2012 Fiscal Year Research-status Report
片山家所蔵史料の調査に基づく片山東熊の建築設計に関する基礎的研究
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23560772
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Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
伊藤 洋子(渡辺洋子) 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (40327755)
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Keywords | 片山東熊 |
Research Abstract |
平成24年度は、それ以前に未調査であった片山家資料中の辞令類をすべて閲覧し、ナンバーをつけて実測・撮影調査することができた。その他に片山東彦氏邸においてはブロンズ像やメダルレリーフ、位牌などの重さを含む法量も計測することができ、かつすでに撮影ずみのはがき類についても、大きさを計測した。これで現在、片山家に残る資料の全貌を把握することができたことになる。辞令については、平成25年3月に日本建築学会関東支部にて報告をおこなった。 その一方で片山東熊が関与した震災予防調査会の小屋組構造の源泉や、片山の出自を正確に把握するべく、故郷である山口県萩市で調査を実施した。かつ京都では九条山ポンプ室の建築を実地調査した。ここでは琵琶湖疎水を実現した義弟である田辺朔郎とのつながりのみならず、匠頭としての東熊の立場をよく理解できる資料を京都府総合資料館にて入手することができた。 さらに伊勢徴古館・農業館で平成23年度に得た図面類を詳細に分析し、伊勢神苑会の業績について考察をおこなった。神宮司庁では実際に東熊の設計通りに徴古館の建築を復原する希望があるそうで、今後も研究協力を得られる見通しである。農業館の図面資料に「東熊」の押印があったことにより研究にはずみがつき、他の図面類をも利用して伊勢神苑会に関する論文をまとめ、現在、日本建築学会の査読付き論文での審査を受けている。以上、研究は大変進展・充実させることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
片山家資料の詳細調査や出身地での史資料・伝統建築の構造把握など予定通り、順調に進んでいる。また神宮徴古館・農業館の現地調査で思いがけず閲覧の許された当該建築の詳細と、神苑会の都市スケール的な業績について、いわば派生的に研究が進んだ。現在、日本建築学会に論文を提出し、審査を受けている。 一方、片山家資料でもっとも点数の多いはがき資料については、ところどころまだ読めない部分があって正確な解読がまだこれからであり、最終年度に持ち越すことになった。
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Strategy for Future Research Activity |
前述したとおり、本研究は予定通り順調にすすみ、またさらに新しい対象への進展も期待できる。平成25年は最終年であり、前述の通り、はがき資料の全文を読み下し、改題をつけて、片山家資料集を完成させる。そのうえで、片山東熊の人物関係を読み解き、かつ図面類や辞令による経歴から、設計作品における設計意図について、確実に把握したいと考える。 さらに可能であれば、平成23年度調査で収集できた伊勢徴古館・農業館図面に関しても、片山家資料とともにきちんと整理・把握を行いたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
はがき資料の全文を正確に判読するため、研究室にて解読したのち、近代の手書き文書を読み慣れた校閲者にチェックをお願いする。また片山の出張辞令のうち、現在、彼の作品の残らないとされる地域に対しても調査を実施したい。
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