2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23560763
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田路 貴浩 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50287885)
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Keywords | 森田慶一 / ヴォーリンガー / ゴシック / エウパリノス / ヴァレリー |
Research Abstract |
本年度前半は、前年度後半の作業に引き続き、ポール・ヴァレリー「エウパリノス」から建築制作論を抽出する試みを行った。森田は「エウパリノス」の邦訳にとどまり、そこから制作論を提示することはなかった。森田が残したこの課題に取り組んだのが本年度前半で、その成果は「ヴァレリー『エウパリノス』の制作論」としてまとめ、2013年7月、『日本建築学会計画系論文集』に投稿し、2014年1月に掲載された。本年度後半は、建築の様相論として、森田の言う「構立て」の思想的背景とその含意の解明に着手した。1927年に森田が発表した「Worringer:ゴチクの建築思想、その他」が解明の糸口である。森田はこの時期には古典主義建築論研究を軌道に乗せていが、まさにこれと平行してゴシック建築に関するヴォリンガーの論考を訳出しているのである。ヴォリンガーの論考はゴシック建築の構造をゲルマン民族の民族的な形式意志から説明しようとする試みである。この理論を森田はどのように受容したのか、そしてそれは森田のウィトルウィウス理解にいかなる影響をもたらしたのか、これらの点の解明を進めた。 また、前年立ち上げた「分離派100年研究会」を開催し、周辺分野の研究者と研究交流をはかった。 ○第3回研究会:2013年6月1日 @東京大学 本郷キャンパス 工学部1号館:岩岡竜夫(東京理科大学)、大宮司勝弘(東京家政学院大学)「分離派からインターナショナル・スタイルへ ― 山田守の戦前の建築作品を通して」/ 角田真弓(東京大学 技術専門職員)「分離派建築会結成の背景」 ○第4回研究会:2013年11月17日 @京都大学 吉田キャンパス 百周年時計台記念館:加藤哲弘(関西学院大学文学部)「大正期日本の美学の研究方法論について」/田路貴浩(京都大学)「森田慶一の思想形成 : 構造、ウィトルウィウス、ヴァレリー」
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は第1段階「制作論の再構築」を終えて、第2段階「様相論の再構築」へと進む計画であった。前年度、森田と「エウパリノス」の出会いに関する事実関係の確認を当初予定に追加しておこなったため、「制作論再構築」の作業に若干の遅れが生じた。しかし、本年度にはその作業を終え、論文投稿も行い、第2段階「様相論の再構築」に進むことができた。本段階の調査の中間報告として、平成26年度日本建築学会近畿支部研究発表会および2014年度日本建築学会大会(近畿)に発表論文を投稿した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、第2段階「様相論の再構築」の成果のとりまとめをおこなう。すでに、投稿した日本建築学会近畿支部研究発表会および日本建築学会大会の発表論文では、森田とヴォリンガーのつながりに関する事実の確認作業を行った。今後はこれを元に、さらに考察を深め、平成26年度前半には成果ととりまとめて、『日本建築学会計画系論文集』に投稿する予定である。その後は、第3段階「生成論の再構築」に着手する。
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