2012 Fiscal Year Research-status Report
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23560780
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
藤田 勝也 関西大学, 環境都市工学部, 教授 (80202290)
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Keywords | 建築史・意匠 / 日本史 / 公家住宅 / 様式復古 / 寢殿造 |
Research Abstract |
今年度も、引き続き近世公家住宅関係の史料のうち、とくに指図類を中心に文献史料の博捜と整理を鋭意行ってきた。昨年度と同様に、東京都立中央図書館に蔵される木子文庫から関連する資料、指図を探索し、また東京大学史料編纂所が所蔵する裏松家史料についても詳細な分析を試みた。国会図書館や国立公文書館の内閣文庫でも資料の探索を行った。さらに京都府立総合資料館が所蔵する中井家文書にも関連する指図類があるため、閲覧と分析の作業を行った。 いっぽう、昨年度と同様、公家住宅の現存遺構についても実地調査を行った。小松谷正林寺(京都市東山区)に現存する本堂は近世九條家の建物であり、京都府立鴨沂高校内の茶室もまた同じく九條家の遺構である。茶室の方は傷みが激しいことなどから今回は詳細な調査に及ばず視察に留まったが、正林寺本堂については詳細な建造物調査を同寺院の協力のもと実施した。 今年度は、史料収集の進捗状況が良好であった鷹司家について、指図の分析を中心に考察を加え、その成果を『日本建築学会計画系論文集』に投稿、掲載されたことは大きな成果となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画とおり関連資料の収集と分析を行い、全体として研究計画は順調に進んでいる。現存遺構の調査も昨年度に引き続き実施できた。さらに鷹司家の復古の実態について詳細な分析を施し、その成果は査読付き学術論文集に投稿、掲載された。 以上、総合的に判断して、研究はおおむね順調に進展しているものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究実施計画通り、今年度も史料を鋭意、継続的に実施する。とくに九條家について関係史料の閲覧と収集につとめる。 九條家では中世後半に遡って平安復古への高い意識が認められ、沢田名垂『家屋雑考』掲載の寢殿造鳥瞰図のベースになった住宅配置図は九條家当主によって描かれたものであった。また近世後半には大規模な寢殿や対を本宅に構えるなど、復古の姿勢を先鋭化している。近世摂家での復古の実態解明において、とりわけ九條家は重要な位置を占めることから、あらためて指図等の史料を詳細に分析し、実態把握につとめる。 また、一條家についてはその一部が発掘調査されたのを期に、関連指図の収集と分析を試みている。もって各摂家の史料が出揃うことになるので、最終年度はそれら全体像を結ぶ分析を行う予定である。とくに復古の温度差が主たるテーマとなるが、復古を指向しつつ完遂されない、いわゆる近世的なあり方を示すものとして、表門の位置、寢殿の向きに注目して考察を深めたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
繰り越しの研究費が若干発生しているのは、発注した書籍等の納品期日が若干遅延していることなどによるものであるが、今年度は最終年度にあたることから、史料の閲覧と収集のための旅費の精算など、支払い手続きはよりいっそう速やかに行う予定である。 全体的な使用計画については、次年度も引き続き関係書籍の購入が必要である(設備備品費)。また収集資料の整理のためのファイル等が必要となることも予定通りである(消耗品費)。これまでと同様、文献史料調査や現地での遺構調査のため旅費が必要となる(国内旅費)。収集資料の整理において学生のアルバイトを予定している(謝金)。史料の複写費や京都など近郊での調査、あるいは情報収集のための交通費、そして成果公表のための学会論文誌投稿料ならびにその別刷代といった費用が最終年度にあたる今年度はこれまで以上に必要になるものと考えている(その他の費用)。
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Research Products
(2 results)