2011 Fiscal Year Research-status Report
片山家所蔵史料の調査に基づく片山東熊の建築設計に関する基礎的研究
Project/Area Number |
23560772
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Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
伊藤 洋子 (渡辺 洋子) 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (40327755)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 片山東熊 / 史料 / 建築 |
Research Abstract |
片山東熊(1854-1917)は工部大学校造家学科の第一期卒業生であり、明治を代表する建築家の一人である。本研究はこれまで公開されることの無かった同家所蔵史料を閲覧・調査する機会を得て、現存する葉書、写真、サンプル帳を中心とした研究である。まず綿密な書誌学的研究をおこない、それをベースとして東熊の交流関係を軸に、建築との関係を解き明かすことを目的とする。1.これまでに撮影した史料について、各史料の内容の各項目をまとめ、より重要な史料については詳細な解題を作成する。2.葉書の差出人との関係および内容を解明し、サンプル帳やスケッチ、模型写真については、東熊の実際の建築作品と照合し、文献と現地調査によってそれらと関係する建築作品を探し出す。以上を計画し、実施した。以上の成果について、学会等で発表した。原正彦・渡辺洋子・市野瀬優大・中野恒明・中山まりか「片山東熊の遺した資料 -はがき資料を追って-」日本建築学会関東支部研究報告集II pp.663-666 2011.3磯俣祐介・渡辺洋子・原正彦・市野瀬優大・中野恒明「片山東熊と神宮農業館の建築について」日本建築学会関東支部研究報告集II pp.553-556 2012.3Yoko Watanabe, Masahiko Hara, Yuta Ichinose, Yusuke Isomata, Masakazu Tamano, Hoko Miwa, Satoshi Yoshikawa: A STUDY ON THE TOKUMA KATAYAMA ARCHIVES -DESIGN CHARATERISTICS OF THE LEADING ARCHITECT IN THE JAPANESE MODERNIZATION PERIOD- 6th SEATUC Symposium 2012.3
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度にはまず前年度までに収集していた片山家資料の判読をおこない、そこから得られた知見により、資料に散見される東熊の建築構造への関心を知った。そこで彼の作品から小屋組の構造を中心に現地調査を実施した。特に三重県の神宮農業館では、震災予防調査会のために彼が提案した改良農家構造と同様の部材が使用されていることが分かった。またこの建築は三重県の近代和風建築調査報告書などでは片山の設計であるとの確証が得られない建築とされているが、神宮司庁の所蔵図面に「東熊」の押印のあるものが発見され、片山作品であることが確実になった。このため、平成23年度には片山家資料の新たな撮影は出来なかったが、研究は概ね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度には実施できなかった片山家資料の残りの分の閲覧・撮影をまずおこなう計画である。これには特に重要な東熊の辞令類が含まれている。また、成果のあがった神宮司庁関連の建築作品についても更なる調査を実施したい。これまでに収集した片山家資料の解読解題作業についても、より完璧を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度には片山家資料の撮影のために接写装置を用いることを計画している。これは平成23年度に購入予定であったが、前年度は新たな片山家資料の撮影を行わなかったので、先送りにしたものである。また東京・京都・奈良・三重などの片山作品の現地調査を実施する。のみならず彼の出身地である山口県にも行き、複数説のある生年月日についても長州菩提寺にて調査を実施したいと考えている。このように現地調査、資料収集、整理と判読におもに研究費を使用する予定である。
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