土) 京都大学 楽友会館 本田昌昭(大阪工業大学 准教授):「大衆」の時代 ―1910 年代から1920 年代にかけてのオランダの建築的状況―/中江研(神戸大学 助教):「すべての人に住宅を」― ヴァイマール期ドイツにおける労働者住宅建設と建築家
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度(H23年度)に第1段階「制作論の再構築」を予定していたが、その研究過程で森田と「エウパリノス」の出会いに関する事実関係を確認することが可能であることがわかった。さまざまな関係資料が発見されたのである。そこで、当初、本年度は第2段階「様相論の再構築」へと進む計画であったが、「制作論の再構築」の一部として、森田と「エウパリノス」との出会いの経緯の解明を実施した。しかしその完成には至らず、平成25年度に持ち越すこととなった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度、第1段階「制作論の再構築」に関して、その基礎的成果は日本建築学会近畿支部研究発表会および大会の二つの口頭発表原稿にまとめたので、それらを合わせた論考を6月を目途に建築学会計画系論文集に投稿したい。また、その発展的な考察については年内の投稿を目標とする。あわせて、第2段階「様相論の再構築」として、建築の有機性あるいは用の問題について、森田が参照しているギュイヨー、柳宗悦などの論考を検証する作業に着手したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
建築の有機性と用に関する建築作品の調査と文献収集を行うために調査旅費を支出する(フィンランド、フランス、平成25年4~5月) 残りは、ギュイヨー、柳宗悦などに関する資料、参考図書の購入費として使用する。
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Research Products
(6 results)