2013 Fiscal Year Annual Research Report
近代の数寄空間の地域的特徴と文人たちの動向および煎茶文化の影響に関する研究
Project/Area Number |
23560764
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
矢ヶ崎 善太郎 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 准教授 (90314301)
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Keywords | 煎茶 / 文人 / 数寄者 / 和風建築 / 大工 |
Research Abstract |
これまで収集した基本資料を整理・考察し、研究全体の総括とまとめをした。また、九州・中国地方および関西・関東地域で補足調査を行ったほか、東北地域など昨年度までに未着手であった地域の建築・庭園遺構および関連史料調査を行った。 鹿児島県立黎明館所蔵資料のうち、玉里邸造営にかかわる新たな史料を発掘し、庭園および茶室の特徴を明らかにした。島根県津和野町にある旧堀家の旧藏史料のうち、煎茶関連史料の調査と実測調査から、建築および庭園の意匠にみられる煎茶文化の影響について明らかにしたほか、旧城下に位置する町家・民家の調査を行い、津和野町内での煎茶文化、あるいは文人趣味の広がりを確認した。京都を中心とした関西地域においては、中井家岡崎邸、三井家下鴨別邸など、近代和風建築、あるいは近代数寄屋といわれる建築・庭園に関して造営史料および実測調査を実施し、文人趣味とのかかわりを明らかにした。また重要文化財に指定されている野村碧雲荘を造営した野村得庵の趣味に関する新たな史料を発掘したことにより、碧雲荘を再評価することができた。これまで碧雲荘にみられる意匠は、もっぱら茶の湯との関連で説かれることが常であったが、得庵自身は煎茶会の亭主をつとめるなど、煎茶、あるいは文人趣味に対する志向が強く、碧雲荘でも煎茶飾りを行っていたことを明らかにした。野村得庵のみならず、住友春翠ほか近代の数寄者といわれる人物は、明治末から大正初期にかけては煎茶・文人趣味に対する志向がつよく、その後になって茶の湯に傾倒するという共通した傾向をもっており、近代におけす数寄空間の成立においては、煎茶文化ありは文人趣味の影響がつよくはたれいていたことを実証的に明らかにすることができた。 煎茶趣味、あるいは文人趣味といわれる建築、庭園意匠の導入や展開の過程を明らかにするため、中国の造園書などの解読を試みたが、未完に終わっている。今後の課題である。
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