2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23560763
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田路 貴浩 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50287885)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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Keywords | 森田慶一 / ヴォリンガー / 制作論 / ゴシック |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、建築の様相論として、森田の言う「構立て」の思想的背景とその含意の解明を前年度から継続して行った。1927年に森田が発表した「Worringer:ゴチクの建築思想、その他」を分析・考察のおもな対象とした。森田はこの時期には古典主義建築論研究を軌道に乗せていが、まさにこれと平行してゴシック建築に関するヴォリンガーの論考を訳出しているのである。ヴォリンガーの論考はゴシック建築の構造をゲルマン民族の民族的な形式意志から説明しようとする試みである。この理論を森田はどのように受容したのか、そしてそれは森田のウィトルウィウス理解にいかなる影響をもたらしたのか、これらの点の解明を進めた。その成果は、日本建築学会近畿支部研究発表会(2014年6月)、日本建築学会大会(近畿)(2014年9月)にて口頭発表を行った。それらに加筆修正を行い、「日本建築学会計画系論文集」に投稿し、採択され、2015年1月に掲載された。さらに、2015年3月には高等研究実習院(フランス、パリ)から客員教授として招聘され、フランス語で4回の連続講義を行い、これまでの研究成果を発表した。 また、「分離派100年研究会」を継続して開催し、周辺分野の研究者と研究交流をはかった。 ○第5回研究会:2014年7月13日(日)、京都大学吉田キャンパス 工学部3号館西棟 松崎照明(明治大学大学院 兼任講師)「堀口捨己の茶室─研究と作品」、近藤康子(京都橘大学 助教)「堀口捨己の建築論 ―― 茶室の「機能」と「表現」をめぐって」 ○第6回研究会:2014 年11 月1 日(土)、東京大学本郷キャンパス 工学部1 号館 岸佑(国際基督教大学 準研究員)「岸田日出刀の近代性とその諸相 ―― モダニズム・「橋」・伝統」、勝原基貴(日本大学大学院 博士後期課程)「岸田日出刀の建築意匠学確立に向けた取り組み―― 昭和戦前期における研究・教育活動の諸相と展開」
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、森田慶一の建築論を制作論(平成23年)、様相論(平成24-25年度)、生成論(平成25-26年度)の観点から再検討する計画であった。平成25年度は若干の遅れが生じたものの、様相論の研究へと進むことができた。しかし本年度(平成26年度)、研究を進めるなかで、制作論、様相論、生成論を三つ並列に論じるのではなく、様相論、生成論を制作論のなかに含めて論じるのがより適切であることが分かってきた。とくに森田慶一のとくに1920年代の論考を集中的に検討したが、そのことによって、森田の制作論の背景に「ゴシック」を巡る議論が当時かなり大きな論点になっていたことが明らかになってきた。しかし、研究は全体として順調に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は5年間の研究期間の最終年度であり、研究のまとめを行う計画となっている。研究のまとめとして、上述のとおり森田慶一の1920年代の初期論考に焦点をあて、制作論を中心として森田の建築論を、「ゴシック」という当時のひとつの論点を背景として位置づける。そして、建築家の「創作」がこの時代にどのようにして誕生した経緯について明らかにしたい。研究の成果は『日本建築学会計画系論文集』に投稿したい。
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Research Products
(3 results)